日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。カンヌが認めた新鋭監督が問いかける、強烈で鮮烈な長編デビュー作!* * *『九月と七月の姉妹』
評点:★3点(5点満点)

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© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

お姉さんの命じることは「絶対」

九月(セプテンバー)と七月(ジュライ)と名付けられた、インド系イギリス人で十代の姉妹が主人公。

内気で周囲から変わり者と思われているジュライは、勝ち気な姉のセプテンバーにいつも引っ張られている。

2人がよくやる遊びが「セプテンバー・セッズ(September says)」で、「セプテンバーがこう言います。何々をやって」と命じられたらジュライは常にそれに従わなくてはならない。

これは「サイモン・セッズ」という命令ゲームが元ネタで、映画の原題も『セプテンバー・セッズ』である。

セプテンバーの命令はときに意地悪である。またセプテンバーはジュライに「もしどちらかが死ぬことになったら、ジュライが私の代わりに死ぬこと」と繰り返し命じてもいるが、ジュライはそれを受け入れている。

ある日、いじめを理由に学校で暴力事件を起こした2人は退学となり、母に連れられて田舎の一軒家に引っ越すが、そこに待っていた新たな出会いが2人の関係に亀裂を走らせることになる。

映画の冒頭は映画『シャイニング』の(そしてダイアン・アーバスの)双子の格好をした2人が写真家の母親のモデルをしている場面だが、それが実は伏線になっていたりもするので油断できない。

STORY:いつも一心同体の姉妹。我の強い姉と内気な妹はいびつな主従関係にありながら、強い絆で結ばれている。しかし、ある事件をきっかけに、次第にふたりの関係は変化。外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく......

監督・脚本:アリアン・ラベド
出演:ミア・サリア、パスカル・カンほか

全国公開中

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