山口組分裂抗争終結で「食えないヤクザ」の大量離脱が始まる!?...の画像はこちら >>

シノギも厳しく規制され、組抜けしても5年間は市民生活が制限されるヤクザは、まさに「進むも退くも地獄」の状況に置かれている
六代目山口組と神戸山口組による分裂抗争は、六代目側の一方的な「終結宣言」によって事実上の終焉を迎えた。神戸側からはいまだに目立った発信はないが、2015年から10年にわたって続いた抗争は「ひと区切りついた」(捜査関係者)とみられている。

この節目を奇貨としてなのか、六代目側も20年ぶりとなる組織再編に乗り出したことも明らかになった。六代目体制を中核として支え、抗争の最前線にも立ってきたナンバー2の高山清司若頭がその座を退き、新設の「相談役」のポストに就き、後任に竹内照明若頭補佐が昇任したのだ。

絶大な影響力を持つ高山氏だけに「裏側から組織を取り仕切る院政を敷くのでは」(同)との見方もあったが、今月になって、六代目側がさらに大胆な組織改革に乗り出すことが判明した。

■カリスマ退場の衝撃

「六代目側は、現在の執行部体制を見直すことに決めたようです。高山氏は若頭のポストを自身の出身母体である弘道会トップの竹内氏に譲りました。このことから、自身も執行部入りし、次期七代目体制への組織固めをするとみられていました。

ところが、新たな執行部体制では高山氏が就く『相談役』は入らないことになる見込みのようです。そうなると、高山氏は慶弔事などの『義理事』の場にも顔を出さなくなることになる。ヤクザにとって義理事は、他の組織との〝外交〟の場にもなる重要な場面ですから、この意味は大きい。組織内の空気はがらりと変わるでしょう」(在阪社会部記者)

山口組分裂抗争終結で「食えないヤクザ」の大量離脱が始まる!?
六代目山口組のナンバー2の座である若頭を返上し、執行部から退出することとなった高山相談役

六代目山口組のナンバー2の座である若頭を返上し、執行部から退出することとなった高山相談役
高山氏といえば、六代目襲名直後に収監された司忍組長に代わって六代目体制を支え、司組長が出所後も組織を実質的に取り仕切ってきた辣腕ぶりで知られる。司忍組長と同じ弘道会出身で、同組織に権限を集中させる一極支配体制を築いた立役者でもある。

ただ、その中央集権的な組織運営が他の組織の反発も生み、それが件の分裂抗争の火種になったという側面もある。逆に言うと、それほど強烈な存在感とカリスマ性を持っていたからこそ、日本最大の指定暴力団の規律は保たれてきたともいえる。

そんな大物が一線から退いた場合、どんなシナリオが予想されるのだろうか。「ヤクザの大量離脱が始まるかもしれない」と囁くのは、在京の組織に身を置くある暴力団幹部である。

「高山さんの組織運営を『恐怖政治』などという人間もいるが、実際、恐れられていたし、その存在が組織の重石になっていたともいえる。高山さんが怖くて組から抜けられなかったという輩は少なくない。そういう連中が一斉にヤクザから足を洗うという事態は考えられるだろう」(暴力団幹部)

なぜ、そんな事態が起こるのか。

「食えないヤクザが増えすぎたせいだ。抗争が激化した影響で、『特定抗争指定』されてからはさらに生きにくくなった。すでに暴排があったにせよ、警察はこれまで見逃してきたネタでもお構いなしに引っ張る(逮捕する)ようになってきていた。最たる例がETCカードの件だ」(前出の幹部)

2024年5月、大阪地裁が電子計算機使用詐欺の罪で暴力団組長の男ら3人に有罪判決を言い渡した。組長の男が、同乗していない弟のカードを使って大阪府内の有料道路を走行したことが罪に問われた。

「この一件で有罪判決を受けたのは六代目の若頭補佐、いわゆる『プラチナ』と呼ばれる直系二次団体の秋良連合の会長だった。2023年にも同じ罪名でパクられていたことも響いて、懲役10カ月の実刑判決を食らってしまった。

なんでも、摘発した大阪府警は会長の車を尾行したり、オービスも駆使してガチガチに証拠固めしてパクり、有罪まで持っていったらしい。最初からロックオンしてたってことだろうが、正直、これには参った。ここまでやるのか、あいつらって」(前出の幹部)

■足を洗っても取れない"Gマーク"

この幹部がぼやくように、2011年までに全国で暴力団排除条例が施行されて以降、「暴排」の流れは止むどころか加速の一途をたどる。いわゆる「G(極道)マーク」、つまり暴力団認定がされてしまうと、住宅ローンの借り入れや賃貸物件の契約はおろか、銀行口座さえ作れなくなるのは巷間知られているところだ。

「組を抜けてカタギになればいいってもんでもない。ヒラの組員だったら5年。現役時代になにがしかの役職についていたら、10年はGマークが外れないといわれている。

それも、明確に期限が決まってるわけでもないから、自分が本当に外れてるのかどうかもわからない。認定を外すか外さないかは、お上の一存で決められちまうってことさ」(前出の幹部)

国策による「暴排」は確かに効果を上げている。2024年末には全国の暴力団構成員、準構成員数は1万8800人となり、過去最少を記録。20年前には4万人以上いたヤクザの半数以上が廃業に追い込まれている。こうした窮状に件の分裂抗争が追い打ちをかけ、「ヤクザ」はますます「食えない」商売になってきたというわけだ。

しかし同時に、当局による締め付けが強まったことで、ヤクザの〝アングラ化〟も急速に進んでいる。

捜査関係者の一人は、

「かつては各組が『破門状』や『絶縁状』といった回状を組織の内外に回して組員の処分について情報共有していた。ところが、最近は取り締まりを警戒してか、そうした回状を表だって回すことがほとんどなくなった。

現場の人間にとっては、回状で組織への人の出入りが確認できていた面もあったし、それによって組織の現状を把握することもできていた。ヤクザと接触するのも御法度となっているし、情報を取るのはかなり難しくなっている」

と打ち明ける。

「半グレ」や「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」といった新たな組織犯罪が勃興するなかで、生存圏を日に日に狭められていくヤクザたち。日本最大組織の「カリスマ」の退場が、さらなる退潮を招くことになるのだろうか?

文/安藤海南男 写真/時事通信社、photo-ac.com

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