「坦坦麺餃子工房北京」に現れたピエール瀧
これはピエール瀧さんの大好きなもやしソバを食べに行く連載です。でも時々、なぜか違う方向に行ってしまったりもします。
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――今回は東京から離れて、神奈川県川崎市の宮崎台に来ています。
ピエール瀧(以下、瀧) ちょうど今、電気グルーヴのツアーをやっているんだけど、サポートメンバーでギターを弾いている吉田サトシが「宮崎台の『北京』という店がおいしいので、ぜひ行ってみてください」って教えてくれたので来てみました。
――ツアーは愛知、宮城が終わって、あとは静岡、大阪、福岡、東京ですね。
瀧 そうだね。で、サトシに「もやしソバはどんな感じ?」って聞いたら「僕、もやしソバは食べたことないんですよ。でも餃子がうまいんです」って言うから「餃子の連載じゃないんだよ。もやしソバなんだよ」って言っといた。でも、せっかくオススメされたんだから、行って食べてみないと。
――はい。いつも行列ができている地元の名店らしいですよ。
瀧 それは期待できる。
――このへんです。集合住宅の1階にお店が並んでいるんですけど、その中のひとつですね。
瀧 ここだ。看板に「北京特製タンタンメン」「店長のおすすめ餃子」って大きく書いてある。
――タンタンメンが有名らしいんですよ。特製タンタンメン食べたいですね。今回は取材ということで休憩時間におじゃまするので、長時間並ばずに食べられますし。
瀧 でもさ、ここでタンタンメンを食べちゃうと、この連載を読んでいる人たちは「あいつら何やってんだ」って思うわけでしょ。ここはブレずにもやしソバを頼むべきじゃない?
――取りあえずお店に入りましょ。
店主の尾池久男さん(以下、尾池) いらっしゃいませ。
瀧 よろしくお願いします。この連載はとにかくもやしソバを食べ歩くという企画なので、本来ここに来たら絶対にタンタンメンを食べるべきなんでしょうけれども、今回はあえてもやしソバを注文させてください。
尾池 はい。大丈夫ですよ。
瀧 あと、知り合いが「餃子がおいしい」と言っていたので餃子もお願いします。
尾池 それならタンタンメンも作りますので、皆さんでシェアして食べてみてください。
瀧 ありがとうございます。
(隣の席で仕込み作業をしていたアルバイトさんに話しかける)
瀧 賄いで食べたお店のメニューの中で何がおいしかった?
バイトさん タンタンメンもおいしいですし、個人的にはナス味噌炒めが好きです。
瀧 よりによってもやしソバを注文する俺たちのことどう思う?
バイトさん もったいないなと。
瀧 やっぱそう思うのか(笑)。もやしソバを頼むお客さんはけっこういる?
バイトさん いらっしゃいますけど、タンタンメンに比べると......。
瀧 どんな人が頼む感じなの?
バイトさん もやしソバは男性のイメージがあります。女性が食べてるのを見るのは少ないですね。
瀧 なるほど。
――あ、もやしソバが来ました!
「もやしそば」(900円)
瀧 すごい。もやし、豚バラ、細切りニンジン、ニラ、キクラゲが入ってる。で、あんかけタイプね。すごくいい香りがする。スープは透き通っていて、醤油ベースのあっさり味。麺はノーマルタイプの中太麺かな。すごくまとまりがいい。具だくさんで豪華な感じがいいね。そしてうまい!

「もやしソバは、具だくさんで豪華な感じがいいね!」
尾池 はい、餃子もどうぞ。
瀧 ありがとうございます。
尾池 皮から作ってるんです。
瀧 餃子の皮めっちゃ薄いのにモチモチしてる。中のあんは赤ちゃんでも食べられそうなくらいすごく柔らかい。これ、2人前なんか余裕で食えるよ。
――タンタンメンも食べてみてくださいね。
瀧 はい。あ、俺たちが普通に思い浮かべるごまペーストとひき肉のやつとちょっと違う。とろみのある醤油ベースのスープにゴロゴロしたひき肉、ニンニク、ザーサイ、ネギが入ってる。うまい!
――これはおいしいですね!
「この店に来たら餃子とタンタンメンを食わなきゃダメでしょ」
瀧 もやしソバの連載だけど、このタンタンメン超うまいですね! このお店のタンタンメンはこんな感じのオリジナルなんですか?
尾池 そうですね。「北京」系列の仲間の店が川崎や鶴見のほうにもあって、そこでタンタンメンを頼むとごまじゃなくて醤油あんかけで出てきます。私は2代目なんですが、親父がやってた頃に北京の仲間が集まる「北京会」というのがあって、そこで考え出されたみたいです。
瀧 川崎だと「元祖ニュータンタンメン本舗」もありますよね。
尾池 その店の創業者も最初は「北京」という名前でやっていて、その後、自分なりに工夫してニュータンタンメンを作ったんです。
瀧 そうだったんですか。言われてみれば、ニンニクが強くて味の方向性は似ている気がします。ちなみにタンタンメンのタンタンって、どういう意味なんですか?
尾池 タンタンって普通は担ぐという字を書きますよね。元は担いで売っていた麺ということです。
瀧 そうなのか。日本でいえば屋台みたいなものですね。じゃあ、味を自由に作ってもいいんだ。知らなかった。

店主の尾池久男さんと。「もやしソバの連載だけど、この店のタンタンメン超うまいです」
――瀧さん、完全にタンタンメンに心を奪われてますね(笑)。
瀧 いや、この店に来たら餃子とタンタンメンを食わなきゃダメでしょ(笑)。
――確かにそうですね。
瀧 こういうこともあるから、皆さんからも「この店のもやしソバはすごいぞ」という情報を教えてもらえれば、また今回みたいな出会いがあるかもしれない。だから大募集しよう!
――はい。連絡先は下に記しておきます。というわけで、今回の『萌えタンタンメン』は終了です。
瀧 おい、タイトル違うだろ。
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■坦坦麺餃子工房北京
神奈川県川崎市宮前区宮崎2‐6‐11‐1F
044‐854‐4288
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO