記事はまず、5月12日に米フィラデルフィア市内で発生し、死者7人、重軽傷者200人を出したアムトラックの事故に触れた。
米国では鉄道事故が多発しているとして、その原因を「国土が広い割には人が少ない」上に、営利目的の民間企業が鉄道事業に多く参画してきたと説明。利益の低さが米国における鉄道事業の「悪循環」をもたらしたと主張し、「米国と違い、中国の高速鉄道ネットワークの多くは、国家レベルで推進されてきた」と自賛した。
中国の高速鉄道については「すでに米国の徹底的に先を行く」、「中国高鉄は世界に歩みを進める」、「中国高鉄の影響力は日益しに強くなる」、「中国高鉄はすでに全世界をリード」、「高鉄は中国の確固たる誇り」などと、書き進むとともに、称讃の言葉がエスカレートした。
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◆解説◆
同記事は、2011年7月23日に浙江省で発生して多数の死傷者を出した高速鉄道の衝突事故については、あたかも「なかったこと」とでも言うように、触れていない。
米国の鉄道の「立ち遅れ」を示す例として、定時運行率は米国の鉄道は最高で75%だが、日本の新幹線は基本的に遅延が「ゼロ」と紹介した。なぜ、自国の高速鉄道と比較しなかったかは不明だ。
中国では2011年当時の劉志軍鉄道部部長が、高速鉄道事故の「主要責任者」とされた。劉部長はさらに収賄と職権乱用の罪で執行猶予2年の死刑判決を言い渡された。
その後、鉄道部は解体され、鉄道事業は国有企業である中国鉄路総公司が引き継いだ。米アムトラック社も連邦政府出資の株式会社であり、上記記事が主張するように、運営形態が全くことなるわけでもない。
上記記事がなぜ、「そこまで上から目線」で論じたのは不明だ。ただし中国では、自国が米国や日本より「優れている」とする記事に対するニーズが、相当に高いと考えられる。「日ごろの鬱憤晴らし」との指摘もある。(編集担当:如月隼人)(写真提供:CNSPHOTO、中国で発生した高速鉄道の衝突事故)
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