霊能者への相談は殺到、防災グッズも爆売れ......。"7月...の画像はこちら >>

予言が独り歩きしたが、何事もなく過ぎ去った7月5日

「7月5日に大災難が起きる!」マンガ『私が見た未来』の予言が独り歩きし、日本中をザワつかせたが、フタを開けてみれば......結局何も起きなかったじゃねーか! 運命に翻弄されたお仕事人たちの悲哀、お聞きください。

* * *

■経済損失は5600億円!?

人騒がせすぎる!

案の定というべきか、何事もなく過ぎ去った7月5日。そう、たつき諒氏のマンガ『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社、2021年)の中で、日本に「大災難」が起きることを示唆された日のことである。

同作品はもともと1999年に刊行されたもので、表紙に「大災害は2011年3月」と記されていたことから、東日本大震災を的中させた予言の書として注目されていた。

そして内容がSNSやユーチューブでこぞって取り上げられると、「2025年7月5日に何かが起こる」という不安が世の中を席巻。「南海トラフ地震に備えて、当日は東京を離れる」と語る人も現れた。

霊能者への相談は殺到、防災グッズも爆売れ......。"7月5日大災害予言"振り回されたお仕事人たちの収支報告
東日本大震災を予言した『私が見た未来』。なお、同書には「大災難が起こるのは2025年7月」としか書かれていない(夢を見た日は7月5日)

東日本大震災を予言した『私が見た未来』。なお、同書には「大災難が起こるのは2025年7月」としか書かれていない(夢を見た日は7月5日)

たまたま同時期にトカラ列島周辺で地震が相次いではいたものの、結果的に何も起こらなかったことは幸いだ。しかし、予言に振り回された人々は意外と少なくない。

6月下旬から7月の第1週にかけて、都心の飲食店経営者からは次のような声がたびたび聞かれた。

「この数日、外国人のお客さんが半減しています。欧米の方はあまり変わりないのですが、アジア圏のお客さまがはっきりと減ってしまいました」(渋谷区の居酒屋経営者)

同じ渋谷エリアでは、こんな声も。

「夏本番に向けて、さらに外国人観光客が増えるだろうと見越して鮮魚の仕入れを増やしていたのですが、まったく当てが外れてしまいました」(居酒屋経営者)

実際に渋谷を歩いてみても、この時期は街が明らかにすいていて、外国人観光客の減少をリアルに感じたものである。

霊能者への相談は殺到、防災グッズも爆売れ......。"7月5日大災害予言"振り回されたお仕事人たちの収支報告
香港の有名な風水師がこの予言を紹介したこともあって、この頃インバウンド客は激減しているという。いい迷惑!

香港の有名な風水師がこの予言を紹介したこともあって、この頃インバウンド客は激減しているという。いい迷惑!

とりわけ予言の影響が大きかったのは香港だ。

現地の著名な風水師が7月5日予言を取り上げ、日本への渡航を控えるよう呼びかけたことから、各地の空港で香港便の減便が相次ぎ、今なお運航再開のめどは立っていない。

また、インバウンドアナリストの宮本大氏はこう言う。

「中国本土からの流入は母数が大きいため、ほんの数%の減少でも経済効果に大きなインパクトを与えます。例えば昨年の訪日中国人の消費額は約1.7兆円で、月平均にすれば約1400億円。仮に7月の訪日中国人が20%減なら、280億円の損失ということになります」

他方、野村総合研究所は中国を含めたアジア諸国が日本への旅行を控えたことによる悪影響を「マイナス5600億円」と試算。ある意味、しっかりと〝大災難〟は起きたと言える。

■出生率が落ち込むリスクも

逆に、今回の騒動が特需につながった分野もある。例えば防災グッズだ。

三重県で防災用品の販売を手がけるヤマックス・中出健司氏はこう語る。

「弊社で最も売り上げが大きい楽天市場店のデータを見てみると、確かに6月末をピークに7月2日くらいまでの売上高やアクセス数は上がっています。また、昨年の6月期の売り上げとの比較では、128%増と好調でした。

これを予言の影響と断定するのは難しいですが、企業間取引では特に目立った動きが見られなかったことを踏まえると、報道やSNSの影響を感じざるをえないですね」

霊能者への相談は殺到、防災グッズも爆売れ......。"7月5日大災害予言"振り回されたお仕事人たちの収支報告
防災グッズの売り上げはアップ。防災意識が高まったのはいいことだったかも?

防災グッズの売り上げはアップ。
防災意識が高まったのはいいことだったかも?

一方、耐震技術に定評のある都内の大手ハウスメーカーに問い合わせてみたところ、「特に問い合わせや相談が増えている事実はありません」とのこと。ネタがネタだけに、特需が起きるとしても、短期集中的に売買される商品に限られるのかもしれない。

では目先を変えて、スピリチュアルにはスピリチュアルを。占い師や霊能者への影響はどうだろうか。

「相談件数そのものは増えていませんが、今年はすべての相談者から必ず7月5日について聞かれました」

そう語るのは、かつて某CS番組内で冠コーナーを持っていた霊能者、通称「魔女っ子」さんである。

「例えば、名のある経営コンサルタントの方から、『新規事業を始めようと思うのですが、7月は避けたほうが無難でしょうか?』と大真面目に聞かれるようなこともあり、皆さん今回の予言をとても気にしている様子でした。

ただ、たつき諒さんも実は日付は特定していないようですし、私自身もこの日に何かが起きるイメージはまったく持っていませんでした」

しかし、だからといって油断してはならない。

「個人的には7月限定ではなく、年内いっぱいはイヤな予感がしています。天災なのか人災なのかはわかりませんが、日本に大きな分断を起こす出来事があるかもしれません。それが南海トラフであれなんであれ、引き続き防災への意識は保つべきでしょう」

最後に、この騒動について、経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏に総括してもらった。

「1999年に地球が滅ぶとされたノストラダムスの大予言も含め、この手の予言は当たったためしがありませんから、私はまったく気にしていませんでした。しかし、オカルト界隈では予言は定番ネタですから、きっと今後も似たような騒ぎは起きるでしょう。

経済戦略的な視点で言えば、災害が起きると建設や防災関連の株価は上がりますから、それを見越して投資計画を立てるのはアリかもしれません」

ちなみに鈴木氏によれば、99年以降の数年は世界滅亡を見越してか、日本や欧米の先進国で出生率が下落しているという。 

「特に欧米圏はキリスト教国が多いため、終末論が根づいていますからね。予言を信じて、子を産むべきではないと考えた人もいたのでしょう。ともあれ、今回の予言を受けて今年や来年の合計特殊出生率が落ち込む可能性もあり、これもバカにならない〝災難〟でしょう」

予言は一部業界にささやかな特需を生んだものの、日本経済全体で見れば収支は圧倒的にマイナスだった。勘弁してください!

取材・文/友清 哲 写真/iStock PIXTA

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