バッテリィズのエース(左)と寺家。忙しい日々も圧倒的ポジティブさでぶっとばす!
昨年の『M-1グランプリ』で準優勝に輝き、今年4月に東京進出。
彼らはどのように独自の漫才スタイルを築き夢をかなえてきたのか? エースの太陽のような明るさ、寺家(じけ)の冷静な判断力の源泉は? 草野球チームのバッテリーで培われた関係性と魅力の核心に迫る!
■今までいなかった「アホで速いツッコミ」
――昨年の『M-1グランプリ』で準優勝後、大活躍されています。一番人生が変わったなと思う瞬間は?
エース 最近で言えば、プロ野球の始球式をやらせてもらえたことですね。もちろん憧れの(明石家)さんま師匠の番組に出れたときのほうが喜びは大きいですけど、頭のどっかで「『M-1』の決勝に出たら会える」って気持ちもあったんですよね。
始球式は「やりたい」と言ってできるものじゃないと思うから、ホンマにありがたいなって。
寺家 僕は、CM撮影に慣れてる自分を俯瞰するとおもろなってきます(笑)。最初はフワフワして現場に向かってたんですけど、何本か出させていただくうちに「慣れてるやん、俺」と思って。
8本ぐらいCMに出てるって、だいぶ人生変わったなと思うんですよ。だから浮かれすぎんように、謙虚な気持ちで臨むよう心がけています。
エース CMとかテレビの仕事が増えて、逆に舞台が楽しくなってきたところもありますね。テレビはほかのタレントさんがしゃべってるときに邪魔したらあかんのでちょっと難しいんですけど、舞台は自分が出たいときに前に出て何も考えずにボケれるので。
寺家 収録現場にお客さんがいることも多いですけど、舞台はしっかりとお客さんの反応が感じられますからね。
――CMにテレビに舞台。
エース 別にやりたいからやってるだけで、イヤになったらやめますよ(笑)。イヤなことをやってもしゃあないと思っているので。
寺家 僕は「目標への道筋はひとつじゃない」ということを常にどっかで考える気がします。
結果が出てない頃に「エースが売れてないのはおまえのネタが悪い」と言われたときも、うすうす感じてたことを言語化された気がして「確かにそうだな」と思ったんですよね。「エースがネタを飛ばしたりするのはネタが合ってないからか」ってしっくりきたというか。
そこで反発する人もいると思うんですけど、芸人の草野球チームでエースが投手、僕が捕手のバッテリーを組んでるからか、その言葉がスッと入ってきたんです。投手が打たれるのは「捕手のせい」だけど、打者を抑えたら「投手がすごい」と言われるのは野球のあるあるなので。
エース 僕がボケからツッコミに変わったのって、先輩に「おまえのツッコミいいやんけ」って言われたのがきっかけなんですよ。けど、最初は「ツッコミやるんか......」って感じでした。やっぱボケのほうが好きだし、楽しいので。

エース
寺家 僕はエースから提案されて「取りあえずやろう」って感じでした。当時6年目ぐらいだったと思うんですけど、新しいことをしてたわけでも劇場でウケてたわけでもなくて、「このままではアカンな」っていうのがあったので。
実際に試してみたら、周りも「アホでツッコミが速いって今までおらんな」みたいに言ってくれたので、「これを形にできたら結果を出せるかも」とは思いましたね。
■一番面白いやつが芸人の一番じゃない!
――今年7月に開催された「見取り図寄席in青森」の宿泊先で、エースさんが見取り図の盛山晋太郎さんとの相撲に勝って座布団が舞ったと聞きました。TVer限定の『公開立ちトーーク in サマフェス』の中で盛山さんがネタにしていましたが、エースさんには「先輩の顔を立てよう」みたいな感覚はない?
寺家 それ絶対に現場のことわかってないですよ(笑)。
エース あれは倒したらアカンというより、ホンマに勝たなきゃいけない流れだっただけですね(笑)。
寺家 盛山さんが「夜中1時に夜場所が始まるから、俺の部屋に集まれ」と言い出して、僕とかニューヨークさん、さや香さんとかイベントの出演メンバーがゾロゾロと向かったんです。
それで、エースと盛山さんが組み合ったときに「どうやって面白く落とすか」を迷ってる空気になって、「これどうすんねん?」っていうのをその場にいる全員が楽しんでる中で、エースが倒しにいったっていう。
――そうだったんですね(笑)。さや香・新山さんのYouTubeチャンネルに投稿されていた、「見取り図寄席」の合間にキャッチボールしている動画もすごく楽しそうでした。
エース あれは、ロングコートダディの堂前(透)さんがキャッチボールしたがってたから、僕がグラブを2個持っていったんですよ。そしたら盛山さんとか新山さんとかがいっぱい集まってくれて。先輩たちがあれだけ僕のグラブで楽しんでくれてると思ったら、めっちゃうれしかったですね。
――寺家さんは先輩・後輩だと、どちらが接しやすいですか?
寺家 学生時代は野球部だったので先輩と遊んでるほうが多かった気もしますけど、今は後輩を連れていくことのほうが多いかもしれないです。
エース 僕は先輩といるときによくツッコんでるんですよ。取りこぼさないように全部全力で。たぶん無意識に先輩が気分よくボケれるようにやってるんでしょうね。
寺家 吉本のルール的にも先輩がお金を出してくれるわけですし、後輩が飲みの場を楽しくさせるべきではありますよね。僕もそういうときはなるべく頑張ってます。
――ちなみにエースさんが今乗っている自転車は、もともと有村架純さんがさんま師匠にプレゼントしたものを譲り受けたんですよね。
エース そうです! ラッキー! ただ、まだ有村さんに会えてもないし、会ったとしてもお礼を言うべきかどうかもわからないんですよね。有村さんからしたら、せっかくさんま師匠にあげた自転車なのに、僕が乗ってるってイヤじゃないかなと思って。
寺家 確かにマネジャーさんに頼んで買ってるならまだしも、自分でちゃんと選んでるとしたら微妙ではあるね。
僕も東京に来てから、もらいものが多くなりました。最近だと、「大魔神」で知られる元プロ野球選手の佐々木(主浩)さんにサインボールをいただいてホンマにうれしかったです。
――逆に、今回発売された日めくりカレンダーは、おふたりがファンの皆さんに活力を与えるもの。エースさんが大好きな『ONE PIECE』の主人公ルフィに近づきましたね。
エース 僕、ルフィ側に立ててますか?(笑)。そうなれてるならうれしいですけど。
寺家 集英社の人が言うんだから間違いない(笑)。

寺家
エース 確かに生みの親の尾田(栄一郎)先生は名言を残そうと思って書いてるだろうけど、ルフィは絶対にそんなこと思ってないですもんね。僕はルフィの「この海で一番自由な奴が海賊王だ!!!」って言葉が好きで印象に残ってます。
「海賊王が一番強い」とかって考えてないのがいいじゃないですか。僕も「一番面白いやつが芸人の一番」ってわけじゃないと思って生きてます。
――寺家さんは、そんなエースさんに出会ってポジティブになった?
寺家 いや、むしろ逆かもしれません。エースが真っすぐなタイプだからこそ、無意識に「ちゃんと考えな」と思ってるところがある気はします。
そもそも僕はずっとネガティブですし、ポジティブにポジティブを重ねても仕方ないのかなっていう。そこも、やっぱり投手と捕手って関係性に通じるところがあるかもしれないですね。
●バッテリィズ(Batterys)
ツッコミのエース(1994年生まれ、大阪府出身)、ボケの寺家(1990年生まれ、三重県出身)からなる。草野球チームでバッテリーを組んだのをきっかけに2017年にコンビ結成。『M-1グランプリ2024』準優勝
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取材・文/鈴木 旭 撮影/佐々木里菜