仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーゼッツ』のオンエアを記念して、今年も『週刊プレイボーイ』のスペシャルイシューが発売! 9月8日に発売された38・39号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、仮面ライダー女優たちが登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、仮面ライダーファン必見の充実した内容となった。
その特集より歴代ヒロイン4名のインタビューを、週プレNEWSにて再掲載。今回は『仮面ライダーウィザード』(2012~2013年)でコヨミを演じた奥仲麻琴さんが登場。コヨミは、人間に擬態したファントム(怪人)を見極める能力で、操真晴人=仮面ライダーウィザードをそばで支えるヒロイン。晴人から魔力の供給を受けて生命を維持している。コヨミを当時、どう演じていたのか? 今回の取材では、出演にまつわるエピソードや当時の心境などを語ってもらった。
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――3年前に10周年を迎えた『仮面ライダーウィザード』。東映特撮の公式YouTubeチャンネルで特別同窓会が配信されたほか、奥仲さん自身のYouTubeチャンネルでも、主人公・操真晴人役の白石隼也さん、大門凛子役の高山侑子さんと当時を振り返る動画を撮影されていましたね。
奥仲 先日情報解禁されたTTFC(東映特撮ファンクラブ)オリジナルの『仮面ライダー』スピンオフ作品『ガールズリミックス』にも参加させていただくなど、改めて『仮面ライダー』シリーズとのご縁を感じる機会が増えていますね。10年経っても愛される作品に出られたことを、改めて嬉しく思います。
――早速、オーディションの話からお聞きできればと思います。当時の奥仲さんは「ぱすぽ☆(13年に「PASSPO☆」に改名)」というグループでアイドル活動をされる中、お芝居に興味を持つようになったのだとか。
奥仲 ちょうど高校を卒業したタイミングだったんです。
――運命を感じてしまいますね。
奥仲 「絶対に私がこの役を演じるんだ」って。使命感に駆られたかのように、必死になっている自分がいました。アイドル活動をしていても常に端のほうにいて、自分をアピールするのが苦手。そんな内気な私が、人生で初めて「自分を見てほしい!」と思えた瞬間でした。われながらビックリするくらい燃えていましたね。
――見事にヒロイン・コヨミ役を射止めました。
奥仲 マネージャーさんの電話で合格を知りました。泣きましたね。
――決め手は何だったと思いますか?
奥仲 プロデューサーの宇都宮(孝明)さんからは「年齢が分からないところが良い」と言われました。コヨミって、特に物語の序盤では謎が多いキャラクターなんですよね。記憶がなく生い立ちが見えないばかりか、触ると冷たくて、生きている感じがしないお人形のような女の子。その不思議な雰囲気にピタリとハマっていたそうです。

――確かに、メインキャストの中でも奥仲さんは一段と幼く見えました。とはいえ落ち着きがあるから、大人びても見えるという......。
奥仲 一人だけ背が小さいので(笑)。オープニングで晴人とバイクに乗っているシーンがあるんですけど、オンエアを観た時、ちょこんと座っている姿が子供みたいで笑っちゃいました。でもメインキャストの年齢差はそれほどなく、侑ちゃん(高山侑子)とは一歳差なんですよね。
――幼く見えるなんて言ってすみません! それにしても、コヨミはキャラクターを掴むのが難しい役どころだったと思います。
奥仲 本当に。今思うと、お芝居初心者には難易度が高すぎる役でした(笑)。当時は取材で「奥仲さんが演じるコヨミはどんな役ですか?」と聞かれても、うまく答えられませんでした。ただひとつ分かったのは、コヨミはものすごく人見知りだってこと。心を許した相手=晴人には献身的だけど、基本的には警戒心が強い。その陰の部分がとても自分と似ていると思いました。私も人見知りだし、コヨミの言動ひとつひとつに共感ができたので、自然と演じられましたね。
――初めてのお芝居、初めての連続ドラマの現場。不安はなかったですか?
奥仲 めちゃくちゃ不安でしたよ。初めての本読みでたくさんアドバイスをいただき、クランクインまで毎日台本とにらめっこ。長台詞も多かったので、お風呂に浸かりながら一人でブツブツ唱えていました。現場ではカメラ位置を覚えるのが難しかったですね。
――白石さん然り、高山さん然り。『ウィザード』はお芝居経験のある方が多かったですよね。
奥仲 そうなんです。経験が浅いのは、奈良瞬平役の戸塚(純貴)くんと私くらい。白石くんと侑ちゃんには、お芝居のことを色々と教えていただきましたね。そんな中にいたから、余計に私だけ幼く見えていたのかもしれないです(笑)。
――1年間コヨミを演じる中で、お芝居を掴めたようなタイミングはありましたか?
奥仲 第20話辺りかな。少しずつ現場の空気に慣れていった気がします。

――新たなコヨミとは?
奥仲 例えば、私たちの拠点である骨董品店・面影堂(おもかげどう)でご飯を食べている時に、みんなから矢継ぎ早にご飯のおかわりを求められたコヨミがムッとした表情でお釜が空っぽになったことを訴えたり(第32話)、言い争いをしている凛子と瞬平が台から落としかけた壺を、両手を伸ばしてコミカルにキャッチしたり(第36話)。どちらもさりげないシーンではありますが、コヨミもこんな顔をするんだなって。コヨミを演じる引き出しが増えた感覚がありました。
――本編からはズレますが、DVDの特典映像に「コヨミの部屋」と題して、コヨミが色んなお悩みに答えるシリーズがありました。ちょっとやさぐれたコヨミが見られるという......。
奥仲 あぁ~、ありましたね! でも、あれはコヨミだと思っていないです。というのも、ああいう特典映像の収録は夜が多いんですよ。完全に夜のテンションで、はっちゃけまくり。
――失踪していた映画監督と女優を目指す女の子が再会し、再び夢を追いかけようとするエピソードですね(第14話・第15話)。
奥仲 本筋のエピソードも感動的で私もオンエアを観て泣いたのですが、その冒頭に晴人とコヨミがショッピングモールでデートするシーンがあるんです。帰り際、「せっかく来たんだから」と晴人からベレー帽をプレゼントされて照れ笑いするコヨミは、自分で演じていながらスゴく可愛いなって思いました。
――まさに意外なコヨミが詰まったワンシーンですね。キャップを被ったり、革ジャンを着たり。色んな服を試着するコヨミの姿も新鮮でしたし、そもそも晴人とコヨミが二人でお出かけすること自体が意外で。
奥仲 二人がお互いをどう思っているのか、その関係性も謎が多いですからね。私は演じていて、コヨミとしての恥ずかしさを感じていました。晴人に対して"女の子"になる唯一のシーンだなって。晴人からもらったベレー帽が登場するのはこのシーンだけ。個人的には、もっと被りたかった思いもありますね。
――コヨミと奥仲さんの気持ちが重なるようなエピソードだったんですね。お話を聞けば聞くほど、コヨミは奥仲さんにしか演じられなかったんじゃないかと思ってしまいます。
奥仲 自分でも驚いたのは第50話。物語の終盤、コヨミにとって重要な回です。約1年間コヨミを演じた思いもあり、泣くシーンではないところで涙が止まらなくなってしまったんです。役者としては未熟ですよね。本来ならば台本通りに気持ちを運ぶべきところ、気持ちが溢れて泣いてしまったんですから。中澤(祥次郎)監督が受け入れてくださったおかげで、そのまま泣きの演技が使われることになりました。その後、色々と作品に出させていただきましたが、台本にない涙を流したのはこのときだけです。

――スゴくいい話ですね。
奥仲 あとから聞いた話、その次のシーンで侑ちゃんと戸塚くんも台本にない涙を流したそうです。役を演じるって、こういうことなんだなって。身をもって学ばせてもらえた気がします。
――ところで人見知りの奥仲さんは、どのようにして現場に馴染まれたんですか?
奥仲 侑ちゃんの存在に助けられました。積極的に話しかけてくれたので、すぐ打ち解けることができましたね。あと『ウィザード』の現場は、男女チームですっぱり分かれていたんですよ。侑ちゃんと白石くんはお芝居を始めた時期が同じで、侑ちゃんが一方的にライバル視していたらしいんです。だから侑ちゃん、男の子たちにはスゴく厳しくて(笑)。オフの日に遊ぶのも女子メンバーだけ。その一枚フィルターのある関係性が、私にとっては居心地が良かったですね。
――とはいえ、現場で一緒になるのは圧倒的に白石さんが多かったのでは?
奥仲 白石くんとはプライベートな話をほとんどしなかったと思います。決して仲が悪いわけではないですよ。みんなをご飯に誘ってくれたり、キャストとスタッフさんを繋げてくれたり。うまく現場の空気を作ってくださっているなって、主演のスゴさを感じると共に尊敬もしていましたから。それに最後のイベントが終わった後、キャストひとりひとりと今後について話す場を作ってくれたんです。私もアイドルを続けるかどうか、白石くんに相談した記憶があります。本当、愛情深い人だなぁと思いますね。
――その約1年半後、奥仲さんはアイドルを卒業します。アイドル以外の"何か"を求めてお芝居の世界に飛び込み、かけがえのない経験と仲間を得たという感じですね。
奥仲 『ウィザード』を終えた後、アイドルは20歳までと心の中で決めていました。居場所があると甘えてしまう。それじゃいけないって思ったんですよね。いつもおどおどしていてマネージャーさんがいないと何もできなかった私が今、会社を立ち上げて一人でお仕事しているのも、『ウィザード』を通して芽生えた挑戦心のおかげ。忍耐力も身につきましたし、人間として大きく成長させてもらえる現場でした。
――最後に、奥仲さんが思う『ウィザード』の魅力を教えてください。
奥仲 『ウィザード』は震災後のシリーズで希望をテーマにした作品です。魔法を使って戦う仮面ライダーではありますが、全てを魔法で解決するのではなく、その人の過去に向き合い絶望を生み出さないよう働きかけるところが見どころだと思います。私自身、いまだに「コヨミ」と呼ばれることがあるのはスゴくうれしいです。まさに今、甥っ子たちが『仮面ライダー』にどハマり中で。カードゲームでコヨミが出るとイジられるので「それ私じゃないから!」と誤魔化すのですが(笑)、改めて影響力の大きさを実感します。
ヘア&メイク/杏奈
●奥仲麻琴(おくなかまこと)
1993年11月18日生まれ 埼玉県出身 ◯2009年に「ぱすぽ☆」のメンバーとしてアイドルデビュー。『仮面ライダーウィザード』で俳優デビューを果たす。現在はYouTubeを更新しながらマイペースに活動中
取材・文/とり 撮影/荻原大志 ©石森プロ・東映