世界でハイブリッドが売れに売れているが、日本勢では三菱が先行...の画像はこちら >>

写真中央は新型RAV4の説明を行なうトヨタのサイモン・ハンフリーズ取締役。この発表会見は大きな話題に

トヨタの世界戦略車RAV4の新型に最新のPHEVが搭載され話題を呼んでいる。

いったい何がどうスゴいの? トヨタを粘っこく取材している自動車研究家の山本シンヤ氏が噂のPHEVを徹底解説!!

* * *

■世界で爆売れ! トヨタのRAV4

――北米を中心にHEVの販売が好調のトヨタが、5月21日に大きな発表をして話題を呼んだそうですね?

山本 6年ぶりにアップデートされた6代目となる新型RAV4を東京都内で初公開しました。RAV4は180を超える国と地域で累計1500万台以上を売るトヨタの大ヒットモデル。昨年のRAV4の世界新車販売台数は104万台で、実はスバルの年間新車販売台数を上回るレベルです。

――6代目RAV4はもう日本で売っているんですか?

山本 来年3月までに発売される予定ですね。

――クルマの見どころは?

山本 注目はパワートレーン。HEVとPHEVの2タイプを用意しています。逆に言うとガソリン車はありません。ちなみにカローラシリーズとクラウンシリーズも現在は電動車のみとなっています。

――トヨタは着実に電動化を進めているわけですね。話を6代目RAV4に戻すと、トヨタが新開発したPHEVの実力はどうです?

山本 大前提として日本市場においてPHEVといえば、やはり三菱のアウトランダー。知名度、シェアどちらも高いです。一方のトヨタは、HEVは絶好調ですが、PHEVは正直パッとしません。

この分野に関しては完全に三菱が先行していますね。

世界でハイブリッドが売れに売れているが、日本勢では三菱が先行......トヨタの「PHEV」がパッとしないのはなぜ?
三菱の伝家の宝刀とも言えるのが、アウトランダーPHEV。写真は昨年アプデされた最新モデル。売れ行き絶好調

三菱の伝家の宝刀とも言えるのが、アウトランダーPHEV。写真は昨年アプデされた最新モデル。売れ行き絶好調

世界でハイブリッドが売れに売れているが、日本勢では三菱が先行......トヨタの「PHEV」がパッとしないのはなぜ?
写真は6代目RAV4に搭載されたトヨタ新開発のPHEVシステム。最大出力は320馬力を誇る

写真は6代目RAV4に搭載されたトヨタ新開発のPHEVシステム。最大出力は320馬力を誇る

――今年1月31日に発売されたトヨタの高級ミニバン・アルファードとヴェルファイアのPHEVモデルはファンの憧れの的になっているようですが?

山本 ただ、アルファードのPHEVは1065万円、ヴェルファイアのPHEVは1085万円で......数が売れるクルマではありません。

世界でハイブリッドが売れに売れているが、日本勢では三菱が先行......トヨタの「PHEV」がパッとしないのはなぜ?
今年1月にアルファードとヴェルファイアに用意されたPHEV。ネット上には「マジ欲しい」「憧れ」の声も

今年1月にアルファードとヴェルファイアに用意されたPHEV。ネット上には「マジ欲しい」「憧れ」の声も

――これまでトヨタのPHEVがパッとしなかったのはなぜですか?

山本 トヨタのHEVは小さいバッテリー容量で効率良く走れることが特徴なので、モーターを活用した大きな力は瞬間的にしか出せません。しかし、PHEVは違います。特にハイブリッドモードは大容量バッテリーを活用し、モーターのパフォーマンスをほぼ使い切って出力が出せることが大きな強み。

意外と知られていませんが、先代モデルとなる5代目RAV4のPHEVは、時速100キロ到達の加速はトヨタ車の中で、GRスープラに次ぐ2番目です。

――マジか!

山本 ところが販売店では「ガソリン代浮きますよ」みたいな売り方しかせず(笑)。〝トヨタのPHEV〟の魅力はパフォーマンスと環境性能ですが、どうしても環境性能ばかりが目立ってしまう。

――ただ、現状では誰もが充電設備を自宅に備えているわけではないですよね?

山本 なので、普通のHEVでみんな満足してしまっているわけです。だからこそ、僕はトヨタのPHEVでしか味わえない魅力をもっと訴求する必要があると思っています。

――6代目RAV4が搭載するPHEVはどう進化した?

山本 以前、トヨタの佐藤恒治社長を取材した際に「(PHEVの)EV航続距離が200㎞になれば、EVいらずになるかもしれませんね」という話があった。

ちなみに6代目RAV4のEVの航続距離は従来の95kmから5割以上延びて最大150kmに! つまり、佐藤社長が語っていた〝200km〟が、いよいよ絵に描いた餅ではなくなってきました。

世界でハイブリッドが売れに売れているが、日本勢では三菱が先行......トヨタの「PHEV」がパッとしないのはなぜ?
6代目RAV4のPHEVにのみGRスポーツが用意された。このトヨタの戦略の背景にはどんな意図が!?

6代目RAV4のPHEVにのみGRスポーツが用意された。このトヨタの戦略の背景にはどんな意図が!?

――環境性能が大きく向上したわけですね。気になるパフォーマンスの部分は?

山本 6代目RAV4にはGRスポーツが用意されていますが、なんとPHEVのみの設定です。そのPHEVのシステムは第6世代に進化、小型軽量化しながらも、最高出力は従来の306馬力から320馬力に磨き抜かれています。

――トヨタの最新技術が注がれて超絶進化した6代目RAV4のPHEV。ズバリ売れますかね?

山本 グローバル市場で100万台以上を売るクルマですから、当然大きな反響があるとみています。ただし、日本市場に関していえば、その鍵を握るのはRAV4の兄弟車であるドル箱SUVのハリアーじゃないかと予想しています。

――ハリアーは日本市場における超ヒットモデルです。

山本 いうなれば〝SUVのマークⅡ〟のような存在ですが、勝負は新型ハリアーに今回の新型PHEVが載ったときじゃないですか。

――まだ公式アナウンスはありませんが、ハリアーの新型は本当に出るんですか?

山本 あくまで僕の取材の感触ですが、新型ハリアーの開発は進んでいるでしょう。

――トヨタのPHEVの逆襲が日本市場で始まる?

山本 その先陣を切るのが6代目RAV4だと思います。注目のクルマですから、試乗をしたら即リポートします。お楽しみに!

撮影/山本佳吾 山本シンヤ

編集部おすすめ