【モーリーの考察】「日本人vs外国人」のポピュリズムは大きな...の画像はこちら >>
『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、東京都議会議員選挙や参議院議員選挙で政党・候補者が公然とアピールするようになった「外国人」というイシューについて、欧米の事例と比べながら考察する。

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先の東京都議選では、自民党の"惨敗"と共に、「日本人vs外国人」という構図を前面に押し出した参政党の3議席獲得が話題になりました。

すでに欧州では、反移民・反エスタブリッシュメントを掲げて大衆の感情をあおるポピュリズム政党が、既存の秩序を揺るがしています。移民に対する厳しい姿勢を打ち出すドイツのAfD、イギリスのリフォームUKは地方選挙で大躍進し、オランダのPVVは国政第1党です。

また、二大政党制のアメリカでも、近年は暴言・混乱・分断が"政治エンタメ"として消費される状況が常態化。そこで生まれる怒りや不満を燃料に、トランプ大統領が国内外で「アメリカの信頼」を破壊するような振る舞いを続けています。

このように国民の憤りがポピュリストに吸い上げられ、そのまま制度や秩序に取り込まれる構図は、日本にも"輸入"されるのでしょうか。

メディアでは、しばしば「日本でもポピュリズムが広がりつつある」との懸念が語られます。

「広がりつつある」ことには私も同意しますが、現時点で欧米のような大きな波になる環境下にはない、という点も強調しておきたい。インバウンドの伸長こそあれ、日本は全国規模で「移民問題」が生じるほど多くの移民を受け入れてすらいません。

また参政党にしろ、れいわ新選組にしろ、反エスタブリッシュ色の強いとがったポピュリズムを軸とする政党の勢力は、現段階ではあくまで民主主義における"健全な振れ幅"、あるいは"想定内のバグ"にとどまっています。ただ、この先も急拡大が「ない」と断言できるわけでもありません。

近年起きていることは、従来の経済構造において恩恵と安定を享受し、「政治的無関心」が合理的な選択だった人々が、コロナ禍や不況、インフレ、あるいは海外の戦争などをきっかけにネット上のニュースに関心を持ち、「既存のマスコミは真実を伝えず、既存の政治は国民の利益を優先しない」という漠然とした思いに駆られている――そんな現象だと私は観測しています。

今のところ参政党は、「無知で真っ白な新規参入者」の熱で伸びているのかもしれません。

しかし、この先巧妙に立ち回れば、ドイツのAfDのような位置につける可能性もある。

かつて自民党右派を支持し、石破政権のみならず維新や国民民主にも失望した「保守」層を大きく取り込み、"イデオロギー型の持続的なファン"と"にわかファン"を上手に調合して土台を広げる――そんなシナリオです。その最低条件は、AfDやアメリカのMAGAのように、地方の細かい選挙に至るまで、党首のパフォーマンスに依存しない徹底した浸透工作を進めることです。

こうしたポピュリズムの拡大を後押しする要因が、政治性の高い情報をプッシュする傾向にあるSNSや検索エンジンのアルゴリズムです。昨年11月の兵庫県知事選では、まさにXが「強めのメッセージのシェアを最大化する」「ファクトチェックのブレーキを外す」という作用を果たしていたように見えました。

若者から高齢者までスマホに目を落とし街を歩く今、この潮流は日々強まっていくかもしれません。テックビリオネアたちの思いのままに世界が「変更」され、そこに順応した政治勢力が「急進」する――そんな時代になったのでしょうか。

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