ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手...の画像はこちら >>

スカウト部長が思わずうなった右腕! 来年が楽しみな2年生の逸材!

今年も盛り上がりを見せた夏の甲子園。さあ次はドラフトだ! 今大会で名を上げた注目選手を一挙紹介していこう!

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■スカウト注目ナンバーワンは!?

ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手

連日、酷暑の続いた夏の甲子園。バックネット裏に陣取るプロ球団のスカウトたちも、心なしか元気がなさそうだった。

暑さだけでなく、今年はプロ志望の有望選手が少なかったのだ。

そんな中、スカウト陣が「今大会ナンバーワン」と口をそろえた右腕が石垣元気(健大高崎・群馬)だ。大会8日目となる8月13日の京都国際戦に登板すると、甲子園歴代最速タイとなる155キロを計測。日本ハムの大渕 隆スカウト部長はこう語る。

「高校生の中で最注目の存在で、ドラフトでは1位入札される可能性が高いでしょう。力感なく常時150キロ台のストレートが投げられる。持っているエンジンの大きさを感じます」

ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手
石垣元気(健大高崎/群馬) 甲子園歴代最速タイとなる155キロを計測。スカウトからは「ドラフトでは1位入札される可能性が高いでしょう」と早くも期待が寄せられる

石垣元気(健大高崎/群馬) 甲子園歴代最速タイとなる155キロを計測。スカウトからは「ドラフトでは1位入札される可能性が高いでしょう」と早くも期待が寄せられる

スカウト陣が評価したのは、石垣の類いまれなスピード面だけではなかった。大渕氏が続ける。

「変化球が良かったです。いろんなアウトの取り方ができるように準備してきたのでしょう。マウンドでの余裕を感じました」

ロッテの榎 康弘スカウト部長も石垣の変化球に目を丸くした。

「横に曲がるカットボール、落ちるスプリットと変化球の使い方がうまくなっていて驚きました」

石垣は以前から球速が出る一方で、「球質」を疑問視されてきた。ストレートのシュート回転が強く、打者から空振りを奪えない。つまり、「速くても当てられる」ボールだった。

しかし、今夏の石垣はシュート質のストレートを逆手に取り、逆方向に曲がるカットボールを使って、左右に揺さぶれるようになった。さらに縦に落ちるスプリットも駆使し、投球の幅を広げている。

春までの石垣は「プロではリリーフ向き」と評されていた。しかし、大渕氏は「むしろ先発で長いイニングを投げるほうが向いているかも」と語っている。

ただし、榎氏が「もっと長いイニングを見たかった」と苦笑したように、今夏の石垣はあまりに登板機会が少なかった。

初戦、3-6と敗色濃厚の7回裏から2イニングを投げたのみ。群馬大会でも、2試合で計5イニングしか投げていない。健大高崎の青栁博文監督は医師から「石垣は出力が高い分、故障のリスクがある」と助言を受け、石垣の起用を制限したことを明かした。

大会前には優勝候補に挙がった健大高崎は結果的に初戦で甲子園を去った。

だが、石垣がプロで大成できれば、後年になって青栁監督の決断はたたえられるはずだ。

■左右投手の逸材をピックアップ

今大会は左投手の好素材が多く出場した。中でもプロスカウトが熱視線を送ったのは、江藤 蓮(未来富山)である。未来富山は全校生徒25人のうち、野球部員が23人という通信制の高校として話題になった。

江藤は身長180cm、体重84kgの筋骨隆々な左投手。最速145キロと驚くような球速ではないものの、打者の手元で伸びるような好球質を武器にする。

だが、今夏の甲子園では持ち前の快速球のキレがいまひとつだった。初戦の高川学園(山口)戦は6回途中までに11安打を浴び、8失点で降板。スカウトの間では「富山大会は良かったのに」という声も上がったが、それでも江藤の高評価は不変。DeNAの河原隆一スカウトは自身も現役時代は左投手だっただけに、江藤について語る口調も自然と熱がこもった。

「やっぱりモノはいいですよ。甲子園では右バッターの外角の球が抜けてしまっていたけど、本来は外にビシビシと投げられる投手です」

ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手
江藤 蓮(未来富山) 初戦の高川学園戦で6回途中までに11安打を浴び、8失点で降板したものの「将来性は高い」との評価

江藤 蓮(未来富山) 初戦の高川学園戦で6回途中までに11安打を浴び、8失点で降板したものの「将来性は高い」との評価

榎氏も江藤を買うひとりだ。

「4月に高校日本代表候補強化合宿で、いいボールを投げていたのを見ています。

今日は右バッターに対してフォークを投げるなど、新しい一面も見せてくれました。バッティングもいいし、将来性は高いですよ」

一方、初めての甲子園で価値を高めた左腕もいる。吉川陽大(仙台育英・宮城)は初戦の鳥取城北戦で12奪三振をマークし、5安打完封。身長175cmと上背はないものの、最速147キロの快速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーションで勝負する。

父・正博さんは元バレーボール女子日本代表監督で、母・博子さん(旧姓・津雲)は「世界ナンバーワンリベロ」と称されたバレーボール日本代表選手だった。スカウト陣からは「両親の影響か、勝負どころで力を発揮できる」「スライダーのキレがいい」という声が上がった。

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吉川陽大(仙台育英/宮城) 初戦の鳥取城北戦で12奪三振をマークし、5安打完封。「勝負どころで力を発揮できる」とスカウトの評価は高い

吉川陽大(仙台育英/宮城) 初戦の鳥取城北戦で12奪三振をマークし、5安打完封。「勝負どころで力を発揮できる」とスカウトの評価は高い

復活を果たした左腕もいる。佐藤龍月(健大高崎)は昨春にはエース格として、センバツ優勝に導いた。しかし、その後は左肘痛を発症。高校球児としては異例のトミー・ジョン手術を受け、復帰が絶望視された。

しかし、地道なリハビリを経て、今夏の群馬大会でマウンドに戻ってきた。

甲子園では3番手として登板し、2回3分の1を投げて2失点。中学時代からU-15日本代表で活躍した実力は発揮できなかったが、「ボールが強くなっていた」と評価するスカウトもいた。

右投手は石垣以外の顔ぶれが寂しかったものの、存在感を見せたのは早瀬 朔(神村学園・鹿児島)だ。身長185cm、体重78kgの細身のシルエットは甲子園でよく映えた。

今夏の鹿児島大会ではストレートが走らず、打ち込まれるケースも目立ち、本人も「今のままではプロではとても通用しない」と話している。しかし、甲子園初戦の創成館(長崎)戦では7回1失点と立ち直った姿を見せた。0-1と惜敗した試合後には、プロ志望を表明している。

石山愛輝(中越・新潟)は昨秋時点で、北信越を代表する好素材として知られた。だが、今年の春先から突如「投げ方がわからない」と、原因不明の不振に苦しんだ。

投球フォームを一からつくり直し、ようやく光が見えたのは6月下旬。今夏の新潟大会は〝ぶっつけ本番〟ながら、自己最速を更新する148キロを計測。今夏の甲子園では2回2失点に終わったものの、驚異的な成長曲線を描いている。

本人は「どんなに低い順位でもプロに行きたい」と、育成ドラフト指名でもプロに進む意向を示した。

■高校生野手からプロ入りは!?

スカウトの間で困惑が広がっていたのが、奥村頼人(横浜・神奈川)を巡る評価だ。今春のセンバツはエースとして優勝に貢献した左腕も、今夏は4番・左翼と野手での起用がほとんどだった。

スカウトは通常、全出場校が登場し、一巡した時点で甲子園の視察を終える球団がほとんど。だが、横浜に関しては2回戦も視察に訪れる球団が多かった。しかし、その試合でも奥村が登板したのは、9回2死からの打者1人のみ。その後、準々決勝でリリーフ登板したものの、あるスカウトはこう漏らした。

「ほとんどピッチャーとして出場していないから、センバツでの評価を基準にせざるをえない。ただ、彼は勝負度胸というか、尋常ではないハートを持っている。投手としても野手としても、気持ちが入っていないときは良くないんだけど、集中したときのプレーはとてつもない」

ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手
奥村頼人(横浜/神奈川) 今夏は4番・左翼と野手での起用がほとんど。スカウトは「集中したときのプレーはとてつもない」と語るが、投手、野手どちらとして評価されるか

奥村頼人(横浜/神奈川) 今夏は4番・左翼と野手での起用がほとんど。スカウトは「集中したときのプレーはとてつもない」と語るが、投手、野手どちらとして評価されるか

投手としての評価になるのか、野手としての評価になるのか。スカウトの間でも意見が分かれそうな難題だ。

野手は全体的に小粒な印象は拭えなかった。

その中でも、捕手では松井蓮太朗(豊橋中央・愛知)が攻守に馬力のあるところをアピール。「きめ細かい野球をしっかりと叩き込まれている」と好印象を受けたスカウトもいた。

今岡拓夢(神村学園)は「育成(ドラフト指名)でもプロに行きたい」と、希望進路をプロ一本に絞る遊撃手。今夏で自身4回目の甲子園になったが、初戦の創成館戦では4打数0安打に終わった。それでも、最終打席で左翼へ大飛球を放ち、インパクトを残した。

清水詩太(京都国際)は高校通算25本塁打の強打者で、昨夏の全国制覇も経験している。今夏は木製バットを携えて出場し、スカウト陣に打撃力をアピールした。

独特の存在感を放ったのが、高田庵冬(仙台育英)だ。今夏の甲子園2回戦までの打順は8番。身長183cm、体重87kgの大型選手だが、パフォーマンスに波があるのが課題だった。

初戦の鳥取城北戦は中途半端に当てにいくようなスイングが目立ち、ある若手スカウトは「力みすぎ。もっと普通にプレーすればいいのに」と話した。

しかし、多くのスカウトが横浜・奥村目当てで残った、同日の2回戦・開星(島根)戦で、高田は高校通算31号を左翼席に放り込んだ。ちなみに、奥村と高田は滋賀・野洲ボーイズでのチームメイト。旧友の〝助け舟〟に乗る形になった。

ドラフトが待てない! 夏の甲子園でスカウト株を上げた注目選手
高田庵冬(仙台育英/宮城) 「力みすぎ」と評価するスカウトもいたが、2回戦では左翼席に本塁打を放ちアピールに成功

高田庵冬(仙台育英/宮城) 「力みすぎ」と評価するスカウトもいたが、2回戦では左翼席に本塁打を放ちアピールに成功

今夏の甲子園はプロ志望届を提出せず、大学・社会人で〝ワンクッション〟を挟む逸材も目立った。代表格の外野手・阿部葉太(横浜)に関しては、成熟した実力を評価するスカウトが多かった。それだけ、「大学でやることがあるのか?」と疑問を呈するスカウトも複数いた。

昨夏の甲子園優勝投手で惜しくも準々決勝で敗れた左腕・西村一毅(京都国際)も大学へ進学予定。高く評価するのは河原氏。

「ストレートのキレはいいし、バッターの顔色を見ながら投げられる。抜け球(チェンジアップ)もあるし、大学で揉まれた4年後が楽しみです」

そのほか、ずばぬけた飛距離を誇る大型スラッガーの田西 称(小松大谷・石川)も大学進学予定。フィールディングを評価される遊撃手の赤埴幸輝(天理・奈良)は社会人へ。いずれも「力をつけてからプロに挑戦したい」という思いを秘める。

■来年も目が離せない! 2年生の活躍光る!

最後に触れておきたいのは、今夏は2年生の逸材が目立ったことだ。榎氏は「2年生の逸材が、大舞台でも普段の力を発揮できるのか確認に来たところもありました」と明かす。

特にインパクトを残したのは、織田翔希(横浜)、菰田陽生(山梨学院)、末吉良丞(沖縄尚学)、高部 陸(聖隷クリストファー・静岡)の「2年生BIG4」である。

織田に関しては「OBの松坂大輔(元レッドソックスほか)を超える逸材」「スケール感があるのに、実戦向きでもある」と絶賛の嵐。2回戦の綾羽(滋賀)戦では、自己最速タイとなる152キロを計測した。

菰田は身長194cm、体重100kgと、「プロレス団体からも声がかかっている」(山梨学院・吉田洸二監督)というほどの巨躯の持ち主。今夏は初戦の聖光学院(福島)戦で6回までノーヒット投球を披露するなど、安定したゲームメークを見せた。

ただし、本人は「大谷翔平さん(ドジャース)みたいになりたい」と、強い二刀流志向。あるスカウトは「パワーはすごいけど、守るところがね」と口を濁した。

左腕の末吉は、今春のセンバツにも出場しているが、今夏の甲子園で大きく進化した姿を見せた。左投手だった河原氏が語る。

「右打者の外角にストレートをビシビシと決めて、素晴らしかった。下半身もしっかりしているし、楽しみです」

同じく左腕の高部は甲子園初出場ながら、1勝を挙げて鮮烈な印象を残した。強烈にホップするストレートは観衆の度肝を抜いた。本人は進学志向という情報もあり、今後は水面下でプロと大学のスカウト合戦が繰り広げられるかもしれない。

取材・文/菊地高弘 写真/アフロ 時事通信社

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