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【第1位】ダイハツ「ミライース GRスポーツコンセプト」いわゆる"ダイハツカラー"の赤いボディに、GRのエンブレムが輝いていた。専用フロントバンパーやBBS鍛造ホイールを装着

今年上半期に取材した話題のモデルの中から、珠玉にも程がある「やりすぎカー」を選び、勝手に表彰! 選考委員長は日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員で、自動車研究家の山本シンヤ氏。

それでは、上半期に注目したクルマを一挙大紹介!

■日産の名車がEV化!

山本 上半期の1位はダイハツのミライース GRスポーツコンセプトに決定しました。

――今年1月に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された世界最大級の改造車の祭典「東京オートサロン」で披露されたクルマですね。

山本 TGR(トヨタ・ガズー・レーシング)と志を共にするDGR(ダイハツ・ガズー・レーシング)が開発したモデルですが、2019年に発売されたコペンGRスポーツ以来となる〝イケイケモデル〟といわれています。

――どこがやりすぎ?

山本 そもそもベースのミライースは〝第3のエコカー〟として鳴り物入りで登場した軽自動車です。そのクルマにターボエンジンと5速のMT(マニュアルトランスミッション)を投入したのです! しかもそれだけでなく、クルマのバランスを整えるために徹底的に磨き上げたサスペンションや空力アイテムなども惜しみなく投入!

輝く! 週プレ「やりすぎカー・オブ・ザ・イヤー」2025上半期
室内で目を引いたのは本革ステアリングにレカロ社製のスポーツシート。何よりたぎるのはMT!

室内で目を引いたのは本革ステアリングにレカロ社製のスポーツシート。何よりたぎるのはMT!

――まさに〝公式魔改造〟! 東京オートサロンでも多くのクルマ好きの注目を浴びまくっていました。ズバリ、市販の予定は?

山本 ダイハツはこのクルマについて〝走りを楽しむためのエントリースポーツ〟と語っています。これまで認証不正問題など暗い話題ばかりでしたが、僕は〝新・ダイハツ〟を証明するための重要な一台だと思っています。

量産化は検討中とのことですが、すでにラリーフィールドでは〝壊しては直し〟を繰り返して鍛えられています。そこまでやっていながら出さなかったら、ユーザーは怒る(笑)。

――2位は上半期に大きなニュースとなったインド産のスズキ車です!

山本 ジムニー史上初となる5ドアモデルのジムニーノマドです。今年4月3日から発売する予定でしたが、1月30日の受注開始と同時に注文が殺到。月販目標1200台ながら4日間で空前絶後の約5万台を受注しました。

やりすぎというか売れすぎ!

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【第2位】スズキ「ジムニーノマド」ジムニーシリーズ初となる5ドアモデル「ジムニーノマド」。この男心を刺激する小型四輪駆動車に受注殺到。大きなニュースに!!

【第2位】スズキ「ジムニーノマド」ジムニーシリーズ初となる5ドアモデル「ジムニーノマド」。この男心を刺激する小型四輪駆動車に受注殺到。大きなニュースに!!

――この爆売れでジムニーノマドの展示会やイベントはすべて中止になり、ツチノコに匹敵する幻カーに......。

山本 ジムニーの唯一の欠点だった〝居住性〟を高めたことで、選択肢に含めるユーザーが増えた結果ですね。ただ朗報が! これまで受注を停止していましたが、7月から増産を開始するとスズキが正式発表。

発売当初は月間1200台でしたが、月間約3300台へと生産を拡大する見込み。これなら買える!?

――3位は経営危機の日産。

山本 こちらも1位同様、東京オートサロンに出展されて大きな話題を呼んだ日産のR32EVです。

――なぜ話題になったの?

山本 1989年にデビューしたR32型スカイラインGT-RのEV(電気自動車)化というチャレンジをしました。パワートレインはリーフNISMO RC02用を活用した電動AWDで、オリジナルを軽く超えるパフォーマンスを誇ります。

ただし、GT-Rはエンジンが命なので発表するやいなやネットで大炎上......。いわゆる〝魔改造〟に思われがちなクルマですが、リア部分以外は元に戻せる構造なのはあまり知られていません。

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【第3位】日産「R32EV」日産が誇る往年の名車、R32型スカイラインGT-Rを公式EV化。今年の東京オートサロンではファンの注目を集めた

【第3位】日産「R32EV」日産が誇る往年の名車、R32型スカイラインGT-Rを公式EV化。今年の東京オートサロンではファンの注目を集めた

――商品化は?

山本 残念ながら市販化予定はありません。日産としては伝説のクルマの〝走りの味〟をEV時代にも残したいという気持ちがあり、このようなクルマを企画・製作したそうです。

さらに言うと、このクルマのために採用された18インチホイールやレカロシート、液晶メーターなどのアイテムは既販車への水平展開も検討されているそうです。

■スズキが史上初「輸入車」の覇者に

――4位は?

山本 三菱が〝最高傑作〟と胸を張るアウトランダーPHEVの大幅改良モデルです。見た目の変化は少なめですが、走りの部分はフルモデルチェンジ並みの進化を遂げています。

――アウトランダーPHEVってどんなクルマ?

山本 13年に世界に先駆けてSUVタイプのPHEV(プラグインハイブリッド車)として登場。現行モデルへの切り替えは21年です。三菱が長年培ってきた「電動化技術」と「四輪制御技術」の最新版をギガ盛りされたクルマ。PHEV市場をリードする三菱の新たなフラッグシップと言ってもいいクルマです。

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【第4位】三菱「アウトランダーPHEV」昨年10月31日に登場した三菱の新型アウトランダーPHEV。価格は526万3500~668万5800円と値は張るが販売はすこぶる好調

【第4位】三菱「アウトランダーPHEV」昨年10月31日に登場した三菱の新型アウトランダーPHEV。価格は526万3500~668万5800円と値は張るが販売はすこぶる好調

――どこがやりすぎ?

山本 開発陣の〝三菱愛〟が大爆発しているところですね。かつて三菱は経営が厳しい時代もありましたが、そんな状況でも会社を去らなかったエンジニアの魂と、ルノー・日産アライアンスの強み(プラットフォームや安全装備など)を生かしたクルマ造りが見事に合致。

最上級グレードは700万円に迫りますが、販売はすこぶる好調。〝ベスト・イン・クラス〟と言っていい仕上がりと商品力です。

――5位は?

山本 ヒョンデのアイオニック5Nです。走りをさらに突き詰め、年内発売予定のDKエディションを東京オートサロンで取材しましたが、そのベース車です。ちなみにDKエディションの監修者は〝ドリフトキング〟の異名を持つ土屋圭市氏です。 

――アイオニック5Nを推す理由は?

山本 最高出力650馬力、時速100キロ到達は3.4秒といったド級のスペックが注目されがちですが、それ以上に驚くのは数値に表れない部分......EVであることを忘れるフットワークの懐の深さと、走る喜びをリアルに実感する演出です。

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【第5位】ヒョンデ「アイオニック5N」韓国自動車大手のヒョンデが、昨年6月に日本市場に投入した高性能モデル・アイオニック5N。最高出力650馬力を誇る過激EV

【第5位】ヒョンデ「アイオニック5N」韓国自動車大手のヒョンデが、昨年6月に日本市場に投入した高性能モデル・アイオニック5N。最高出力650馬力を誇る過激EV

――具体的には?

山本 EVなのに爆音のエンジンサウンドが響き渡り、ハンドルについているレバーでギアチェンジすると、音はもちろん、シフトショックまで再現。さらにサーキットで連続周回してもまったくへこたれない冷却性能に加えて、なんとドリフト走行も余裕でこなします。いろいろな意味でやりすぎです!

――どんどんいきましょう!

山本 6位は中国BYDが今年4月15日に投入したSUVのシーライオン7です。同社にとって日本市場向けEV第4弾です。

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【第6位】 BYD「シーライオン7」中国自動車大手のBYDが今年4月15日に日本で販売開始したSUVタイプのEV。世界各国で販売される文字どおりBYDの世界戦略車

【第6位】 BYD「シーライオン7」中国自動車大手のBYDが今年4月15日に日本で販売開始したSUVタイプのEV。
世界各国で販売される文字どおりBYDの世界戦略車

――どこがスゴい?

山本 クルマに〝魂〟が宿り始めた気がしました。これまでのBYDは、「最高の技術を投入すれば、絶対にいいクルマに仕上がる」という技術屋集団的な考えが色濃いクルマが多かった。

しかし、シーライオン7は数値に表れにくい感性領域に気づき始め、それが走りに表れていました。ちなみにカラオケ機能も搭載されていて、防音性能も高く音漏れも最小限なので熱唱できます。その上で価格がスゴい! 後輪駆動モデルが495万円で、四輪駆動モデルが572万円。相変わらずの圧倒的なコスパには脱帽です!

――7位は6月17日に発表された日産のEV、3代目リーフです!

山本 初代リーフは10年に世界初の量産型EVとしてデビュー。累計販売台数は約70万台となっています。ただ、直近はライバルの進化についていけず、〝元祖〟なのに存在感が薄れていたのも事実です。そんな中、日産自体も大ピンチに。

輝く! 週プレ「やりすぎカー・オブ・ザ・イヤー」2025上半期
【第7位】日産「リーフ」EVのパイオニアである日産が誇るEVがリーフ。今回の新型で3代目となる。果たして経営再建中の日産の切り札カーになるか!?

【第7位】日産「リーフ」EVのパイオニアである日産が誇るEVがリーフ。今回の新型で3代目となる。果たして経営再建中の日産の切り札カーになるか!?

――汚名返上も求められる3代目リーフはどこがスゴい?

山本 〝再生日産〟の象徴の一台となるべくロジカルに開発されています。

目新しい飛び道具こそありませんが、徹底した空力性能の向上や電動パワートレインの効率向上などにより最大航続距離は600㎞超。

フットワークは日産自慢のフラッグシップEV・アリアの骨格を使っているので、走りもかなり期待できそうです。〝技術の日産は消えず〟という感じです。

――8位は再びスズキ。

山本 昨年10月に発売となったインド産のコンパクトSUVのフロンクスです。

――どこがやりすぎ?

山本 インド産ですが、日本市場のためにわざわざ4WDを設定し、走りも専用の味つけにしています。スズキにしては攻めたデザインも受けています。なんといっても装備充実なのに、「おっ、値段以上!」な価格が強い武器となっています。

販売も好調で、今年4月にはスズキ史上初となる輸入車販売トップに立ちました。フロンクスは、スイフトと並ぶ〝スズキの基幹〟になるモデルです。

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【第8位】スズキ「フロンクス」昨年10月16日に発売となったスズキの小型SUV・フロンクス。世界70以上の国と地域で販売。価格254万1000~282万7000円

【第8位】スズキ「フロンクス」昨年10月16日に発売となったスズキの小型SUV・フロンクス。世界70以上の国と地域で販売。
価格254万1000~282万7000円

■EVで大リストラのポルシェもランクイン

――いよいよ大詰め。9位はホンダです!

山本 CR-V e:FCEVです。CR-Vはホンダの歴史あるSUVで、初代は95年に登場しました。

――選考理由は?

山本 ホンダはEV推しのイメージが強いですが、実はFCEV(水素燃料電池車)の開発はトヨタ並みに長い歴史がある。最大の特徴は〝プラグイン〟FCEVで、水素フル充填で約621㎞、バッテリーフル充電で約61㎞(WLTCモード)。

つまり、近距離はEV、中・長距離はFCEVで走行が可能です。ここはトヨタ・ミライとは異なるこだわりの部分ですね。

輝く! 週プレ「やりすぎカー・オブ・ザ・イヤー」2025上半期
【第9位】ホンダ「CR‐V e:FCEV」充電機能のついたFCEV。脱炭素の大本命的なクルマ。ちなみに現状では最大5年間のリース専用車なので、買い取りはできない。残念

【第9位】ホンダ「CR‐V e:FCEV」充電機能のついたFCEV。脱炭素の大本命的なクルマ。ちなみに現状では最大5年間のリース専用車なので、買い取りはできない。残念

――なるほど。

山本 水素はインフラ整備が課題なので、EV走行ができるのはうれしいところ。しかもホンダらしく、ドライブモードの「スポーツ」を選択すると、伸び感ある加速に加えてエンジン音のような疑似サウンドも奏でます。

――いろいろやりすぎ! 10位はポルシェのEVです。

山本 タイカンターボクロスツーリスモです。

――ポルシェは世界的なEV需要の縮小にもがき苦しんでいます。

山本 ポルシェ初のEV・タイカンの工場などで大リストラを発表しています。ただ、そんな空気を吹き飛ばすのがタイカンターボクロスツーリスモ。時速100キロ到達2.8秒で、ボタンを押すと10秒間だけ最高出力884馬力のパフォーマンスは言うまでもありませんが、乗ると「EVでもポルシェだね!」を実感できるのは、お見事のひと言です。

輝く! 週プレ「やりすぎカー・オブ・ザ・イヤー」2025上半期
【第10位】ポルシェ「タイカン ターボクロスツーリスモ」お値段は2335万円だが、試乗車はオプションがギガ盛り状態だったので、総額3000万円突破という超セレブ価格。ちなみに乗車定員は4人

【第10位】ポルシェ「タイカン ターボクロスツーリスモ」お値段は2335万円だが、試乗車はオプションがギガ盛り状態だったので、総額3000万円突破という超セレブ価格。ちなみに乗車定員は4人

――惜しくも次点となったのはどれ!?

山本 ホンダのシビックRSです。ターボ&MT専用車ですが、購入者はシニアではなく、20代の若者が中心となっています。普段使いをこなしながら、ワインディングロードなどでクルマを操る楽しさを味わえるクルマ。

モンスター状態のタイプRとは違った〝ちょうどいいスポーツ〟に仕上がっている。絶妙なさじ加減は、常に全力投球のホンダスポーツにはない魅力があります。

輝く! 週プレ「やりすぎカー・オブ・ザ・イヤー」2025上半期
【次点】ホンダ「シビックRS」昨年9月にアップデートされたシビックに、新グレードとなるRSが爆誕! クルマ好きの間で話題の的に。価格は439万8900円

【次点】ホンダ「シビックRS」昨年9月にアップデートされたシビックに、新グレードとなるRSが爆誕! クルマ好きの間で話題の的に。価格は439万8900円

撮影/宮下豊史 山本佳吾

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