昨年2月に改良を受けたタイカンターボクロスツーリスモを公道に引っ張り出す。写真で見るよりド派手
今年2月に独ポルシェが、欧州でのEVの販売不振を理由に戦略を大幅に見直し、エンジン車の開発を継続すると発表。
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■ポルシェのEVはグレード名に〝ターボ〟
独フォルクスワーゲン傘下の高級スポーツカーブランド・ポルシェが世界的なEV需要の縮小にもがき苦しんでいる。すでに経営戦略の見直しを発表し、ポルシェ初のEV・タイカンの工場などで、約1900人の従業員を削減するという。もちろん、このリストラはEVの販売不振が響いた結果である。
では、なぜEV販売は失速したのか。EVを持つことをステータスと感じるアーリーアダプター(早期導入者)や富裕層の購入が一巡したのに加え、実は専門家や自動車関係者からは、「EVからEVへの乗り換えが想定外に少ない」と指摘する声も。要するに、EV普及には充電インフラだけでなく、ほかにも課題が山積みなのだ。
話をポルシェに戻そう。ポルシェ初となるEVスポーツカー・タイカンが世界初公開されたのは、19年の独フランクフルトモーターショーだった。日本市場には20年に投入され、21年にはタイカンから派生した5ドアのSUVタイプのEV・タイカンクロスツーリスモが追加された。

ポルシェ タイカンターボクロスツーリスモ 価格:2308万円 車重は2330㎏とダイナマイトボディ。 加速は冗談抜きにすさまじいが、ブレーキの性能も目を見張るものがあった

ボディサイズは全長4974㎜×全幅1967㎜×全高1412㎜。SUVタイプのEVだ
今回試乗したのは、昨年2月にアップデートされたタイカンターボクロスツーリスモである。
実車とご対面。ポルシェジャパン関係者に聞くと、お値段は2308万円だそうだが、試乗車はオプションがギガ盛り状態なので、総額3121万円という超セレブ価格とか......家買えるじゃん!
SUVタイプなのでオフロードにも対応するというから、悪路走破も可能だ。ちなみに乗車定員は4人。運転席はガソリンモデルのポルシェと同様にタイトであったが、後席には多少の余裕が。

コックピットはフルデジタル。近未来感がハンパない。エアコンなどの操作はタッチディスプレーで行なう

レザータイプのシートの色はツートン。座るだけでスポーツカーに乗ってる感が味わえる
コックピットに目をやる。液晶パネルがズラリと並ぶ。
シフトレバーはフルデジタル表示のメーター左下に設置されている。非常にコンパクトなシフトレバーをDに入れ、いざ出発!
走り出してすぐに驚いた。EV化されてはいるが、走りもハンドリングもポルシェ味。ポルシェが造っているのだから当然っちゃ当然だが、無味乾燥なEVが多い中で(汗)、「さすがは老舗ブランド!」と思わずうなってしまった。
走りを確かめるために高速道路へ。合流でアクセルをグッと踏み込む。
「ヤバっ! エグっ!」
時速100キロ到達2.8秒の異次元の鬼加速を味わいかけ、思わず言葉が漏れる。ただ、誤解してほしくないのは、EVにありがちな野蛮な加速ではなく、しっかりと調教された加速である。もっと言えばポルシェというスポーツカーブランドの歴史と伝統を感じさせる加速であった。
余談だが、試乗車にはプッシュトゥパスという機能が装備されていた。
試乗車は〝音〟もハンパなかった。ポルシェ・エレクトリック・スポーツサウンドなる、エンジンに似た疑似サウンドが響き渡るのだ! しかも速度域に応じた音が出るから、実に芸が細かい。

EVなのでフロント部分に収納スペースが。トランクは広くないので、この収納は便利
道路の段差やつなぎ目などの足さばきもお見事。不快さはない。高速コーナーも余裕でこなし、不安は一切ない。
走行モードをグラベルモードに切り替えれば悪路走行も可能! ちなみにフル充電時の航続距離は568㎞で、最高速度は250キロである。まさにオールマイティなEVだ。
乗れば誰もが思うだろうが、ポルシェはEV化されてもポルシェだ。とはいえ、タイカンターボクロスツーリスモに乗った後、ガソリン車のポルシェに無性に乗りたくなったのも事実。
タイカンターボクロスツーリスモの出来栄えが素晴らしかったので、最新のガソリン車の走りはどうなのかを知りたくなった。
取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾