第二次世界大戦後の世界は、英米ソの三巨頭で決まった。ウクライナ戦争後の21世紀の世界は、プーチンとトランプが決めることに...(写真:Roger-Viollet via AFP)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。
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――8月15日にアラスカでトランプとプーチンの米露首脳会談が行なわれ、それから世界はさらに激動、激変であります。まず、震源のトランプはインドをどうしたいんでしょうか? インドと中国が接近しているという報道もありますが。
佐藤 まず、インドとそれぞれの国の関係性ですが、インドとアメリカ、そしてロシアに関しては、潜在的な可能性はほぼ使い切っています。そして、インドと中国においてはさらに潜在的な発展可能性があります。
――報道によりますとモディ・インド首相は、米国に対して怒っているとのことです。
佐藤 そんなことありませんよ。アメリカに怒ったとしても、得することは何もありません。重要なのはトランプを「炎と怒り」の人にしないことです。こっちが怒ると、向こうも怒るような人ですから。
――ここは動物園のトラの飼育員の気持ちと仕事手順で接する、と。
佐藤 そうです。トランプが「炎と怒り」の人になったら、面倒くさいですからね。
――そりゃもう大変だと思います。それで、アメリカはインドをどのようにしたいのですか?
佐藤 インドに対するアメリカの戦略はないと思いますよ。
――なるほど。トランプはインドに「F35ステルス戦闘機を買わない?」とセールストークしていますが、売れるわけありません。インドにはロシア製の戦闘機がわんさか入っていますから。そこにF35が入れば、ロシアに機密情報が漏れます。
佐藤 インドはF35を買うけど、「5機だけでいいですか?」と聞いたらいいんですよ。それだけあれば十分です。そしてそれを解体してしまえばいいんです。
――リバースエンジニアリングですね。解体すれば全部わかってしまいます。一方、ロシアのプーチンはインドをどうしたいのですか? ロシア製の武器を買ってくれ、ということなんでしょうか?
佐藤 それもあるでしょう。
――あっ、以前におっしゃっていましたね。インドのいいところは自国の外、国益の枠から出ない、と。
佐藤 ロシアとインドの仲は、ソ連時代を通じて一貫して良好なんですよ。反イギリス帝国主義で、インドの独立運動をソ連は応援してきました。インドからロシアへの留学生も多いし、ロシア語をしゃべれる人も多いんですよ。
――トランプが原因になって、大戦争は起こりませんか?
佐藤 トランプはイラン相手に喧嘩して、あそこまで上手くいきましたからね。
――変な自信を持っちゃってますか?
佐藤 持っていますね。
――それはヤバいです。
佐藤 ヤバいことが起こるかもしれません。
――イランは強国、舐めたらアカン、は中東の常識ですよ。
佐藤 その常識をトランプは過去形にしました。いまのイランは弱いんです。我々はイランの軍事力を過大評価していました。
――その昔にISが急拡大した際に、「ISと地上戦を戦えるのは史上最強のイラン革命防衛隊しかいない」と佐藤さんはおっしゃっていました。そして、実際に交戦したところ革命防衛隊が勝ち、ISを皆殺しにした。
佐藤 シリアと国境線を接しているけど、イランへの亡命者はゼロでしたね。なぜなら、イランに亡命してもアサド政権が支配するシリア領に送り返されるからです。つまり、イランへの亡命は確実に死を意味するわけですよね。
――革命防衛隊の「皆殺し戦術」は不変であります。でも、イランが最強で怖い、その評価を取り戻すのには時間がかかるでしょうね。
佐藤 なんとかしないといけないと、イランも本気で思っているでしょう。
――次はガザ地区です。オーストラリアは、なぜ今頃になってパレスチナ国家を承認したのですか?
佐藤 これは逆効果ですよ。火に油を注ぐようなものです。
――ガザ地区はイスラエルの内戦であると。
佐藤 そうです。だから、干渉しないでほっとくのが一番いいんです。
――そんな最中、なんでオーストラリアはこの動きが出たのですか?
佐藤 イギリスと同じ発想だからです。オーストラリアは、イギリスの植民地でしたから。
――英連邦の残滓。
佐藤 おそらくそうですね。要するに、英連邦の中にはイスラム系の諸国があるんです。
それに対して、イスラエルと一線を画しているほうが、英連邦における影響力の維持にプラスだと思っているんですよ。
――英連邦内部の都合でありますね。
佐藤 パレスチナもそういう意味では、かつての英連邦の事実上の植民地でした。だから、そこの中でイギリスの影響力をどう極大化するか?という計算が働いています。
ただし、イギリスはそんなことを言う資格はありません。シオニストの活性家を縛り首にたくさんしているわけですからね。
さらに、イギリスは、テルアヴィヴのキング・ジェームス・ホテル(イギリス軍本部だった)に爆弾を仕掛けられるイスラエルのテロ作戦にビビって、独立を認めました。だから、反イスラエルで手を突っ込めるような資格はないんですよ。本当にいまのイギリスは弱っていますしね。
――では最後に、ウクライナです。プーチンはドネツク州を全てよこせと言っています。そこで終わりになりますか?
佐藤 それでもし、交渉がグチャグチャになって終わらなければ、力で獲得するだけです。
しかし、そうなればウクライナもアメリカも発言権がなくなります。
――英仏は地上軍をウクライナ国内に送る?
佐藤 すると、ウクライナの住民との間にトラブルは起きないと思います?
――そりゃ、起こりますよ。
佐藤 いま、ウクライナ国内には男性はほとんどおらず、女性は余っていますからね。
――ウクライナの女性はすさまじく美しいんです。でも、ウクライナ戦争以降、露軍兵士のエイズ感染率が2000%超えと激増しているそうですね......。
次回へ続く。次回の配信は2025年9月26日(金)予定です。
取材・文/小峯隆生