山口組分裂から10年。「抗争終結宣言」も"残兵"による捨て鉢...の画像はこちら >>

六代目山口組による一方的な勝利宣言に、神戸山口組の末端組員のなかには憤懣やる方ない思いを募らせる者もいるという
8月27日、山口組が分裂して丸10年が経過した。

全国最大の指定暴力団を二分する対立は、名古屋の弘道会出身者を重用する六代目司忍組長による体制に不満を蓄積させた、旧主流派の山健組をはじめとする関西系団体がこぞって離脱し、「神戸山口組」を立ち上げたことで始まった。

その後、「六代目」と「神戸」の対立抗争の中で銃撃事件や乱闘騒ぎなどが繰り返され、双方合わせて10人以上の幹部や構成員が死亡したとみられている。

「ただ、ここ数年は神中田浩司組長へと代替わりした山健組が、六代目に帰参したことをはじめ、神戸から有力団体が相次いで離脱しました。これにより、六代目との勢力差が決定的となり、組織的な衝突は鳴りをひそめていた。そんななか、今年4月には六代目が兵庫県警に抗争を終結させたことを宣言する『宣誓書』を提出しました」(大手紙社会部記者)

宣誓書の概要は、次のとおりだ。

【この度は全国の任侠団体の申し出により、山口組は処分者の井上、入江、池田、岡本、松下との抗争を終結することにしました。(中略)一般の市民にはご迷惑をおかけしました】

■抗争終結宣言の屈辱

ところが同記者は、この宣誓書が、神戸側の"残兵"を刺激しているとも指摘する。

「宣誓書は6代目側による一方的な勝利宣言に過ぎず、神戸側からすれば、『向こうには反撃の力は残っていないから、抗争は終わりました』と言われているようなもので、侮辱として捉えている組員も少なくありません。とはいえ現在の神戸に六代目とコトを構える力は残っておらず、組織的な抗争が再燃する蓋然性は低い。しかし、行き場を失った神戸の構成員による捨て鉢的な襲撃事件が起きる可能性は拭えません」(同記者)

山口組分裂から10年。「抗争終結宣言」も"残兵"による捨て鉢攻撃の可能性も!?
現役組員に暴力団離脱を進めるポスター。しかし暴排条例のもと、組を抜けても5年間は、市民生活が制限される

現役組員に暴力団離脱を進めるポスター。しかし暴排条例のもと、組を抜けても5年間は、市民生活が制限される
抗争終結を突きつけられた残兵の心境について、4年前に神戸山口組の3次団体を抜けた、60代の男性が明かす。

「宣誓書には抗争相手であるはずの神戸山口組や、構成団体名は一切出てけえへん。一方で、井上邦雄組長はじめ神戸の幹部を名指しすることで、組織対組織の抗争やなしに、元組員らによる謀反だったような印象を与えるものになっとる。神戸の組員からすれば、これ自体も屈辱的やけど、それに対して一言も反論せえへん、自分の親分筋にも腹がたっているはず。

実際、宣誓書への反論として、自身の組に『カチコミ』の必要性を直訴する血気盛んな組員もおったと聞いとる。そもそも分裂の原因は上層部の権力闘争で、末端組員にとっては大義はなかった。組に命を預けるのが組員やから、親分の権力闘争に巻き込まれるのは仕方ないが、あまりにも呆気ない幕切れに、やり場のない思いを抱えとる神戸の組員も少なくない」(元組員の60代男性)

■抗争終結でも出口のない末端組員

一方で、事実上の抗争終結を機に組抜けを考える構成員も少なくないというが、そこに待っているのは、明るい未来とは言い難い現実だ。

「神戸傘下の組は今後、消滅か、そうでなくてもジリ貧状態が続いていくことになるやろ。やったらいっそのこと組抜けしてカタギになろうという組員もおる。しかし、稼業から足を洗っても5年は暴排条例のせいでまともな職に就くことはできへんし、銀行口座を作ることも、賃貸住宅の契約もできん。残るも地獄、離れるも地獄や」(前出の男性)

そんななか、男性は六代目山口組に対しこう呼びかける。

「まだ先のある若い衆ならともかく、高齢組員のなかには『このままジリ貧を続けるより最期に花火を打ち上げて名を残したい』と考える者もおる。そんなことになれば、世間様に迷惑をかけることになる。六代目には、神戸側の末端組員を過度に追い詰めるようなことはしないでほしい」(前出の男性)

宣誓書が提出されて以降も、警察は六代目山口組と神戸山口組などの対立組織に対する特定抗争指定を延長し、警戒を解いていない。分裂抗争の残火は、いまだくすぶり続けている。

文/吉井透 写真/photo-ac.com、暴力追放運動推進センター

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