もやしラーメンの細麺をチョイスしたピエール瀧。特製玉子麺の細麺は、博多ラーメンの麺くらいの細さ
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。
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――今回は埼玉県の久喜市に来ています。瀧さんの仕事終わりに便乗して、ローカルな雰囲気のもやしソバにありつけるかもしれないということで参上しました。
ピエール瀧(以下、瀧) 朝から久喜市の郊外で映画のロケ撮影があったんだよ。終わるのが昼頃だから、ちょうどいいと思って。
――で、ネットでお店を検索したところ、出てきたのがこちらの「鶴峯飯店」です。県道からちょっと入った所にあるお店です。
瀧 なんか独特の店構えだね。元はなんのお店だったんだろう。「ハンバーグを出す洋食店」と言われれば「そうかも」と納得する感じもある。入ってみよう。

埼玉県久喜市にある鶴峯飯店へ
――今は午後2時くらいですけど、けっこう、お客さんがいますね。
瀧 家族連れも多い。近所の人が遅めの昼ごはんを食べているのかな。駐車場のあるなじみの町中華という感じなんだろうね。地域で信頼されてる感じがあるね。
――メニューもすごくたくさんありますね。
瀧 麺類は「ラーメン」(750円)、「もやしラーメン」(890円)、「担々麺」(1000円)、「味噌ラーメン」(1050円)か......。
――「五目あんかけ」(980円)もありますよ。
瀧 五目あんかけは「ラーメン」「焼きそば」「揚げそば」「ごはん」の中から、組み合わせを選べるってシステムか。なるほど。
――「海老あんかけ」(1080円)も同じシステムです。
瀧 そして「広東麺・広東焼きそば」(880円)は、「塩味の豚と野菜のあんかけ」って書いてある。ほかにも「天津丼」(950円)、「五目豆腐あんかけラーメン」(980円)、「エビ豆腐あんかけラーメン」(1080円)ね。
――あ、「サンマーメン」(850円)もありますよ。
瀧 ちょっと待てよ。もしかしたら、この店は「あんは任せろ!」ってことなのかもしれない。だって、もやしラーメンとサンマーメンがメニューに一緒に載ってるってレアじゃない?
――確かに。もやしラーメンはあんがかかってないけど、サンマーメンはあんがかかってるってことですかね。
瀧 その疑いは強い。あとでお店の人に聞いてみよう。
――うわあぁぁぁ。
瀧 どうした?
――こっちのメニューには「あんかけ玉子チャーハン」っていうのがあるんですけど、「下記よりあんかけが選べます」って書いてあるんです。選べるあんかけは「マーボードーフ」「鶏肉と白才」「五目」(すべて930円)、「エビチリ」「海老と野菜(塩味)」(共に1130円)です。
瀧 これは間違いないな。この店は絶対にあんが売りだ。
――あんビリーバボーな量でしょうね。あんだけに!
瀧 .........。ほら、こっちのメニューのここ見てよ。「当店の麺類は加須市の野中製麺さんの特製玉子麺を使用しています」だって。しかも、「太麺か細麺からお選びいただけます」。さらに「麺類に+420円で半チャーハンが付けられます」だよ。もう、情報量ありすぎ!
店員さん ご注文はお決まりですか?
瀧 はい。もやしラーメンとサンマーメンをお願いします。で、もやしラーメンには半チャーハンをつけてください。
店員さん 麺はどうしましょう?
瀧 もやしラーメンは細麺で、サンマーメンは太麺でお願いします。
店員さん はい。
――あれ? 瀧さん、何を調べているんですか?
瀧 久喜市の特産品を調べてるんだよ。だって、ここまであんを推してるってことは、もしかしたら久喜市の特産品は片栗粉じゃないかと思って......。
――どうですか?
瀧 久喜市の特産品は「梨」「イチゴ」「地酒」「和洋菓子」だって。ご当地グルメだと「行田フライ」。水で溶いた小麦粉を鉄板で平たく焼きながら、みじん切りにした豚肉やネギを入れる。
――お好み焼きみたいですね。あ、注文した品が来ました。
「もやしラーメン」(890円)
瀧 やっぱりだ。もやしラーメンにはあんがかかってない。スープはあっさり系の醤油味でうまい。で、噂の玉子麺は、けっこう細くて博多ラーメンの麺くらいの細さ。

手前がサンマーメン、奥が瀧氏の頼んだもやしラーメン。その違いは?
――意外ですが、そこまでとろみがついてる感じじゃないんですよ。
瀧 そうなの!? 麺は?
――太麺は平打ち麺なんですかね。断面は円で、ちょっとだけ平たくなっている気がします。サンマーメンの肉も大きめです。
瀧 これはますます、もやしラーメンとサンマーメンの違いがわからなくなってきたぞ。こうなったら、お店の人に直接聞いてみよう。お忙しいところすみません。
店主の山田勇さん もやしラーメンは、もやしがメインに入っています。サンマーメンには野菜のあんかけがのっています。
瀧 なるほど、ですよね。ありがとうございます。おいしかったです。

店主の山田勇さん(左)、お店のスタッフの皆さんと
――何かわかりました?
瀧 結局、謎は深まるばかりだわ。もしかしたら、具の野菜の種類が関係あるのかもしれない。ニンジンが入っていると、サンマーメン寄りになるとか?
――そうなんですか!?
瀧 そして推測だけど、これだけあんかけを押し出しているのに、そこまであんがこってりしていないところが、このお店の人気の秘密かもしれない。
――なるほど! 近所の人が毎日食べても飽きないあんの加減ってことですね。ホントですか!?
瀧 わからん。判定は読者に任せよう。
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■鶴峯飯店
埼玉県久喜市鷺宮6-6-27
0480-58-7234
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO