聖飢魔Ⅱ VS BABYMETAL! まさかの対バンライヴで...の画像はこちら >>

公演2日目「衝撃 -Impact-」のラスト「EL DORADO」での一幕。それまでの対決姿勢から一転、それぞれのアティテュードを認めあった2組は、万感の思いを乗せて絶叫し合う。
ここに聖飢魔IIとBABYMETALの禁断の融合が果たされた

ベテラン悪魔バンド「聖飢魔Ⅱ」と全米チャートTOP10入りしたメタルダンスユニット「BABYMETAL」がまさかの激突! 魔暦27(2025)年8月30日、31日にKアリーナ横浜(神奈川県)で開催された『聖飢魔II vs. BABYMETAL ~悪魔が来たりてベビメタる~』を徹底密着レポート!

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■10年越しに実現した、奇跡のアリーナ公演

ヘヴィメタルやハードロック(以下、HM/HR)はニッチな音楽ジャンルと思われがちだが、近年その状況が変わりつつある。音楽誌編集者S氏はこう語る。

「メタルダンスユニット『BABYMETAL』が、8月8日にリリースしたニューアルバム『METAL FORCE』は、日本を含めた世界各国の音楽チャート上位にランクインしました。

その中でも全米ビルボード総合アルバムチャートにおける初登場9位の記録は日本人グループ初の快挙です。彼女たちは海外での公演も多く、昨年は世界22カ国51公演を行ない、海外の動員数だけでも98万人以上と言われています」

もはやBABYMETALは世界に名だたる巨大エンターテイナーになっているといっても過言ではないわけだ。

しかし、そんな彼女たちの活躍を快く思っていない魔物たちがいた。魔暦前14年(1985年)に地球デビューをした活動40年のベテランHM/HRバンド「聖飢魔Ⅱ」である。

悪魔教布教のためにHM/HRを奏でる彼らは、これまでに日本のアルバムチャート1位の獲得、NHK紅白歌合戦への出演など輝かしい戦績を残してきた。

魔暦元年(1999年)のバンド解散後は、数年に一度、期間限定再集結という名の再結成活動を行なっていて、現在でも黒ミサ(ライヴ)での人気は非常に高く、チケットが取りづらいアーティストの代表格である。

「そんな聖飢魔ⅡにとってBABYMETALは目の上のたんこぶのような存在でしょうね。バンド解散後の2012年に突如として現れ、同じジャンルの音楽で世界を席巻しているのですから。

しかも、BABYMETALは『バラバラになった世界をHM/HRの力でひとつ-THE ONE-にする』というポジティブなミッション、コンセプトを持っています。

幾度もこの世に魔界を現出させてきた聖飢魔Ⅱにとって、このコンセプトは邪魔者以外の何者でもない。

両者がぶつかり合い、雌雄を決しようとするのは当然の帰結でしょう」(音楽誌編集S氏)

聖飢魔Ⅱのヴォーカリストであるデーモン閣下曰く、「実は10年前に最初の『対決』の話があったが諸般の事情で実現せず、5年前にもこの話は盛り上がったのだが、コロナ禍によって流れてしまった」とローチケWEB掲載のインタビューで語っている。

こうして日本のHM/HR界を代表する聖邪の決戦は、魔暦27年(2025年)8月30日と31日、『聖飢魔Ⅱ vs. BABYMETAL ~悪魔が来たりてベビメタる~』にて10年越しに実現することとなった。

聖飢魔Ⅱ VS BABYMETAL! まさかの対バンライヴで「信者」と「THE ONE」が熱狂した奇跡の瞬間とは!?
「DAY.1 遭遇 -Encounter-」と題された公演初日のハイライトシーン。BABYMETALが「イジメ、ダメ、ゼッタイ」をパフォーマンス注意に突如、デーモン閣下が光臨。まさかのコラボレーションにオーディエンスの怒号のような声援が飛び交った

「DAY.1 遭遇 -Encounter-」と題された公演初日のハイライトシーン。BABYMETALが「イジメ、ダメ、ゼッタイ」をパフォーマンス注意に突如、デーモン閣下が光臨。まさかのコラボレーションにオーディエンスの怒号のような声援が飛び交った

■「信者」と「THE ONE」が入り乱れる、カオスな空間

会場となったKアリーナ横浜には2日間で延べ4万人以上のファンが詰めかけ、会場は異様な熱気に包まれた。

閣下以下、構成員のコスプレをする「信者」(聖飢魔Ⅱのファンの総称)たち。それに負けじと「THE ONE」(BABYMETALのファンの総称)たちも衣装を手作りで再現している女性や、バックバンド「神バンド」の白塗りコスプレをしている男性も多数おり、現場はまさにカオスな様相を呈していた

こうしてライヴがはじまるわけだが、聖飢魔ⅡとBABYMETALは両者ともにとてつもないパワーを発しながらオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいく。

聖飢魔Ⅱは「蝋人形の館」といったおなじみのナンバーや、7月2日に発布(リリース)され、チャート6位を記録した最新大教典(アルバム)『Season II』からの楽曲「Kiss U Dead Or Alive」などをプレイ。バンド構成員たちは全員10万60歳以上だが、それを感じさせないほどタイトでグルーヴを感じる演奏だ。

そして、なんといってもデーモン閣下である。閣下は昨年がんと大動脈疾患いう大病を乗り越え、今年4月12日から開催された大黒ミサ(ライヴ)ホールツアーでは全国18会場19公演を見事完遂。その直後とは思えないほどのエナジーを放っていた。

「やはり閣下の歌は強烈です。

絶唱なのに一瞬たりとも音程がブレてませんからね。日本の宝ですよ」(会場にいた信者のFさん)

悪魔の反骨精神が垣間見えた場面もあった。信者のTさんは笑いながら語る。

「黒ミサでは定番なのですが、楽曲『アダムの林檎』のときに若干、下ネタ的なオーディエンスとのやり取りがあるんです。それを普通にBABYMETALのファンのみなさんの前でやってしまうとは。さすが閣下です!」

聖飢魔Ⅱ VS BABYMETAL! まさかの対バンライヴで「信者」と「THE ONE」が熱狂した奇跡の瞬間とは!?
客席を煽る聖飢魔Ⅱのデーモン閣下。人気曲「JACK THE RIPPER」のMCでは、「お前を殺す! お前も癌になる! お前は早期発見にしてやろう!」と自らの大病をネタにするほどの悪魔的余裕を見せた

客席を煽る聖飢魔Ⅱのデーモン閣下。人気曲「JACK THE RIPPER」のMCでは、「お前を殺す! お前も癌になる! お前は早期発見にしてやろう!」と自らの大病をネタにするほどの悪魔的余裕を見せた

■対決の行方は?

対するBABYMETALは今年で結成15周年。それを記念したツアーでヨーロッパと北米を巡り、8月に入ってからは日本の3都市での公演、大型フェス『SUMMER SONIC 2025』への出演、バンコク公演、そしてテレビ朝日ミュージックステーション』(8月29日)に出演と、非常に多忙な中でのステージだった。

しかし、ステージ上では疲労感を感じさせないパフォーマンスを披露。代表曲の「ギミチョコ!!」はもちろん、アメリカのオルタナティブ・ロックバンド「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」のメンバーが参加した「METALI !!(feat. Tom Morello)」など、最新アルバム『METAL FORCE』収録曲を波状攻撃のごとくオーディエンスにぶつけていく。THE ONE(ファン)のCさんは語る。

「ボーカルのSU-METALの声はやはりすごい。

透き通った歌声なのに音圧があるんです。とにかく抜けがいい。Scream and Dance のMOAMETALのキュートさやユーモア、MOMOMETALのグロウル(デスボイスの一種)も同様です。ちなみにバックバンド『神バンド』の重厚過ぎる演奏でKアリーナ横浜の壁が揺れていましたよ」(Cさん)

公演の両日とも、ラストの曲ではそれぞれの楽曲で本当の意味での「対決」が行なわれている。

初日、BABYMETALのラスト曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の途中にデーモン閣下が登場すると、SU-METALの絶唱の後ろで、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり......」と古典・平家物語の一節を暗唱しながら日本舞踊を披露した。HM/HRの最新型であるBABYMETALとの対決に古典文学を持ち出すとは、さすがは10万62歳の貫禄だ。

そして2日目のラスト、聖飢魔Ⅱの曲「EL DORADO」にはBABYMETALの3人が参戦。Scream and Dance のMOAMETALとMOMOMETALはギターを抱え、聖飢魔Ⅱの構成員たちとライヴパフォーマンスでのバトルを繰り広げた。

一方で、デーモン閣下とSU-METALは共鳴し合うかのようにハイトーンで叫び合う。その年齢差は10万35歳。互いに一歩も引かないその姿勢は、逆に最大限のリスペクトを送り合っているようにも感じた。

こうしてHM/HR界の頂上決戦は見事果たされた。

気になる対決の行方だが、実は決着はつかなかった。本公演はストーリー仕立てになっており、ライヴの合間に巨大スクリーンで映像やアニメーションが流れていたのだが、そこであることが判明した。

詳細は省くが、実は聖飢魔ⅡとBABYMETALはまったく同じルーツを持つ存在であることが明らかになったのだ。

ステージ上の閣下も「今宵は少なくとも、いがみ合う必要はないことがわかった」とコメント。最終的には聖飢魔Ⅱ、BABYMETALが互いのオーディエンスを祝福するかのように、両グループのフラッグをはためかせた。

ちなみに公演終了後、聖飢魔Ⅱ信者であり、BABYMETALのTHE ONEでもあるKさんはこんな話をしてくれた。

「今回の対決、大満足でした。でも、このままで終わるのはさびしい。聖飢魔Ⅱは以前、東日本大震災のチャリティで多くのアーティストが出演するイベントを企画したことがあるので、聖飢魔Ⅱを中心としたフェスも考えられると思います。そこでBABYMETALとの再戦を希望したいです!」

信者たち、THE ONEたちの願いは叶うのか。

聖飢魔Ⅱ VS BABYMETAL! まさかの対バンライヴで「信者」と「THE ONE」が熱狂した奇跡の瞬間とは!?
ライヴ直後、互いのパフォーマンスを称賛しあう聖飢魔ⅡとBABYMETAL。SU-METAL(向かって中央右)の表情がデーモン閣下(向かって中央左)とそっくりなのは気のせいか。悪魔教信者になっていないか心配だ

ライヴ直後、互いのパフォーマンスを称賛しあう聖飢魔ⅡとBABYMETAL。SU-METAL(向かって中央右)の表情がデーモン閣下(向かって中央左)とそっくりなのは気のせいか。
悪魔教信者になっていないか心配だ

■2025.8.30(土)「DAY.1 遭遇 -Encounter-」セットリスト 

【聖飢魔Ⅱ】 
SE. 登場~OPENING~ 
01:創世紀 
02:1999 Secret Object 
03:Jack The Ripper 
04:老害ロック 
-TALK- 
05:アダムの林檎~BABYMETAL Is Dead (HMID替え歌)~アダムの林檎 
06:Kiss U Dead Or Alive 
07:Next Is The Best! 
08:前口上~蝋人形の館 
09:Fire After Fire 

【BABYMETAL】 
01:BABYMETAL DEATH 
02:ヘドバンギャー!! 
03:PA PA YA!! (feat. F.HERO) 
04:BxMxC 
05:METALI!! (feat. Tom Morello) 
06:Sunset Kiss (feat. Polyphia) 
07:Song 3 (feat. Slaughter to Prevail) 
08:RATATATA 
09:ギミチョコ!! 
10:from me to u (feat. Poppy) 
11:イジメ、ダメ、ゼッタイ with 聖飢魔Ⅱ 

■2025.8.31(日)「DAY.2 衝撃 -Impact-」 セットリスト 

【BABYMETAL】 
01: BABYMETAL DEATH 
02: ヘドバンギャー!! 
03: PA PA YA !! (feat. F.HERO) 
04: METALI !! (feat. Tom Morello) 
05: Kon! Kon!  (feat. Bloodywood) 
06: Song 3 (feat. Slaughter to Prevail) 
07: RATATATA 
08: ギミチョコ!! 
09: from me to u (feat. Poppy) 
10: KARATE 
11: Road of Resistance 

【聖飢魔Ⅱ】 
01:創世紀 
02: 1999 Secret Object 
03: Jack The Ripper 
04: 老害ロック 
-TALK- 
05: アダムの林檎~ BABYMETAL Is Dead (HMID 替え歌)~アダムの林檎 
06: Kiss U Dead Or Alive 
07: Next Is The Best! 
08:前口上~蝋人形の館 
09: Fire After Fire 
10: EL DORADO with BABYMETAL 

●聖飢魔Ⅱ(せいきまつ) 
ロックバンドに姿借した悪魔集団。魔暦紀元前13年(1985年)に地球デビュー。小教典(シングルのようなもの)「蝋人形の館」が大ヒット。魔暦元年(1999年)に地球征服を果たし解散。その後は、視察という名目で期間限定の再集結を果たし黒ミサ(ライヴ)などの活動を行なっている。最新の大教典は7月2日発布(リリース)の『Season Ⅱ』。
公式WEB【https://www.seikima-ii.com】 
公式Instagram【@seikima_ii_official】 
公式X【@seikima_ii40th】 

●BABYMETAL(べびーめたる) 
SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの3名からなるメタルダンスユニット。2010年に結成。2013年のメジャーデビュー後、破竹の勢いで世界を席巻。3rdアルバム『METAL GALAXY』(2019年)は全米アルバムチャート13位、最新アルバム『METAL FORCE』(2025年)は同チャート9位を獲得し、日本人グループとしては初のTOP10入りを果した。レディ・ガガ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、メタリカ、ビリー・アイリッシュら世界的アクトも注目する存在。
公式WEB【http://www.babymetal.com】 
公式Instagram【@babymetal_official】  
公式X【@BABYMETAL_JAPAN】 

取材・文/尾谷幸憲

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