第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。
今回のお悩みは、プリズン・ブレイクばりにケージから脱走しちゃう、なんとも器用(?)な愛柴に悩むオーナーさんからの相談です!
お悩み:ケージでお留守番してたはずなのに…帰ったら玄関でお出迎え!
2歳・男のコ
うちの柴犬はお留守番が出来ません。
小さい時からお留守番の練習をしていたのですが、ケージにお気に入りのおもちゃなど置いてお留守番させると、ケージの上から脱走してました。
天井に柵をつけて飛び越えれないようにしても、帰ったら玄関でお出迎えしてくれます。
もちろん、脱走してない日もあるので、その時はしっかり褒めます。
脱走すると、壁をかじって穴を開けたり、いろんなとこを漁ったりします。
イタズラをしたところを指して「誰がしたの?」と聞くと机の下に隠れるので、悪いことだとは分かってるんじゃないかなと思うのですが……。
賃貸なので、これ以上穴を開けられるわけにはいかず、外出時は一緒に行くか、祖母に預けてます。
散歩は1日2回、夕方は30分ほど、で朝は赤ちゃんがいるので10分ほどです。
散歩を増やすことが大事かもしれませんが、そのほかはどうしてあげたらいいですか?
ケージよりもクレートを使って

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お留守番が出来ない理由はその子の環境や育てられ方などで色々と違いますが、この子の場合は、ケージをクレートに変えてみると良いかと思います。
もちろん、ケージで日頃問題なく過ごせている子ならそのままで良いですが、クレートの方が応用が何倍も効くので、クレートがハウスとして使えるようにトレーニングをしてソンはないと思いますよ。
たとえば、震災時のハウス代わりとして。また、入院することになっても、ケージの広さで入院できる施設はなかなかありません。
一緒に旅行した際も、クレートさえあればゆっくりと休むことができます。車の中もクレートに入っていれば安全です。
ぜひ、クレートでもハウスができるように練習しましょう。
散歩を増やすだけでなく、家の中でも「頭を使う」遊びを

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外に出たがる理由のひとつが、オーナーさんも気付いてらっしゃるように刺激・運動不足。
お散歩を増やすのはもちろんですが、お家の中でも頭を使って遊んでみるといいかと思います。
トレーニングも遊びの一環と捉えてくださいませ。
赤ちゃんがいて時間もなかなか取れないと思いますので、オーナーさんがその愛柴にあった遊びを、無理なくすることがすごく大切。ぜひそれを見つけましょう。
お座り、ふせ、まて、おいでなど、一度きちんと練習するのもいいかもしれません。
頭を使ったり、体を動かしたりするので、犬にとっても良い疲労感が得られます。
お散歩は時間より内容が大事

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お散歩は、短くても犬が「あー楽しかった」となれるお散歩を目指しましょう。刺激と運動を混ぜてあげるのです。
散歩は「とにかくたっぷり運動を」と考えてしまいがちですが、頭を使ったり、気を揉んだりすることでいいストレスを犬に与え、疲労感を出させることがとても大事です。そのやり方については、のちほど説明します。
お散歩は朝夕、両方できれば理想ですが、どちらが大事かと言えば、朝のほう。
これからその子にとってアクティブな一日が始まるのであれば「ちょろっと」でもいいですが、日中は家でお留守番をして過ごすなど、刺激や疲労がない場合は、朝のお散歩を大切に考えてあげてください。
ちなみに僕が考えているお散歩時間は、大型犬でも小型犬でも前後に疲労の蓄積やストレスがない日常の場合、最低1日90分外に出ることです。
散歩はかける時間より内容が大切

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お散歩の内容は、前の日のことやこれからのことを考えて変えます。
例えば、「昨日は雨であまりお散歩できなかったら、今日は思いっきり走らせることをメインにして…」、「昨日はよく遊んだから、今日は短めに」など、その日その日でかける時間も、やることも変えます。
このオーナーさんのように、子育てなどで忙しく、散歩にかける時間を取るのが難しければ、毎回“違う事”を意識してお散歩してください。
いつもと違うコースを歩く。歩くスピードを速くしたり遅くしたりしてメリハリをつける。お散歩中におすわりなど、コマンドの練習をする。おもちゃを持っていて、一緒に遊ぶ…などなど。
トレーニングを一度、トレーナーさんから習ってみるのもいいかもしれません。
トレーニングとは、もちろん何か問題行動を直すことも含まれますが、オーナーとの関係性を深めたり、オーナーと一緒に出来ることを増やしていくことなんです。
出来る事が増えると、それを使って問題に取り組む事もできます。
矯正や修正を目的とせず、より充実した生活が遅れるようにトレーニングをぜひ受けて欲しいと思います。
脱走しなかったことを褒めても「意味がない」

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「もちろん、脱走してない日もあるので、その時はしっかり褒めます」とありますが、脱走していない日に褒めても意味がなく、またイタズラをした壁などを指して「誰がしたの?」と聞くのも意味がないです。
なぜなら、褒められるのも叱られるのも、犬は今その瞬間のこととしか関連付けないからです。
オーナーさんが褒めたタイミングは、犬からしてみると「ケージの中に今いること」を褒められていると理解します。
でも、オーナーさんが本当に褒めたいのは「ケージの中にずっといたこと」です。
「お留守番中、ケージから〇時間出なくて偉かったね」は、成り立たちません。これはしっかりと理解しましょう。
「誰がしたの?」と叱る場合も、その時にしていることを叱られていると思っているでしょう。
もしくは、ただ単にオーナーさんが怖い雰囲気になったから隠れるという行動をとっただけかもしれません。
イタズラを反省しているのではなく、今、「オーナーさんが怒って自分になにかしてくるかもしれないから逃げよう」になっている可能性が高いです。
恐怖や不安は、犬から「逃げる」、もしくは「戦う」以外の思考を停止させてしまいます。
思考停止状態では、“イタズラしたことを怒られているんだ”なんて、なおさら理解できなくなってしまいます。
イタズラされたことは水に流し、次はされないように対策を練ることが大切です。
まとめ

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今回の場合は、以下の3つを実践してみてくださいませ。
(1)ハウスはケージではなくクレートに変更。
(2)お散歩時間はできるだけ増やす。でもかける時間より内容が大切。
(3)お家の中でも頭を使う遊びを増やす。
赤ちゃんがいらっしゃるので、大変だと思います。
私も子供ができたばかりのときは犬にかける時間があからさまに減りました。
しかし子供が成長するにつれ、これからも家族や夫婦の協力がとても大切になっていきます。
犬への愛情があるだけに、犬との時間が取れないと尚更辛いし、ごめんねという気分になってしまうときもあるかもしれません。
しかし、ストレスを抱えた動物(オーナーさん)と一緒に暮らしていると、犬もストレスを抱えてしまいます。
周りに頼る、犬関連のサービスを利用するのも場合によっては大切です。
ご自分だけで我慢したり抱え込まず、「ムリー!」となる前に検討してみてくださいね。
小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。
通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。
- 特集「柴犬解決お悩みNOTE」