1月28日、FMH傘下のフジテレビ社長に就任した清水賢治氏。FMHの次期社長にも内定している
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。
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私はフジ・メディア・ホールディングス(以下、FMH)の株主だ。2025年6月25日に開催される株主総会は同社史上もっとも注目される。当日は現場に行って熱気を感じたいと思う。
FMHの業績悪化のなか、大株主らは抜本的改革を求めている。投資ファンドのダルトン・インベストメンツは会社提案の取締役11名に対し、SBIホールディングスの北尾吉孝さん、著作『億までの人 億からの人』で有名な元ゴールドマン・サックスの田中渓さん(!)ら独自選抜の12名を提案した。同社への提案書も公開している。
おさらいだが、株式会社は株主の持ち物で、取締役を選定する。そのなかから代表取締役が選ばれる。「物言う株主」などと揶揄(やゆ)されるが、経営に口を出すのは当然だ。
経営陣刷新だけではなく、不動産事業分離、3000億円の政策保有株売却、配当性向50%への引き上げ、自社株買い実施も求められた。
ただ、不動産事業分離などは多くの識者も指摘しており、新鮮味があるわけではない。ビジネスモデル刷新や地方局との関係にもっと深く切り込むのではと私は予想していたが......。
取締役の人選についてはFMHが反論を公開し、さらにダルトンが再反論している。両者(社)ともウェブページから確認できるので一読をお勧めしたい。当然ながら、FMH側は会社提案の取締役のほうが適しているとし、その理由にスキルマトリクスをあげた。
スキルマトリクスとは、取締役一人ひとりが備える知見・経験を「見える化」した一覧表だ。たとえば「業界知見」など、10前後の尺度で各人を評価する。複数の取締役でスキルマトリクス各項目を網羅できていれば、多様な観点からの経営が可能になるわけだ。これは各上場企業で公開されている。
誤解なきよう先に断っておくと、私にFMHを揶揄する意図はない。ただ、私は同社の株主だ。
うむむ、と思ってFMHの「統合報告書2024」を確認してみた。すると......スキルマトリクスの項目が完全に同じではないので単純比較はできないが、「法務・リスク」はほとんどの取締役にチェックが入っているものの、清水さんにはない。もちろん清水さんも多くの項目にチェックがあるが、「サステナビリティ・ESG」にもチェックがない(この文末に「(笑)」とつけるか悩んだ)。
これは、この1年間で学んだということだろうか。繰り返すが揶揄する意図はない。この一覧表自体がその程度のものなんだろう。
実は、私が注目するのは株主総会「後」だ。ダルトンはフジだけではなく、各社に株主提案を実施している。江崎グリコ、ノーリツ、三菱鉛筆、帝国繊維、荏原実業。提案はすべて否決されている。
しかし、けっして無駄ではない。多くの場合、株主提案を否決した後に会社側はその内容を「独自」に取り入れる。結果、会社は改善されていく。フジ、がんばれ。キャッチフレーズは「きっかけは、株主総会」だったっけ?
写真/時事通信社