1975年から愛され続けてきたものの異物混入が原因で昨年末に販売停止となっていたまるか食品(群馬県伊勢崎市)の名門カップ焼きそば『ペヤングソースやきそば』(120gうち麺90g・希望小売価格 税抜170円・2015年6月発売)がついに販売再開となった。関東で先行発売、その一週間後に他地域でという段取りだったが、供給が間に合わず他地域の発売が遅れるというニュースも報じられている話題の一品、その味を昔から愛し続けてきた記者が期待を胸に食べてみた。
メーカーに問合せたところ「中身は一切変わっていない」と断言。ただ各方面で報じられている通り、パッケージは大いに変わった。かつてのプラスティックのフタ式を撤廃し、近年の主流であるシール式に変更。フィルムにかつての容器の凹凸を模した写真をプリントしているものの、フィルムを剥がすと「どちら様?」という感じの真っ白な容器が出てくる。



これに対してネット中心に残念という声が飛んだ。フタを閉じながら湯切りをする際にフタが開いて麺が飛び出してしまうという「ペヤングだばぁ」と呼ばれるシチュエーションが防止されてしまい、「緊張感がない」と。確かにその一連の動作まで含めて「ペヤング」という気持ちもわからなくはないが……。
ちなみにそうした「だばぁ」に関しては2008年にパイパンPによる初音ミク使用のボーカロイド楽曲「ペヤングだばあ」という曲が生まれたほどの定番シチュエーション。
さらには2012年にその「だばぁ」をゲーム化したiPhoneアプリ「湯切浪漫」までリリースされたこともあり、まさにペヤング・カルチャーともいうべき愛され方をしてきたのがこの『ペヤングソースやきそば』なのである。
そんなペヤング文化を投げ打ってまで、安全性に配慮して生まれたのが今回の新生『ペヤングソースやきそば』。製作過程のニュアンスは大幅に変わってしまったが、味の方はどうだろう。

湯切りのしにくかった、かつてのフタ式。

その点、湯切りは楽々。サッと切れる。出来上がりの麺はフワッとした独特の油揚げめん。近年の太くもっちりした流れの麺とはちょっと違う。そこに具材のキャベツがたっぷり入るが、だいたい底の方にへばりついてしまうのもかつてと同じ。
そこに、これまた近年主流のドロリ濃厚型とは一線を画すサラリとしたソースをかけていく。アオサやゴマ、紅しょうがの入った小袋とスパイスの小袋をあけて完成。

味は確かに同じペヤング。麺が細くなったと感じたら、その理由は?
ひとくち食べるともう懐かしのペヤング味。サラリとしつつまろやかなあっさりソースと小麦の香りのする麺のハーモニーは、やはり独特。
テレビ番組でダウンタウンの松本人志も絶賛していたが、ある程度の大人世代にとってこの味は代えがたいものがある。
販売停止直前のものと確かに味に変更はないようだ。でも「あれ、麺が以前に比べて細くなってない?」と感じた人もいるだろう。そういう人はペヤングにかなりブランクのある人。

2010~2011年あたりで麺は多少細く変更されているようなので、それ以前の記憶が強い人はそんな感覚を抱いてしまっても無理はない。
青春の味は、代えがきかないものなのです。近年の濃厚タイプでマヨネーズをビーム状に放射するタイプの焼きそばも記者は好きだ。それでもこの『ペヤングソースやきそば』の味も大好きだ。どちらかに決めるなんて、できない…。多分に郷愁というスパイスもかかってしまっているのかもしれないが。
余談だがこうした歴史の古い商品は自分なりのアレンジを加えて食べている人も多いもの。

参考ながら記者は、一度麺を取り出してかやくを底に入れ、ガーリックを入れて調理、1分ちょいでシェイカー動作含めて念入りな湯切りをしてそのまま1分放置、フタを開けてまずラー油を十字を切るようにササッとかけてコショウを入れ、ソースを2/3だけ使う、なんていう宗教儀式のような面倒くさい手順で食べていた。これだと硬めの麺とライトなソース風味が光る仕上がりになるのだ。万人におすすめは出来ないけれど。
とにかく「四角くって食べやすい。気が利いてるよな!」「ウースッ!」という流れの昔のCMを知る人なら、懐メロを聴くように遠い目になってその味わいを楽しめるので、問答無用でオススメ。

一方最近の濃厚好きな若い人は物足りなく感じてしまうかもしれないが、全てはここから始まったというスタンダードを知るという意味では勉強になるはずなので、カップ焼きそばファンを自認するなら試してみるべきである。

