【肉そば】永遠に残したい文化。オールドスクール立ち食いそば店...の画像はこちら >>
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

* * *

朝から締め切り原稿に追われて大わらわの1日だったが、どうしてもその日までに、ニトリ赤羽店へ行く必要があった。

午前中に原稿を終わらせ、ニトリでの用事がすんだらのんびりと散歩をしながら、優雅に昼飲みでもできる店でも探すのが理想系。ところが家を出られたのは、午後2時すぎ。まだ昼食を食べられていないから、時間にも気持ちにも余裕がない。

とにかくまずは用事をすます。この時点で時刻は3時半。このあと早めの夕方から、地元である石神井公園で飲み会の約束があったので、もはやのんびり散歩をしている時間はない。酒場の聖地、日本の酒都、赤羽までやってきてとんぼ帰りをするなんて、酒飲みとしてこんなに悔しいことがあるだろうか。

が、嘆いていても状況は変わらないから駅へと向かう。歩くとけっこうな距離で、真夏の日差しが容赦なく僕の脳天を焦がし、ヒットポイントがぐんぐん減ってゆく。それでも駅へたどり着いたところで、ある飲食店が目に留まった。

【肉そば】永遠に残したい文化。オールドスクール立ち食いそば店で味わう、肉そばと缶チューハイの幸福:パリッコ『今週のハマりめし』第201回
「百万石」

「百万石」
それは赤羽駅東口目の前にある立ち食いそば店「百万石」。そういえば赤羽にそんな名の店があることは知っていたものの、長年通っていながら僕は、この店の存在をきちんと認識したことがなかったかもしれない。隣の「ゴルフ」というスナックには何度か行ったことがあるのに。

その理由はひとえに、僕が赤羽を訪れる理由がこれまで「酒を飲むこと」以外になかったからだろう。が、立ち食いそばは大好物だし、時間的にもいけるはず。むしろいい機会だ、寄っていこう。

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券売機メニュー

券売機メニュー
340円のかけそば/うどんから始まるメニューは、様式美すら感じる美しさだ。近年はこういう店の記事を書く際に「立ち食い価格だが椅子あり」のような追記を書くことも増えたが、ここは完全な立ち食い店のようで、その潔さもいい。

さらに嬉しいのがアルコールメニューがあること! 「発泡酒 缶チュウハイ」(220円)と「缶ビール」(270円)。思いがけず、立ち食いそばをつまみに飲んで帰れてしまうことになったというわけだ。

こういう場合における僕の不動のナンバーワンは春菊天そばなれど、どうも「肉(豚煮)そば」(550円)が気になるのは豚肉好きの性(さが)。今日はそれにしてみよう。

当然、缶チューハイのボタンも合わせてポチリ。

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これもまた赤羽飲み

これもまた赤羽飲み
ドリンク類はガラス製の冷蔵ケースから自分でとってくるタイプ。さすがは赤羽。よ~く冷えた氷結レモンをお冷や用のコップに注いでぐいっとやると、今日のここまでの苦労がいきなり報われてしまうのは酒飲みの便利なところだ。

【肉そば】永遠に残したい文化。オールドスクール立ち食いそば店で味わう、肉そばと缶チューハイの幸福:パリッコ『今週のハマりめし』第201回
「肉(豚煮)そば」

「肉(豚煮)そば」
そして当然、スピーディーに肉そばも到着。午後の西日に照らされて妙に神々しさをまとうその姿を見て、なんだか感動してしまった。

世の中には、美味い酒も美味い料理も、高級な酒も高級な料理も無限にある。それらが絶品であることは疑いようのない事実だ。けれども僕が究極に好きな料理、究極に好きな光景は、やっぱり今見ているこういうものなんだよなぁ、と。

【肉そば】永遠に残したい文化。オールドスクール立ち食いそば店で味わう、肉そばと缶チューハイの幸福:パリッコ『今週のハマりめし』第201回
これこそが究極

これこそが究極
さっそくつゆをすすると、ほんのりと甘めでふわりとだしが香る癒し系の味わい。ボリューム満点の煮豚は、牛丼や豚丼風の、これまた甘めの醤油味で、脂身の具合も最高だ。よく味の染みた大切りの玉ねぎも食べごたえがあり、これまた良かったのが、細切りのこんにゃくの存在感。
これが肉と玉ねぎにはないぷりぷりとした食感を加えていて、長年の歴史に裏打ちされたバランス感覚を感じざるをえない。

【肉そば】永遠に残したい文化。オールドスクール立ち食いそば店で味わう、肉そばと缶チューハイの幸福:パリッコ『今週のハマりめし』第201回
そして麺

そして麺
麺がまたいい! コシやのどごしなど眼中にもないと言わんばかりの、ぼそぼそ食感の太麺。これだよこれ。早い安い美味いの代表、日本の立ち食いそば文化の真骨頂だ。

夢中ですすり、ごくごくとつゆを飲み、それをつまみにチューハイを飲み干してごちそうさま。

ふぅ、短いながら、なんとも満たされた時間だったな。

取材・文・撮影/パリッコ

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