任天堂は「Nintendo Switch 2」の初年度の目標販売台数を1500万台としている。初代スイッチと比べて、本体サイズやディスプレーがやや大きくなったほか、グラフィック性能なども大幅に向上。
6月5日に発売されるや、4日間で世界350万台を瞬く間に売り上げた、任天堂の最新ゲーム機「Nintendo Switch 2」(以下、スイッチ2)。同社オフィシャルサイトなどで断続的に抽選販売が実施されているが、抽選なしで、どの店舗でも購入できるようになるのはまだ先のようだ。では、それはいつになる? 品薄が1年以上続いた、あのゲーム機と同じことにはならない? 調べました!
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■オフィシャルサイトに約220万もの応募が
6月5日に任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch2」が発売されてから、はや1ヵ月。ユーザーからは続々とレビューやプレイ動画が発信され、全国的に確かな盛り上がりを見せている。
スイッチ2といえば、Yahoo!オークションやメルカリなどオークションサイトやフリマアプリで出品が禁止・制限されたり、公式ECサイト『マイニンテンドーストア』での抽選販売に際し「スイッチソフトの50時間以上のプレイ実績」「Nintendo Switch Onlineに累積1年以上加入」という条件があったりと、転売対策に関するニュースも大きな話題となった。
そのマイニンテンドーストアでの販売には、第1回予約抽選に日本国内だけで任天堂の想定を大幅に上回る約220万もの応募が殺到。ゲームメディア『インサイド』が行なったアンケートによると約76%が落選、SNSではユーザーたちの悲喜こもごもの声が上がった。予約抽選はこれまで4回実施されているが、まだまだ多くの落選者が出ているのが実情だ。
それでは家電量販店の販売状況はどうか。
「抽選販売の引き取り期間は終了しており、次回の入荷は未定です。いずれにしても当面は一般販売の予定はありません」(ソフマップAKIBAアミューズメント館スタッフ)
ネット通販『ヨドバシ・ドット・コム』での抽選販売以外に、都内店舗を中心に店頭で予約なしで購入できる、いわゆる"ゲリラ販売"を行なったヨドバシカメラも状況は変わらない。
「6月21日と22日にそれぞれ入荷分を店頭販売し、いずれも即日完売となりました。次回の店頭販売については未定です」(ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaスタッフ)

ヨドバシカメラで『マリオカート ワールド』を遊んでいた10代の男子学生4人組
同店のSwitchコーナーに設置されたデモゲーム機で『マリオカート ワールド』を遊んでいた10代の男子学生4人組もまだ購入できていないと話す。
「僕はマイニンテンドーストア、ノジマオンライン、アマゾン、楽天ブックスで抽選に応募しましたけど、全部ハズレました。ほかの3人もそれぞれ3、4店舗で抽選に応募してますけど、みんな落選です。早く欲しいので任天堂さん、よろしくお願いします!」
一般ユーザーだけでなく、芸能人も歯がゆい思いをしているようで、モデルの藤田ニコルや元TBSアナウンサーの宇内梨沙、プロフィギュアスケーターの宇野昌磨といったゲーム好きが落選の憂き目に遭っている(7月1日時点)。
希望者すべてにスイッチ2が行き届くのはまだ時間がかかるのか。今後の生産体制について任天堂に質問を送ると、「申し訳ありませんが、いただいた個別のご質問への回答は控えさせていただきます。なお、少しでも多くのお客さまのお手元に商品をお届けできるよう、努力を続けてまいります」という回答にとどまった。
■「PS5」とはまったく状況が違う
アニメやゲーム分野に造詣の深いフリーライターの多根清史(たね・きよし)氏は、第2回のマイニンテンドーストア抽選販売に当選、6月5日の発売当日にスイッチ2を手に入れた。彼は第1回の抽選で落選し、方針を変えたことが功を奏したと話す。
「スイッチ2は通常の日本語・国内専用バージョンとは別に多言語対応バージョンがあり、前者が4万9980円(税込)に対して、後者は6万9980円(同)。応募の際にどちらかを選びます。当然、『日本語・国内専用』に応募が殺到しました。
私は、第1回は『日本語・国内専用』に応募しましたが、やはり落選。このままでは手に入らないと、思い切って多言語対応バージョンに変更。
ゲームライターで日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表の鴫原盛之(しぎはら・もりひろ)氏も、第2回の抽選販売で当選した。
「初代スイッチに比べると手に入りづらくなったのは事実だと思いますが、生産体制を整えて転売ヤー対策をしっかり行なっての抽選販売だから、手に入らない人が一定数出てしまうのも仕方がないことでしょう」
スイッチ2とは違い、転売ヤーの餌食となって、一般ユーザーがまったく購入できなかったのが2020年発売のPlayStation 5(以下、PS5)だったという。
「僕が抽選に当たってPS5を購入できたのが発売日から約2年たってからですからね。それに比べたらスイッチ2は全然マシです」
前出の多根氏も、品薄が長らく解消されなかったPS5との違いについてこう話す。
「PS5に搭載されていたプロセッサーは、スペックの高いパソコンに使われるような最先端の半導体に近かった。当時はコロナ禍でゲーム、パソコン需要が高まっていたこともあって、製造ラインでこのチップを奪い合うという状況が生まれたんです。
それで生産が追いつかず、転売ヤー対策も特にしなかったことから、いつまでたっても店頭にPS5が並ばなかった。挙句、無理に生産しないで1台ごとの利益を上げるために高く売ろうという方針に変わり、すっかり日本市場を逃してしまいました」
その一方で、うまく製造ラインを確保できたのが初代スイッチだという。
「初代スイッチが搭載しているプロセッサーはNVIDIA製の『Tegra Ⅹ1』。これは同社が開発してあまり売れなかった携帯ゲーム機『NVIDIA SHIELD Portable』の余りを使っていたともいわれる古めのチップでした。
このように、そもそも最先端技術へのこだわりが薄い任天堂ですから、製造ラインの確保は比較的楽だったみたいです。コロナ禍で一時的に品薄になったことはありましたが、大手量販店でも週2、3回の割合で緊急入荷されるなど、その状態が長引きませんでした。
あ、もちろん先端技術にこだわりがないといっても、技術面で"2025年にリリースされたゲーム機"とうたえる水準には十分に達していると思います」
■照準は年末商戦に
今後のスイッチ2の供給について前出の鴫原氏はこう見通す。
「ヨドバシカメラなどの量販店で予約なしで販売できるようになったのはある程度、生産台数が確保できているからこそのはず。正直、これだけ早いタイミングでそこまでいくとは予想していませんでした。今後も順次、入荷されると思います」
では、どのくらいの時期に希望者すべてにスイッチ2が行き渡るようになるのか。任天堂のアメリカ法人「Nintendo of America」社長のダグ・バウザー氏は「ホリデーシーズンまでに需要を満たすことができると考えている」と語っている。アメリカのホリデーシーズンとは11月下旬からクリスマス、年末までの期間のことだ。
「日本においてもクリスマス・年末商戦には普通に買えるようになるでしょう。任天堂もそれを踏まえたローンチスケジュールだと思いますよ。『ゼルダの伝説』『スプラトゥーン』シリーズの新作が発売されるタイミングで在庫が潤沢にあるというのが任天堂にとって理想的な状態ですから。
逆に言うと、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などの化け物タイトルがローンチだった初代スイッチと違って、任天堂による専用タイトルが『マリオカート ワールド』のひとつしかない状態のスイッチ2にみんなが必死になってるこの状況はちょっと変だなと思います(笑)」(前出・多根氏)
マイニンテンドーストアは7月上旬から第5回の抽選販売の申し込みを開始することを発表した。都内の某量販店スタッフも「確かなことはわからないが、供給は安定しているようなので7月に何度か入荷があると思います」と話した。
抽選にハズレまくりでまだゲットできていないあなたの手元にも、思ったより早くスイッチ2が届く......かも!?
取材・文・撮影/武松佑季 写真/共同通信社