■コンプレッサーが上部に! パナソニックだけの“トップユニット方式”
「パナソニックの冷蔵庫だけは、上にコンプレッサーが配置されているんです」
家電量販店で冷蔵庫を選んだ経験があるなら、店員の説明で必ず耳にしたフレーズなのではないだろうか。他メーカー冷蔵庫は本体下部に冷蔵庫の心臓部ともいうべきコンプレッサーがあるのが普通。これが野菜室や冷凍室を圧迫、容量を小さくする原因になっている。
ところがパナソニックだけはそのコンプレッサーを本体上部へ持っていった。そのため冷蔵室の最上段奥が狭くなっているが、そこはもともと手が届きにくいデッドゾーン。だから実用上何ら不便は無いはずという判断であり、さらに上部にコンプレッサーを置く構造は特許技術が絡んでおり、他社が取り入れにくいという側面もある。
この“トップユニット方式”は10年前、2005年モデルから採用されているパナソニック製冷蔵庫の大きな特徴。そのため最下段の野菜室でもしっかりと奥行きを確保できており、実際に引き出してみると、広々としたスペースに感動するはずだ。
またこの驚くほど広さを感じる理由は“トップユニット方式”によるものだけでないのにも注意。実はそれを含んだパナソニック独自の思想“ワンダフルオープン”が全体の構造に大きく関係している。これについて詳しく見ていこう。
■機能を超えて”思想”に⁈ ワンダフルオープンとは何なのか
冷蔵庫という家電は、日常生活で一番開閉する家電。
おかげで室内の奥の隅々まで見渡せて、広さのインパクトが増す。パナソニックはこれらの機構を総合して“ワンダフルオープン”と名付けた。さらにレールの位置を変更することで、通常逆台形の庫内スペースを真四角に、きっちり隅まで使えるようにしている。そうした細かな工夫も含めて収納容量を増しているのだ。単に収納量が多いだけでなく、しっかり見え、届く使いやすい冷蔵庫。まさにパナソニックの冷蔵庫哲学であり、それを表す機能が“ワンダフルオープン”や”トップユニット方式”なのである。
広くスッキリして見える“ワンダフルオープン”だが、こうした見た目の美しさだけでなく、ケースを外して丸洗いしやすいという実用上の利点もある。とかく汚れがちな野菜室だが、126Lのそれをガバッと外して浴室などに持ち込んで丸洗いできるというのは、清潔好きな人にとっては大きな魅力ではないだろうか。
他社がベアリング式レールを採用しない理由は、おそらくコスト面。
パナソニックでは2004年モデルから一貫して野菜室と冷凍室にベアリング式を採用しており、まさにこだわりの機構。要であるレールは1つずつ丁寧に内製されている。これらの特徴はすべて、型落ちとなる2014年の400リットル以上のモデルでも満たされている。
また、冷蔵庫シーンでもう一つの潮流である「電動オープン」が採用されていないのに気がついた人もいるだろう。パナソニックとしては身長の低い子どもに対する安全配慮の観点から電動オープンを見送ったそう。それはそれでメーカーのポリシーを感じるところ。
■肉・魚の鮮度を維持する「微凍結パーシャル」が「酸化ブロック冷却」でさらに進化!
西島秀俊の出演するCMでもおなじみ、”肉や魚の鮮度と美味しさを約1週間も保てる”と話題なのが「微凍結パーシャル」であり、パナソニック製冷蔵庫の大きなウリだ。ただ冷凍と何が違うのか、はっきりわかる人はあまりいないのではないか。
まずは基礎知識としてチルドとパーシャル(微凍結)の違いについて説明しよう。
一方パーシャルは、チルドよりもさらに低い温度帯、0℃以下の-3℃~-1℃をキープして“若干凍っている”状態を作ることを指す。すると保存期間が劇的に伸びて、通常3日程度の保存期間が7日程度まで鮮度保持できるのだ。
ただ一般的には、パーシャルはチルドよりも食材を長持ちさせられる一方で、味についてはやっぱりチルドの方が上……と思われているのではないか。しかしパナソニックは独自技術で、チルドよりも美味しい状態を生み出すことに成功したという。
酸化ブロック冷却と名付けられたその技術は、新たに食品の酸化に注目。食材の表面を一気に冷やし、先に表面を凍結させることによって、酸素が食品内に入るのを防ぎ食品の酸化を抑えておいしさを保つという発想だ。例えるなら、ステーキの表面を強火で焼いて肉汁をとじこめる……というアレである。
パーシャル自体は以前からある機能だが、一気に冷やして表面から微凍結させるこの「酸化ブロック冷却」は今回の2015年モデルからの目玉機能。食材表面の微凍結が始まるまでの時間でいうと、2014年モデルで約80分程度かかっていたところ、2015年モデルではわずか20分で実現と、大幅短縮に成功している。
■パーシャルの真価は保存力? いや調理面のアドバンテージも見逃せない!
実際のところ、チルドと比べて美味しいかどうか? それが気になるところだが、味覚については極めて主観的な判断になるものだから、ここで言及するのは避けよう。
たとえば刺身を薄く切るとき。微凍結状態のサク状態で購入してきて自分でカットすれば、エッジのピンとした刺身を味わえる。鶏肉も皮がズレて切りにくいというのが常識だが微凍結パーシャル状態ならサクサクと楽に切れる。餃子のあんやクリームコロッケのたねもまとまりが良い。魚を下ろすときは、内臓をポロッとまとめて取り出せるなど、調理する側に立つとかなり使い勝手の良い機能なのである。
もちろん設定変更次第で「微凍結パーシャル」をオフにして、一般的なチルド室としても使用可能。いずれの設定でも、この小部屋の天井から冷気をまんべんなく届け、ムラなく冷やせるので安心だ。
また上記はあくまで肉・魚に対する機能だが、野菜室もモイスチャーコントロールフィルターにより湿度調整を行い野菜を乾燥や結露による水腐れから守って鮮度を保ち、ナノイー技術で野菜が劣化する原因のエチレンガス発生を抑制する措置がとられている。
■記者が感動した使い心地を大きく左右する小さな工夫
ここからは細かな工夫を見ていこう。冷蔵庫は日々の相棒として気兼ねなく付き合っていくものだから、案外こういう点が重要だったりするものだからだ。
下2段には500mlのビールが立てて入る。パナソニックの冷蔵庫は、そもそも冷蔵室の扉の位置が低い(ローウエストライン)設計なので、棚の高さに余裕があるのだ。
またドアポケットの棚も低めになり、重いペットボトルも取り出しやすいのも小さな工夫。ドア側にもペットボトルが前後に並べて入るのは最近の冷蔵庫の傾向だが、底面が少し斜めになっていて取り出しやすい、液ダレがドア周りや本体・床まで伝わないようにポケット部分がボックス形状になっているなどの細かなアイディアは素晴らしい。
ただいたずらに広さを追求するだけでなく、人間が実際にどう使うかよく考えられた設計だと感じた。ただし棚の配置や高さについては、最終的にはユーザーの体格が関係する問題なので、購入前にはぜひ店頭で実機に触れてみる必要はあるが。
さらにLED照明の美しさも感動したポイント。冷蔵室内の上からだけでなく、左右にもLEDが仕込まれており、室内の食材がとても美味しそうに見えるのだ。テレビ番組などで斜め下から照らしている女優ライトのような……、まさに食材がライトアップされた状態なのである。皿で料理の味が変わってしまうのと同様、照明次第で食材たちがこんなにも愛おしく感じられて、驚く。
あとはテレビCMで見かける「エコナビ」。
■まとめ: 暮らし自体をバージョンアップするプレミアムな使い心地
冷蔵庫といえば機能や設置サイズが重視されがちだが、大きさ含めてキッチンに大きな存在感を示すのも確か。オープンキッチン式の住宅も多い中、実はデザインも非常に重要な要素になってきているのではないだろうか。その点で直線的でエッジが効いており、ミニマリズムを感じさせる外観デザインを備えた『NR-F611WPV』は、魅せるキッチンにもうってつけの製品だと感じた。パナソニックが2015年秋から家電製品につけたキャッチコピーは「ふだんプレミアム」というものだが、何でもない普段の暮らしを宝物にするというコンセプトはおそらく正しい。
この冷蔵庫『NR-F611WPV』も家電であるだけでなく、普段の生活を豊かに感じさせるデザインと最先端機能、細かい使い勝手のバランス感が見事だ。きっと万人にマッチするはずだが、中でも「パーシャル機能」に魅力を感じるならこの『NR-F611WPV』か、後日紹介する三菱電機製冷蔵庫がおすすめと考える。
さあ、次回は東芝の最新冷蔵庫をご紹介しよう。
【スペック】
パナソニック 微凍結パーシャル搭載冷蔵庫 WPVタイプ『NR-F611WPV』(フレンチドア)
(市場予想価格 税込約410,000円・2015年9月発売)
カラー オブシディアンミラー
設置サイズ/重量 高さ1828 × 幅740 × 奥行733mm 111kg
定格内容量 冷蔵室306L(うち微凍結パーシャル/チルド30L)/製氷室19L/冷凍室32L+125L/野菜室126L
年間消費電力 200kWh/年
特徴① 酸化を防いで買った日の鮮度そのまま「微凍結パーシャル」
特徴② 新鮮長持ち「シャキシャキ野菜室」
特徴③ ガラス素材が際立つべべリング加工
特徴④ 庫内広々「ワンダフルオープン」











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