「Mリーグ」開幕直前! EX風林火山・内川幸太郎「MVP、狙...の画像はこちら >>

EX風林火山・内川幸太郎選手。劇的なチーム移籍から世界麻雀での優勝まで聞いた

麻雀プロリーグ「Mリーグ2025-26シーズン」が9月15日に開幕する。

新規チームが参戦し、試合数もマシマシになった今シーズン、目覚ましい活躍を見せるのは誰なのか?

今年の春から夏にかけて、最も激しく浮き沈みがあったプロ雀士は、間違いなく内川幸太郎選手だろう。

5月、所属していたMリーグ「KADOKAWAサクラナイツ」(以下、サクラナイツ)から契約満了を言い渡され、無念の退団。しかし、翌6月には「EX風林火山」からドラフト指名を受け、Mリーグ復帰が決まる。

そして、7月に行なわれた「世界麻雀TOKYO 2025」(以下、世界麻雀)では予選最下位での通過でありながら、本選では破竹の勢いで勝利を重ね、劇的な優勝を果たしたのだ。

今、麻雀界で最も〝主人公〟な男が、Mリーグ新シーズンへの思いを語る。

■プレッシャーからの解放

―――EX風林火山のドラフト指名、そして世界麻雀での優勝、おめでとうございます。

内川幸太郎(以下、内川) ありがとうございます。ドラフト指名から1週間で世界麻雀に優勝したので、ここ1ヵ月くらいずっと「おめでとう」と言われています(笑)。

――Mリーグのオフシーズン中、内川選手は最も話題の中心にいたMリーガーでした。まず、前所属チームの「サクラナイツ」から契約満了を告げられたときの心境をお聞かせください。

内川 4月6日にファンクラブ向けのイベントがあったのですが、その翌日の面談で言い渡されました。ただ、「もしかしたら契約満了かも」という覚悟は毎年持っていましたね(Mリーグでは各チームと選手は基本的に単年契約を結ぶ)。

企業・チームがそう判断をするのであれば受け入れざるをえませんし、永久に続く仕事でもありません。

6年間、お世話になったチームですから、意外とすんなり受け入れると同時に「次、どうしようかな」と思っていました。

――退団の発表はそれから1ヵ月半後、Mリーグのシーズン終了直後の5月19日で、話題となりました。

内川 チームの意向として、シーズン中の発表はできませんでした。ただ、退団が決まった後の4月18日にパブリックビューイングイベントがあって、そこでファンの方に「来季頑張ってください」って言われるわけですよ。

それに対して僕はなんと答えたらいいのかわからない。そんなこともあって、発表までの期間は本当に心苦しかったですね。

とはいえ、正直に言うとプレッシャーから解放された感覚もありました。Mリーグは注目される分、ストレスも大きい舞台でしたし、ここ数年は自分がチーム最年長で、リーダー的な役目を与えられ、苦しい時間も長かった。それが一時的になくなったことで、気持ちが少し楽になりました。

――その意味で、世界麻雀での内川選手はどこか楽しんで麻雀を打っているな、と感じました。

内川 僕は日本人選手として世界中から日本に来てくださった麻雀打ちをもてなす立場でもあったのでニコニコしていようと意識していましたし、それ以上にこのお祭りを誰よりも楽しもうって思っていました。

だから、決勝戦で同卓した韓国のジュンソク選手が役満の四暗刻をあがったときは、点数状況的に僕の優勝が近づいたのもありますが、もっと純粋に「おめでとう」という気持ちになれたんです。

■「自由」に戦いたくさん勝つ

――話を戻すと、すぐMリーグに復帰すると考えていましたか。

内川 考える以前に、どんどん状況が進んでいったという感じです。その頃、「EX風林火山」と「BEAST X」が指名選手を決めるオーディションをやることを発表していたので、それに参加するかを所属団体(日本プロ麻雀連盟)の偉い方に聞かれまして。

そこでひと晩考えて、「やるだけやろう」と。

そこからは、ドラフト会議で指名されるための活動に全力を注ごうと決意しました。ファンの方がすごく応援してくださったこともあって、それを評価してくれたEX風林火山さんに単独指名で獲ってもらうことができました。指名が決まってからはホッとしたのか、しばらく寝込みましたね。

――EX風林火山には二階堂亜樹選手兼監督(43歳)や勝又健志選手(44歳)という、内川選手よりもベテランの選手たちがいますね。

内川 いやもう本当に助かります。勝又さんにはサクラナイツ時代から麻雀の相談もしていましたし、亜樹監督とは昔から仲が良くて、よく遊んでいました。

Mリーグ発足前から仲が良かったふたりと同じチームになれるのは、精神的にも楽ですね。チームを選べる立場ではなかったですけど、個人的にはEX風林火山以外は考えられない、ほかからのオファーは断るくらいの気持ちでした(笑)。

「Mリーグ」開幕直前! EX風林火山・内川幸太郎「MVP、狙っちゃっていいですか?」
新しいチームで迎えるMリーガー7年目を「楽しみでしょうがない」と話す内川選手

新しいチームで迎えるMリーガー7年目を「楽しみでしょうがない」と話す内川選手

――あらためて、今シーズンの目標はいかがでしょうか。

内川 僕はサクラナイツ時代は毎年「個人成績ベスト10入り」などを掲げていたのですが、今回は亜樹監督に言いました。「MVP、狙っちゃっていいですか?」って。亜樹監督からは「自由に打っていい」と言われているので、自分ならではの押し引きや手組を見せていきたいと思っています。

――ファン目線では、内川選手がサクラナイツにリベンジする、というストーリーを期待している人も多いと思います。

内川 最近、取材などで「誰と対局したいですか?」「負けたくない相手は?」って聞かれるんですよ。そのたびに「(サクラナイツの現リーダー的存在である)堀慎吾って言ってほしいんだろうな」というのはわかるんです。

でも、僕はサクラナイツに指名してもらってMリーガーになって、優勝も経験させてもらいました。だから、そういう気持ちはまったくないんです。ただ、亜樹監督は「サクラナイツにはできるだけ内川をぶつける」って言っていましたし、そこは全力で頑張ります(笑)。

●内川幸太郎(うちかわ・こうたろう)
1981年生まれ、長野県出身。日本プロ麻雀連盟所属、「手順マエストロ」の異名を持つプロ雀士。

2019年に「KADOKAWAサクラナイツ」からドラフト1位指名を受けMリーガーに。2020-21シーズンは全選手中2位の個人スコアを記録。25年に同チームを契約満了で退団した後、「EX風林火山」開催のドラフト会議指名選手オーディションへ参加。決勝進出は逃したものの、ドラフト会議にて指名を受け、EX風林火山に加入

■9月15日開幕! Mリーグ2025-26
麻雀プロリーグ「Mリーグ」。8年目を迎える今シーズンは新チーム「EARTH JETS」を加えた計10チームで開催。試合数は昨シーズンの全216試合から全300試合に増加し、また、以前までは1日1卓を使用した2試合の実施だったが、今シーズンから一部期間で、1日2卓を使用し、それぞれ2試合ずつの計4試合が実施される。さらに広がりを見せるMリーグは、全試合を「ABEMA」が独占生中継する

取材・文/東川 亮 撮影/榊 智朗

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