ホクジルトさん(当時18歳)は1996年4月9日に内モンゴル自治区フフホト市内の公衆トイレ内で女性が殺害された事件での、遺体の第1発見者だった。その後、ホクジルトさんは自分が女性を殺害してから発見者を装って警察に通報したとして、強姦罪と故意殺人罪で起訴された。
当時は凶悪犯罪の撲滅運動が展開されてきた。政治的キャンペーンの一環として「凶悪犯罪ほど速やかに決せよ」とされていた。ホクジルトさんは同年6月10日に死刑判決を言い渡され、即日、執行された。事件発生から約2カ月だった。
2005年10月になり、別の強姦・強盗・殺人の疑いで身柄を拘束された趙志紅容疑者が、警察の取り調べに対して1996年の強姦殺人事件も、自分がやったと供述し始めた。趙容疑者は4度にわたり、ホクジルトさんが犯人とされた事件について「自分がやった」と供述した。
供述に整合性が高かったため、中央政府・公安部も調査に乗り出した。趙容疑者に対する精神鑑定は、いわゆる「うそ発見器」なども使った結果、趙容疑者の供述の信憑性は98%以上のとの結果がでた。
当局側の動きは鈍かったが、趙容疑者はその後もトイレットペーパーを使って、フクジルトさんが冤罪で死刑になったことについて「命をもってつぐないたい」との嘆願書を提出した。
趙容疑者については、その他の犯罪ついて死刑が言い渡された。中国人民最高法院(最高裁)は07年1月、死刑は認めたがホクジルトさんの冤罪事件の調査のためとして、執行を延期して拘留を続ける指示をした。
公安部の専門家として調査を担当した楊承勲氏と呉国慶氏は後に、取材に対して1996年の事件の真犯人は趙容疑者だったことは間違いないと述べ、「公安機関側の意見はすでに明確だ。後の問題は裁判所にある」と述べた。
内モンゴルの共産党関係者は、「冤罪事件と公式に認める場合、当時の関係者の処罰/処分がともなうことになる」と説明。1996年にはホクジルトさんを「スピード逮捕・スピード処刑」したことで、表彰された警察関係者もいる。その後も「昇進して地位が高くなった者」がいるなどで、同関係者によると、冤罪事件として認めることは「実に難しくなってしまった!」という。
2006年には内モンゴル自治区当局が事件について再調査専門チームを結成した。
中国中央テレビは同問題を改めて取り上げ、2014年11月5日に、再調査専門チームのメンバーのひとりに取材した。同事件で、被害者は絞殺された。番組によると、当時の捜査・裁判では、ホクジルトさんの爪の垢に残されていた血の血液型がO型で、被害者の血液型と一致したことが「決定的証拠」とされたという。
中央テレビの記者が、再調査専門チームのメンバーのひとりに「血液型が同じ人はたくさんいる。
同メンバーは「再調査そのもの」については、圧力を受けたりしなかったと話した。ただし、当時の捜査や手続きについては、細かく述べることを避けたという。
ホクジルトさんの両親は2005年に10月に趙容疑者が「犯人は自分」と供述した翌月の11月から当局に通いつめて裁判の見直しを訴えているが、これまで動きはなかった。
写真はホクジルトさんの写真。CNSPHOTO提供。両親が手元に残っている写真の1枚を示し、最も気に入っている1枚と説明した。「ホクジルト」とはモンゴル語で「発展」、「前途」といった意味。両親は「最大の願いは、息子の潔白を認めてもらうことです」と述べた。
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◆解説◆
アムネスティ・インターナショナルが発表した2013年の死刑適用状況によると、過去5年間に死刑を毎年執行した国は中国、イラン、イラク、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、米国。イエメンの9カ国。中国における死刑執行の件数は1000件以上と見られており、2位であるイランの「少なくとも369件」をはるかに上回るが、実態は不明という。
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