ゲオは22年の第102回でも紹介した。当時の株価は1191円だったので、40%強上昇したことになる。
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象
ゲオの社名変更(ゲオHD)
中古CD・DVDレンタル店のゲオが、「セカンドリテイリング」に社名を変更する。何そのユニクロみたいな社名!? 実はここには、儲けの仕組みを大きく転換する意思がにじんでいた。
助手 以前この連載で取り上げたゲオHDの社名が、来年10月から「セカンドリテイリング」になるって聞きました。しかも最近は、レンタルビデオ店の「ゲオ」で自社ブランドのスウェットを売り始めたとか。もしかして、第二のユニクロを目指すっていう意思表示なんですかね? 当たれば業績がドカンと伸びそうですよね。
坂本 確かにユニクロの「ファーストリテイリング」っていう社名に似てるけど。ゲオHDによると、新社名の由来は中古品の「second hand」と小売業の「retailing」の合成だっていうから、第二のユニクロを目指す気はないでしょう。スウェットは単に「ゲオで買ったゲームをするときの部屋着にどうですか?」って感じの、"ついで買い"狙いの商品じゃないかな。新社名が示すとおり、ゲオHDの本当の基軸事業は中古品の買い取りと販売、つまりリユース事業です。
助手 そういえば2022年に検討したときも、同社は既存の「ゲオ」を中古品販売の「2nd STREET」に改装してるって話でした。
坂本 そう。当時もすでに売上総利益の約56%がリユース事業でレンタルは21%に過ぎなかったんですが、直近ではリユースが64%に伸びたんです。レンタルは今や6%程度に過ぎません。
助手 確かにリユースの売上構成比は増えてますけど、3年がたってますからね。大躍進ってほどですか?
坂本 当時とは事業の安定性が違うよ。22年頃はブランド品や特定のゲーム機など高額商材の需給が引き締まって収益を押し上げた面もありました。高額商材は仕入れが難しい一方で数は売れないし、需給ひとつで価格も大幅に下落するから安定性に欠けます。一方、今では中古スマホに注力した「ゲオモバイル」の展開などが奏功して、スマホや衣料品のように安定的に売れる商品が主役になりました。しかも店舗数が増えたことで買い取り経路も増え、いっそう事業基盤が強固になった。
助手 当時とは稼ぎ方が違うと。
坂本 そう。
助手 ニーズって国ごとに違う?
坂本 もちろん。例えばアメリカでは古着ファッションが文化として根づいているから衣料品の回転が速い。一方、台湾やマレーシアでは生活家電や日用品のリユース需要が強い。さらに香港やシンガポールは富裕層が多く、ブランド品リユースの需要が大きい。ゲオHDはこの違いを踏まえて、現地の倉庫や仕分け拠点を整備し、在庫を最適な国に動かせる体制をつくろうとしてるんです。
助手 けっこう違うものですね。
坂本 そう。だから仕入れの分散と販路のバランスが命。同社はすでに「日本で買い取った商品をアジアで売る」ルートを構築してるんだけど、今後は東南アジア全体を巻き込んでそれをやろうとしているわけ。
助手 なかなか壮大な話ですね。
坂本 ええ。株価に割高感もないし、リユース事業の世界進出成功にかけて、長期投資が面白いと思います。
今週の実験結果
リユース事業を東南アジアに広げようとしており、有望! 株価に割高感はないです
構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗