古古古米で作り上げた汗と涙の本格ビリヤニ。ぜひこの味を堪能してほしい!
古古古米が出回り始めた。
■ビリヤニブーム到来!
インドやパキスタンなどで食べられている料理、「ビリヤニ」がブームになっている。コメをスパイス、肉、魚などと一緒に炊き込んだ料理で、大阪・関西万博でも行列ができた。ビリヤニが食べられる市中のインド料理店も注目されている。
本格的なビリヤニはバスマティライスという粒が細長いインディカ米を使用するが、高価なため、自分で仕入れて自宅で作るとなるとお財布に厳しい。今、安く手に入るコメといえば政府が放出した備蓄米〝古古古米〟だ。これを使ってビリヤニをおいしく作れないだろうか?
春にお花見レシピを紹介してくれた〝呑兵衛料理家〟の肩書を持つ、おねこさんに相談に行った。
* * *
――古古古米でビリヤニを作りたいんです!
おねこ すごく面白い試みですね! 普段カレーとか作ることはありますか?
――カレーは時々作ります。
おねこ では、本格的なビリヤニを作りましょうか? 手順は多くて少し大変ですが、古古古米だからこその絶品ビリヤニができます!

呑兵衛料理家・おねこさん
■古古古米の輝き
――〝古古古米だからこそ〟とはいったい......。
おねこ 古古古米は新米に比べて乾燥して粘り気が少なめです。ビリヤニにとってはそれがメリットで、スプーンからこぼれるようなさらさらとした食感になりやすいです。
――おお! すべてのコメはいずれビリヤニに通ず、ということですね!
おねこ それは言いすぎかもしれませんが、この企画は古米の特徴を生かした良い試みだと思います。古米は甘さや香りが少ないですが、スパイスを利かせたビリヤニならむしろおいしいです♪ 今回は2021年度産の備蓄米5㎏1922円(税込)を使用します。
――楽しみです! まずは材料とスパイスですね!
おねこ 基本的にスーパーでそろえられるもので作ります。ミディトマトはミニトマト3、4個に代えてもOKです。
ベイリーフに関してはスーパーに置いてないこともあるので、ローリエで代替しても大丈夫です。ベイリーフはシナモンの葉、ローリエは月桂樹の葉です。ベイリーフ以外は、スーパーのスパイスコーナーに並んでいますよ♪
――今回のビリヤニはけっこう辛いですか?
おねこ 辛さは、辛味スパイスのカイエンペッパーで調節できます。辛味ゼロにしたい方はナシでOK。激辛好きは増やしてOKです。
――よかったです!
おねこ 食べるときの注意ですが、ホールスパイス(パウダー状でないもの)は食感が硬いので、基本的には食べずに除いてくださいね。
■ビリヤニ実践!
おねこ では作っていきましょう! 今回鍋は2個使用しますが、コンロひとつを想定したレシピになっています。(*詳しい材料や作り方は記事末に掲載)
――アパートだとコンロがひとつだったりしますよね。同時加熱がないのはありがたいです!
おねこ 一見難しく感じるかもしれませんが、手順を整理するとスムーズになります。
「グレービーを仕込む」→「フライドオニオンを作る」→「ホールスパイスの香り出しをする」→「別の鍋でコメをゆでる」→「重ねて炊く」の流れです。
――なるほど! グレービーとは......?
おねこ いろいろなカレーのもとになるスパイスソースです。
――ほかの料理にも使えそうですね! あれ? 材料のBとCは同じものですか?
おねこ ここの書き方、かなり悩んだのですが、Bはグレービーの香りつけ用で、Cはコメに香りと塩味をつける用です。それぞれで作って、最後に重ねて炊くのがポイントです。
――グレービー仕込み完了! コメも浸水させました。フライドオニオンを作ります!
おねこ グレービーは最大一晩置いて大丈夫ですが、コメは長く置きすぎると割れやすくなります。色が白くなればOKで、60分ぐらいの浸水が適切です♪
玉ネギはなるべく均一の厚さに切ると揚げ色にムラが出にくいです。色がついてからは焦げるまでが早いので目を離さないようにしてください。ちなみに弱中火は弱火と中火の間です。
――玉ネギ、焦げ茶色になったので取り出します。この鍋にBを入れて、ホールスパイスの香り出しですね。
おねこ 焦げると風味が悪くなるので、加熱中は目を離さない感じで!
――気が抜けませんが、すべては本格ビリヤニのため......。次はグレービーを鍋に敷き詰めて、別の鍋でコメをゆでて......。
おねこ コメはゆですぎ注意なので、タイマーでしっかり4分計ってくださいね!
――ゆでたらコメを100均で買った網杓子ですくって......。
おねこ 炊き加減に直結するので湯切りはしっかり!
――......おねこさん、今回いっそう気合い入っていません?
おねこ ビリヤニ自体がちょっと複雑な工程が多いですが、これを乗り越えたら、とても幸せな景色が待っているので、ぜひそれを味わってほしいんです!
――頑張ります! いよいよ炊くのですね!
おねこ グレービーの水分でコメを炊きます。鶏肉から出る水分、ヨーグルトとトマトの水分です。
――ここにきて難関が......。
おねこ なので、水分が逃げないようにフタはしっかり閉めてください。隙間があれば作り方⑧のようにアルミホイルで覆ってからフタをするとグッドです! 最後の蒸らしは通常の炊飯と同様に重要です。蒸気が行き渡ってコメの炊き加減が安定します。
――で、で、できた......。古古古米ビリヤニ~(泣)。
おねこ 頑張りましたね......! 盛りつけるときにペパーミント(分量外)がもしあれば、ちぎって散らしましょう。
――あれ? このヨーグルトみたいなのは?
おねこ ライタといって、ビリヤニのつけ合わせの定番です。ヨーグルトに少しの塩とスパイス、好みで刻んだ野菜を加えたものです。ビリヤニの辛味を和らげ、まろやかなコクが加わる、いわゆる「味変」アイテム。
ここでは塩、クミンパウダー、カイエンペッパー、クミンシードをふりかけ、刻んだキュウリを混ぜ込みました。
――コメの違いは別にしても、ちゃんとビリヤニの味がします。ライタと一緒に食べるとさらにうまい!
おねこ 今回はせっかくの古古古米チャレンジ。コメを炊飯器で炊いたら〝ビリヤニ風〟で終わってしまいますが、とことんおいしく食べるために本物に近い形に振り切りました。
――おねこさん......(泣)。
おねこ あと途中で諦めてほしくなかったので言いませんでしたが、今回のグレービーは1カップほどの水かココナツミルクを加えてひと煮立ちさせたら、めちゃくちゃおいしいカレーになります。簡単なのでぜひやってみてください!
――ムリヤリ、ビリヤニ、大成功!
【古古古米の良さを生かしたマジうま本格「ビリヤニ」】
〈材料2人分〉

使用する主な材料。一見そろえるのが大変そうなスパイスも、スーパーの専用コーナーで入手できる
鶏もも肉......1枚(250g)
ミディトマト......1個(60g)
玉ネギ......1/2個(100g)
サラダ油......大さじ2
コメ......1合
水......1L
バター......10g
●グレービー材料(A)
プレーンヨーグルト......大さじ2(30g)
塩......小さじ1
おろししょうが......小さじ1
おろしにんにく......小さじ1
クミンパウダー......小さじ1
コリアンダーパウダー......小さじ1
カイエンペッパー......小さじ1/2~
ターメリックパウダー......小さじ1/4
●グレービー香りつけ用(B)
カルダモン(ホール)......3個
クローブ(ホール)......3個
クミンシード......小さじ1/2
シナモンスティック......1/2本
ベイリーフ......1枚
●コメの香りつけと塩味つけ用(C)
カルダモン(ホール)......3個
クローブ(ホール)......3個
クミンシード......小さじ1/2
シナモンスティック......1/2本
ベイリーフ......1枚
塩......小さじ2
〈オススメの調理器具〉
〇鍋......2個
・ビリヤニを炊く用(フタ付き)
⇒容量1.5L、直径16cmのステンレス製。 大きすぎず(直径16~20cm程度)、厚手のものが最適
・コメをゆでる用
⇒あふれない大きさのもの(容量1.5L以上)
〇網杓子(揚げ物で使うカス揚げなどのこと)
〈作り方〉
①グレービーを仕込む
ボウルにA(グレービー材料)を入れて混ぜる。鶏肉は3~4cm角、トマトは2cm角に切って加え、混ぜ合わせて冷蔵庫で1時間ほど置く
②コメを浸水させる
コメは洗い、水(分量外)に浸して冷蔵庫で30~60分置いた後、水を切る
③フライドオニオンを作る
玉ネギは薄切りにする。鍋にサラダ油を弱中火で熱し、玉ネギが焦げ茶色になるまで、こまめに混ぜながら10分ほど揚げ焼きする。火を止め、油をしっかり切って玉ネギを取り出す

とにかく焦がさないことに神経を注ぐべし!
④ホールスパイスの香り出しをする
B(グレービー香りつけ用)を③の鍋に入れて残っている油に浸し、弱中火にかける。
⑤グレービーを鍋に敷き詰める
④の鍋に①と、③のフライドオニオン半量
を加えて混ぜ合わせ、平らに敷き詰める
⑥別の鍋でコメをゆでる
別の鍋に水を入れて強火にかけ、沸騰したらC(コメの香りつけと塩味つけ用)を加える。再度沸騰したら②のコメを手早く入れ、コメが底にこびりつかないようにすぐ混ぜる。湯が沸き立ち、コメがおどる状態を保って4分ゆでる

とにかくゆですぎないことに集中するべし!
⑦コメを移す
4分たったらコメを網杓子ですくい、湯をしっかり切って⑤の鍋にコメの半量を移す。グレービーの上に平らにならし、続けて残りのコメも同様に移す。ゆで始めから6分以内に完了させる
ゆでたコメをグレービーを入れている鍋に移すときは、利き手に網杓子を持ち、逆の手でグレービー入りの鍋を持つ。そして湯切りしながらコメを移す!
【8】ビリヤニを炊く
コメの上にフライドオニオンの残りを散らし、バターをのせる。フタをし、弱中火で4分、弱火で10分炊き、火を止めて10分蒸らしたら完成

フタをして炊くべし。そして蒸らすべし!
◎完成!!いただきます!

●呑兵衛料理家 おねこ(Oneko)
ビールは箱買い。豊富な食材に魅了され、北海道永住を決めた生粋の食道楽。山菜採りやキャンプ、プロ野球観戦(日ハムファン)が趣味。「夜が楽しければきっと明日はもっと楽しい!」をモットーに、自分のためのおつまみのほか、企業向けにも幅広くレシピを開発
撮影/おねこ (料理写真)