プロペラ機の時代まで、搭乗員はあらかじめパラシュートを装着し、非常時には自力で機外に飛び出す方法で脱出することが一般的だった(日本軍の戦闘機操縦士は、操縦の妨げになるとパラシュートを装着しないことが多かったという)。
第二次世界大戦後にジェット機が普及すると自力で機外に脱出することが困難になり、脱出しても風圧により致命的な負傷をすることがほぼ確実になった。そのため、火薬やロケットで搭乗員を座席ごと機外に射出してパラシュートで降下する「射出座席」が開発された。
しかしそれでも、超音速/亜音速での高速飛行時には搭乗員を生還させるのは容易でない。現在のところ、「超音速飛行時の射出にも対応」と公式に表明しているのは、、ロシアのズヴェズダ製の「K-36D」シリーズなど、限られた製品しか存在しない。
記事はK-36Dを「最も信頼でき、最も成熟しており、最も優秀」な射出座席と高く評価。J-20について機体の厚さなどから、「『J-10』戦闘機で採用されている『HTY-5』が依然として用いられていると判断してよい」と論じた。
HTY-5はK-36Dシリーズをもとに中国で開発された。しかし記事は「HTY-5は安定性の設計に問題があり、高速飛行中から搭乗員を生還させる能力の欠落を覆い隠すことはできない」と主張。中国ではJ-20などで戦闘機の超音速飛行が強調されている一方で、安全性への配慮が弱いとして批判的に論じた。
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◆解説◆
これまでにHTY-5を用いてJ-10から脱出した搭乗員は全員が生還したとされる。「生還率100%」の理由は、いずれもエンジン故障時の脱出であり、速度が落ちた機からの射出だったからとされる。
米国もかつては高速で飛行する機体からの脱出技術では遅れており、海軍統計によると1976-89年に時速926キロメートル以上での飛行中の射出を試みた10人のうち、6人は死亡し2人が重傷、2人が軽傷だった。
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