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2025年10月、TTFC(東映特撮ファンクラブ)にて、オリジナルシリーズ『ガールズリミックス』の第三弾『ガールズリミックス inハロウィンパーティー』が配信される。

5月に配信された第二弾に続き、『仮面ライダーガッチャード』のヒロイン・九堂りんね(演:松本麗世)が主人公を務める同作では、『仮面ライダーキバ』の野村静香(演:小池里奈)、『仮面ライダーギーツ』の桜井沙羅(演:志田音々)が初参戦するほか、『仮面ライダーウィザード』のコヨミ(演:奥仲麻琴)、『仮面ライダーガヴ』のグロッタ・ストマック(演:千歳まち)『仮面ライダーガッチャード』のミメイ(演:谷口布実)、が敵役として登場することが発表されており、配信前からファンを賑わせている。

『ガールズリミックス』とは、仮面ライダーシリーズに登場する歴代ヒロインが共闘するTTFCオリジナルのスピンオフシリーズ。2022年8月に第一弾『仮面ライダージャンヌ&仮面ライダーアギレラ withガールズリミックス』が、2025年5月に第二弾『仮面ライダーマジェード withガールズリミックス』が配信され、歴代ヒロインの復活&共演に歓喜するファンが続出した。

『ガールズリミックス』とは一体何なのか? シリーズの立ち上げに大きく関わった坂本浩一監督に話を聞いた。

*  *  *

■男子ライダーがいなくても戦える! ヒロインの強さを描いた『ガールズリミックス』

――『ガールズリミックス』シリーズは、2022年8月、『仮面ライダーリバイス』(2021年)のスピンオフとしてヒロイン・五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ(演:井本彩花)と夏木花/仮面ライダーアギレラ(演:椛島光)がメインの作品として、第一弾が配信されました。まずは制作の経緯から聞かせてください。

坂本 『リバイス』は仮面ライダー生誕50周年記念作でもあり、普段以上に多くのスピンオフ作品が作られました。その中で、ジャンヌをメインにして歴代の女性ライダーを集めるという提案は、望月(卓)プロデューサーからです。2018年にVシネクスト『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』でも自分はご一緒させて頂き、その時にスーパー戦隊の過去のヴィランズを集結させたのですが、ファンからの手応えを感じました。今度はそれを「仮面ライダー」シリーズの歴代ヒロインたちで実現させるということで制作が決定しました。

――最近は女性ライダーの登場が増えてきているとはいえ、物語のメインはあくまでも男の子。女の子だけが集結して戦う物語はとても新鮮でした。

坂本 男性のライダーを主役とした50年の歴史ある作品ですし、様々な関連商品の展開を含めてテレビシリーズや劇場版ではなかなか実現できなかった企画だと思います。近年海外では、『スター・ウォーズ』や『マッドマックス』をはじめ、主人公を戦う女性にスイッチしたメジャーな作品が続々と作られています。

日本も負けていられないですね!

その中で、近年特撮のニーズの変化も実感しています。例えば、劇場版の舞台挨拶やイベントに行くと、お客さんのほとんどが女性なことがあります。キャストのファンの方が多いのもあると思いますが、バッグにキャラクターのアイテムが付いていたり、『特撮』が好きで追いかけている方も多く見られます。ひと昔前は、ほとんどが男性のお客さんだった印象ですが。

それに今は、ヒロイン関連の商品もスゴく売れています。自分が子供の頃は「ヒロインが好き」だと恥ずかしくて言えない空気がありましたし、ヒロインだけ玩具やグッズが発売されていなかったことを考えると、大きな時代の変化を感じます。そうした流れに加えて、TTFCという特撮ファンのための媒体が出来たことが大きいですね。自分自身、もともと強い女性に憧れがありましたし、仮面ライダーシリーズのヒロインに対しても、各々が男の子と同等に強いところを描きたかったので、実現できて本当に良かったです。

――毎回、キャストも豪華です。「十何年ぶりにこのキャラを演じます」なんて方も多く、集合写真を見るだけでエモーショナルな気持ちになるというか。キャスティングは、どのようなポイントで行われているのでしょうか?

仮面ライダーシリーズでアクション監督を務める坂本浩一監督に聞いた『ガールズリミックス』の魅力とヒロインに求めるもの「大事なのは目力。心の強さを感じさせることです」
10月配信予定の第三弾出演キャストによる集合写真。『仮面ライダーキバ』放映当時は中学生だった小池里奈は、約17年ぶりに野村静香を演じることになる。(撮影/まくらあさみ)

10月配信予定の第三弾出演キャストによる集合写真。『仮面ライダーキバ』放映当時は中学生だった小池里奈は、約17年ぶりに野村静香を演じることになる。
(撮影/まくらあさみ)
坂本 第一弾ではさくらと花、第二弾、第三弾ではりんねを軸に、誰を絡ませたら面白そうか、誰がいれば物語として成立するかをまず考えます。ただ、物語の構成的に出てほしいキャラクターがいても、キャストのスケジュールが合わなければどうにもなりません。思うようにいかないこともあります。オファー時の感触を確かめながら、誰が出るかを探りながら脚本を進めるパズルのような作業は、ワクワクでもあり大変でもあります。

――見ていて感じたのは、『仮面ライダーW(ダブル)』(2009年)の鳴海亜樹子(演:山本ひかる)の存在感。第一弾から第三弾まで全てに出演されている唯一のキャラクターです。作中では、ガールズをまとめるリーダーを担っており、彼女のおかげで一体感が出ているようにも感じられました。

坂本 まさにその通りです。探偵キャラを活かして「私が調べたところ~」と手帳を開くだけで物語を動かせますし、あの明るさは誰と組み合わせても面白くなる。それに演じているひかるちゃんは、天才的なコメディエンヌです。ぶっ飛んだ演技も嫌味にならない。匙加減がスゴく上手なんです。

キャリアも長いですし、若い女優さんには刺激になると思います。彼女がいれば『ガールズリミックス』は永遠に続けられますね(笑)。

――第二弾では、『ガッチャード』で冥黒の三姉妹の次女・クロトーを演じた宮原華音さんが『仮面ライダーアマゾンズ』(2016年)の高井望として出演。「クロトー!?」「何言ってんだ、お前」という、りんねとのやり取りが面白かったです。

坂本 それがないと、見ているほうがツッコミたくなりますよね(笑)。『アマゾンズ』はもともとPrime Video限定配信でしたが、2023年に他のサービスでも配信が解禁されたことに伴い、TTFCオリジナル作品にも登場可能になったんです。なので、ファンの方なら気づくネタも積極的に取り入れるようにしています。

他に例をあげると、ガールズと敵対するキャラクターですね。第一弾は、『仮面ライダーストロンガー』(1975年)に登場する組織、秘密結社ブラックサタンの復活をもくろむミスタイタンと、ライダーシリーズ初の変身ヒロイン・電波人間タックルがもし洗脳手術を受けていたら......という設定のブラックタックル、第二弾は『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013年)に登場した湊耀子(演:佃井皆美)が変身する仮面ライダーマリカが敵役として登場しています。往年のファンの方はすぐにピンと来たと思います。過去の敵を、次世代のヒロインが倒すところも、見せ所の一つになっています。

――「私も出たい!」と思っている方も多いんじゃないでしょうか。

坂本 そうなんです! 第三弾に出ている小池里奈ちゃんは、別現場で会った時に「出たいです!」と言ってくれたり、奥仲真琴ちゃんも、同じく『仮面ライダーウィザード』(2012年)に出演していた高山侑子ちゃんが第一弾に出ていたのを見ていて、侑子ちゃんから出演を希望していると聞きました。

スーパー戦隊シリーズには現役の戦隊と前年の戦隊が共演するクロスオーバー「VSシリーズ」がありますが、仮面ライダーシリーズは作品の垣根を超えた共演があまりありません。そういう意味では、ガールズリミックスで世代を超えたキャスト同士の繋がりが生まれるのは嬉しいですね。

仮面ライダーシリーズでアクション監督を務める坂本浩一監督に聞いた『ガールズリミックス』の魅力とヒロインに求めるもの「大事なのは目力。心の強さを感じさせることです」

――ヒロイン主体のスピンオフというところで、本編のストーリー構成との違いはありますか?

坂本 見ている側に男子ライダーが出ない違和感を持たせない意識は大きいです。街で怪人が暴れているのに他のライダーが出てこないのは違和感がありますよね。完全なるパラレルワールドとして描くこともできますが、自分は、ヒロインたちがたどってきた仮面ライダー史実の上で『ガールズリミックス』を描きたかったんです。ガールズだけが解決できる特殊な事件が勃発し、テンポよく物語を進行させ、所々会話の中に他のライダーの存在を仄(ほの)めかせる。そうすることにより、違和感なく物語に没頭することが出来るんです。

――確かに、第一弾ではジャンヌとアギレラが戦闘しているところに『仮面ライダーゼロワン』(2019年)のイズが登場し、「(ジョージ・)狩崎さん(『リバイス』に登場する天才科学者)から預かりました」と強化アイテム・バイスタンプを託すシーンがありました。

坂本 そうですね。とにかく矛盾を感じないように、各作品と地続きの世界観を描くことを大事にしています。そのほうが、どの作品のファンの方が見てもすんなり入り込めますし、イメージも膨らみますよね。

ただ、そのぶん制作側の宿題は多いですよ。自分が携わっていない作品もありますし、忘れてしまっている設定もあります。毎回、自分を含めスタッフたちが各作品を見返すところから始まります。そんな時にもTTFCが大活躍するんです(笑)。いつでもどこでも見返すことができますからね。仮面ライダーシリーズへの愛がないと成立しない企画だと思います。

――現場は女性キャストの方ばかりだと思います。普段の仮面ライダーの現場とは、やはり雰囲気が違いますか? 

坂本 やっぱり華やかですね。スタッフもみんな、いつも以上に笑顔が多くなります(笑)。ただ、キャスト陣は特撮の現場を約1年間経験してきた方々なので、締める時は瞬時に切り変わります。本編ではあまりアクションに触れることがなかったキャストも、今作品で真剣に挑んでくれています。信頼するメンバーが集まっているという、充実感がありますね。

――最新作の第三弾は、ハロウィンパーティーがテーマ。みなさん、衣装が素敵です。

坂本 10月配信というスケジュールが先に決まっていたので、ハロウィンに絡めたいと、湊(陽祐)プロデューサーから提案がありました。キャストの衣装は、自らも特撮ファンで、今まで数々の作品でお世話になったスタイリストの村瀬昌広さんです。劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』(2012年)で初めてご一緒させて頂きました。それこそ、『ガールズリミックス』第一弾のエンディングで、みんなが雑誌の取材を受ける設定で、スチール撮影のシーンがあったのですが、その時のスタイリングも村瀬さんです。

――『ガールズリミックス』は衣装も遊び甲斐があるということですね。

坂本 そうですね。自分は昔から一年中Tシャツとジーンズの人なので、ファッションのことは全く分からないのですが(笑)、村瀬さんは毎回奇抜な衣装を用意してくれるので、楽しいですね。キャストもスゴくテンション上がってました。『ガールズリミックス』は、主題歌もヒロインのみなさんに歌ってもらっています。色々な角度から彼女らの魅力を楽しんでもらえたらと思います。

■キャスティングの参考にグラビア!?

仮面ライダーシリーズでアクション監督を務める坂本浩一監督に聞いた『ガールズリミックス』の魅力とヒロインに求めるもの「大事なのは目力。心の強さを感じさせることです」

――ここで改めて、坂本さんがヒロインに求める要素があればお聞きしたいです。

坂本 キャストによく言っているのは、目力です。身体的な強さもそれはそれで魅力的ですが、一番大事なのは心の強さ。いくら蹴り技が得意でも、キッと構える目つきや表情に力がないと、見ていて説得力がありません。亜樹子のようなコメディキャラも、説得力が出て初めてキャラクターを楽しめます。キャストには、身体的に苦手な部分は撮り方でカバーするので、自信を持って、カッコいいお芝居をお願いしますと伝えています。

――確かに。どのヒロインを想像しても目力のある方々ばかりですね。

坂本 その上でヒロインのアクションシーンを撮る時は、髪や衣装が揺れる感じをスローモーションにしたりと、強さの中に美しさを見せることを意識しています。もちろん迫力は大事ですが、物語上必要な場合を除いて、女性が表情を崩して雄叫びを上げるような戦闘シーンはあまり用いないテイストですね。

――ちなみに、坂本監督はキャスティングの参考にグラビアをご覧になることがあるのだとか。

坂本 キャスティングをする時に、提案が出来るように、雑誌など様々なメディアをチェックするようにしています。特に週プレさんは、ご一緒したことのあるキャストもよく出ているので、頻繁にチェックしています。「えっ、見てくれていないんですか!?」と本人から怒られることもあるので、見させていただいています(笑)。

――それは怖いですね(笑)。どんなところが参考になっているんでしょう?

坂本 グラビアを見ると、現在人気のあるタレントさんや勢いのあるタレントさんが分かります。どんな活動をしていて、どんな魅力があるのか。そうした情報も参考にしつつ、目力や表情も確認出来ます。グラビアも、お芝居の技量が必要な部分もあるので、参考になりますね。例えば、『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)で悪の女幹部・ヨドンナ様を演じた桃月なしこさんは、グラビアを見ても、グーッと引き込まれる目力がありますよね。

――なるほど。週プレとしても参考になります。お話をお聞きして、『ガールズリミックス』を皮切りに、今後も特撮ヒロインの活躍をたくさん見たいと思いました。

坂本 また機会があれば、更に幅を広げた『ガールズリミックス』を実現させたいですね。まだ参加されていない方にも出ていただきたいですし、ガールズリミックスならではの新ヒロインが登場するのも面白いと思います。今後の展開も楽しみにしていてください!

仮面ライダーシリーズでアクション監督を務める坂本浩一監督に聞いた『ガールズリミックス』の魅力とヒロインに求めるもの「大事なのは目力。心の強さを感じさせることです」

●坂本浩一(さかもと・こういち) 
1970年9月29日生まれ、東京都出身 
◯16歳で倉田アクションクラブに入門。高校卒業後、渡米。米国版スーパー戦隊『パワーレンジャー』の制作に携わる。2009年から日本での活動を開始、数々の特撮やアクション作品の監督を務める

取材・文/とり 撮影/稲垣謙一

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