特集『柴を介護(あい)する』シリーズでは、いつかはやってくる我が子の老後に備え、老犬介護の情報をお伝えしています。
今回は皮膚がデリケートな柴犬の入浴やシャンプーの方法を、老犬介護士の平端弘美さん詳しく教えていただきました。
汚れやすい部分を拭くだけでもOK
柴犬は皮膚がデリケートなので、清潔を保つためのケアが必要です。
しかし愛柴の足腰が弱ってきたり寝たきりになったりした場合、飼い主さんがお風呂場で入浴やシャンプーまで行うのは大変。
しかも濡れるのが苦手な柴犬も多いため、入浴はストレスの原因になりかねません。
そこで老犬介護士の平端弘美さんに、シニア犬にも負担の少ないケアの方法をうかがいました。

「Hello doggie ひだまりシニア部」の老犬介護士、平端弘美さん。愛犬を東京・多摩地域を中心に活動している。愛犬はポメラニアンのライチ(14歳・オス)。
平端さん:
「全身を濡らす入浴やシャンプーは意外と体力を使います。若い頃ならともかく、シニア犬に無理は禁物。
犬が濡れるのを嫌がるなら、汚れやすい目、口、足、耳、お尻を拭くだけでも十分です。
拭くだけなら高齢の飼い主さんでもできますよね。私はハーブティーを使った温タオルや足湯をおすすめしています。
入浴が平気な犬でも全身を一気に洗うのは避けて、今日は顔周りだけ、明日はお尻周りだけ、と部分的に洗ってくださいね。
頻度は汚れが目立ち始めたらケアをするくらいの気持ちでいいと思います」
ハーブの温タオルで部分洗いをする

◆ハーブティーの種類を選ぶ
使うハーブティーは飼い主さんのお好みOKですが、ラベンダーオイルの足浴で血圧が下がったというデータもあるため、老犬には避けたほうが無難です。
平端さんのおすすめは抗菌やリラックス作用が期待できるレモンバームやローズマリーです。
◆滑り止めのマットを用意する

犬が滑らないようにヨガマットやバスマットを敷きます。

飼い主さんがひざをついて作業するときも楽です。
◆ハーブティーを抽出して温タオルをつくる

たらいにハーブティーのパックを入れて、熱湯を注ぎます。色と香りが出てきたら水を入れて38℃くらいのぬるま湯にします。パックは入れっぱなしでもOK。

柔らかいハンドタオルなどを濡らして軽く絞り、ハーブの温タオルをつくりましょう。
◆汚れやすい部分を拭いていく

汚れやすい足などを拭いていきます。

背中やお腹まわりも意外と汚れています。丁寧に拭いてあげましょう。
◆もっときれいにする技

柴犬は短毛なので尾を持ち上げるだけでもお尻を拭けますが、もし周りの毛が長かったり濡れたりするのが気になる場合は、自着包帯で尾を巻いておくと便利です。

顔周りを洗うときには、小さいスポンジに変えてもいいでしょう。

目や耳の周りはデリケートなので、メイク用三角パフがおすすめ。目のきわなど細かいところもきれいにできます。100円ショップなどでも手に入るので、活用してみてください。
◆温タオルで肩や腰のこりをほぐす

後ろ足が弱ってくると前に重心がかかりがちで、首や肩がこりやすくなります。温タオルを温湿布の代わりにして温めてあげましょう。

タオルの上から揉み解してあげるのもよい方法です。
◆足湯で体を温める

抽出したハーブティーで足湯をしてもOK。

足先もしくは足首までつかるだけでも体がポカポカするはずです。
体を乾かすときも老柴ならではの気遣いを
皮膚がデリケートな柴だからこそ、乾かし方にもちょっとした気遣いが必要です。
◆タオルとドライヤーで体を乾かす

まずは吸水性のよいタオルで体に残った水分をしっかり拭き取りましょう。

ドライヤーの温風が直接当たると皮膚にダメージが。バスタオルで覆った中に温風を入れて乾かします。

洗い終わった後のたらいに温風を当てて反射させると、マイルドな温風で全身を乾かせます。
寝たきりの柴犬を洗うには

寝たきりになると排泄物で体が汚れてしまうこともあります。浴室で洗う時は、犬を寝かせても滑らないようにマットを敷き、頭をのせるほうを高くしておきます。
体が温まると気持ち良くなって排泄する犬もいるので、傾斜をつけておくほうが汚れも防止できます。

濡れてもよいビーズクッションで、犬が楽な姿勢にしてあげるのも良い方法です。

シャワーの強い水圧は犬に負担がかかってしまうので、手でシャワーヘッドを覆ってやわらげるのがコツです。

ハーブの温タオルを使って洗ってもOKです。きれいになったらタオルとドライヤーで体を乾かしましょう。
寒い時期こそ浴室を締め切らない
シニア犬を入浴させるときの注意を平端さんにうかがうと、「寒いからといって浴室のドアを閉め切って湯気をもうもうとさせると、犬は息苦しく呼吸がしづらくなり、心臓に負担をかけてしまいます」とのこと。
換気扇をつけてドアも開けておくことが大切だそうです。
皮膚が弱い柴犬にとって、年齢を重ねても被毛を清潔にしておくことは大切なこと。
今回平端さんが紹介してくれた方法なら、自宅でしっかりと愛柴の被毛ケアを行うことができます。
愛柴にとっても、愛する家族と触れ合える時間は、なにより愛おしいひとときなはず。
どうぞ実践してみてくださいね。
【施設DATA】
老犬介護Hello doggie ひだまりシニア部
平端弘美さん
電話番号:090-4453-7908
http://hellodoggie.info
《老犬介護Hello doggie ひだまりシニア部の特徴》
*カウンセリング:約45分/2000円
*ケアプラン作成(1冊) 6000円
*訪問ケア・病院でのケア 1時間2500円~
※ケアプランは1頭1頭に合わせて1冊の冊子にまとめてお渡し、ケアはマッサージ、ハーブ温湿布、運動機能訓練などを組み合わせて行います。
詳しくはホームページをご確認ください。
【撮影協力】

こうご動物病院
東京都多摩市落合3丁目14-1
電話番号:042-400-7212
https://www.kougo-ah.com
※院内では平端さんが定期的にシニア犬のケアや介護の講習会を行っています。スケジュールは動物病院にお問い合わせください。
取材・文/金子 志緒 モデル犬/テツくん
- 【特集】柴を介護する