今年6月30日には、中国能建規画設計集団・華東院が設計し、中国能源建設集団・浙江火電建設有限公司が建設した浙江三門原子力発電所・1号機が送電網と接続された。米ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー製の次世代型加圧水型原子炉「AP1000」の設計・製造技術を掌握し、容量108万kWで1号機に導入したもの。「AP1000」級の加圧水型原子炉は世界で初稼働となる。
また、6月29日には、広東院、広東火電が建設した世界初の「EPR」が正式稼働した。仏アレヴァが開発した欧州型加圧水型原子炉「EPR」は容量175万kW。広東省江門市台山・赤渓鎮に位置する台山原子力発電所1号機として商用運転される。運営母体の台山核電合営有限公司は、登録資本199億6000万人民元(約3353億円)で09年12月に発足した。
中国の原子力発電設備は、2017年9月に商業運転を開始した福建省の福清原子力発電所の4号機で合計38基3612.5万kwだったが、7月までに稼働した3基の発電量を加えると4003.5万kwとなり、停止中の原子炉を含めた日本の原子力発電設備38基3834万kwを超えた。中国は米国(99基1億356.1万kw)、フランス(58基6588万kw)に次ぐ、世界第3位の原子力発電大国になった。
また、米国で原発の新設計画が凍結され、今後は寿命を迎えて廃炉になる原発が増える一方となり、フランスでもマクロン大統領が2025年までに原子力発電の比率を75%から50%に減らすことを公約に掲げているなど、両大国は原発縮小に動いている。反対に中国は2020年に運転中の原子力発電出力を5800万kwに拡大し、2026年までに稼働中の原子炉を100基1億kw超として米国を抜いて世界一になる計画を立てている。
欧米の先端技術を導入し、その技術力を消化した上で、国産の原子炉の能力を世界最高レベルにまで引き上げてきた中国。既に、「原発」は中国のインフラ輸出の重要なアイテムになっている。中国核工業グループはパキスタンに原発を建設している他、中国は2016年にケニアとエジプトとの間で第3世代原発の輸出に関する覚書に署名した。また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けるなど、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓している。さらに、英国でもフランス電力公社と組んでヒンクリーポイントCなど大型原発プロジェクトの受注に成功している。
いわゆる西側先進国がいずれも「脱・原発」への動きにあるなか、原発開発に積極的なのは、中国とロシア(現在31基2794万kw、新設計画が24基2474.9万kw)になっている。中でも、世界一の座をめざして原発開発に積極的に取り組んでいる中国の存在感は否応なく高まっていくだろう。
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