ブラジルから金星の森保ジャパン、W杯メンバー"当落線上"の男...の画像はこちら >>

ブラジル撃破を経て、現時点での〝当確〟は20人! サプライズ招集はあるのか!?

ブラジル代表に歴史的勝利を遂げたわれらがサッカー日本代表。8ヵ月後に迫ったW杯本大会で躍動する選手はいったい誰なのか?

森保ジャパンがブラジル戦で見せた「戦術カタール」の解説とともに、スポーツライターのミムラユウスケ氏がW杯メンバーを予想する。

【日本のプレスは世界最高クラス】

「僕らは冗談で『戦術カタール』と呼んでいて......」

日本代表の背番号10を背負う堂安律がそう話したとおり、2022年のカタールW杯を彷彿とさせるような戦いで、日本はブラジルから逆転で金星を挙げた。

カタールW杯で、ドイツとスペインという優勝経験国を逆転でねじ伏せたのはご存じのとおりだが、「二度あることは三度ある」と証明するかのような「強烈なプレス」で、勝利をつかみとった。

14度目の対戦で初めてサッカー王国を倒しただけでも快挙なのに、日本は、前半に2点をリードされながらもブラジルを倒した史上初のチームになったのだ。

10月頭、ブラジル戦の見どころを解説した本誌記事で、W杯本大会まで1年を切った現時点で求められる合格ラインについて、筆者はこう書かせてもらった。

「10回戦ったとして、最低2回、あわよくば4回勝てると思わせるような戦いを(この一戦で)見せなければならない」

今回は十分な結果が得られたと言える。

では、主な勝因は何か。

最大の勝因は、日本の選手たちの守備での「プレス」のクオリティを生かせたから。カタールW杯を彷彿とさせる逆転劇を演じられたのもそのためだ。

具体的に記すと、前半は、強豪相手との試合ということで、待ち構えて守備をするプランだった。ところが、前半に2失点を喫してしまった。そのため後半は、積極的にプレスを仕掛け、相手のボールを奪う守備へとシフトチェンジ。これが見事にハマった。

では、なぜ、プレスが大きな意味を持つのか。それは現代サッカーにおいて、攻撃と守備が表裏一体となっているからだ。

例えば、以前からバスケットボールの世界ではその側面が強く、「オフェンスはディフェンスから」というのは日本スポーツマンガの金字塔である『SLAM DUNK』の名セリフだ。

現代サッカーでもこの考え方は重要だ。足を使う競技であるためミスの多かったサッカーでも、選手たちのテクニックが向上し、戦術も発展したため、手を使ってプレーするバスケのようなハイレベルな攻防が増えている。

攻撃と守備の境界はほとんどなくなり、良い守備は、良い攻撃を仕掛けるために重要な要素となっているのだ。

では、ブラジル相手の試合で日本のプレスが猛威を振るったのはなぜか。

日本の選手のプレス能力は世界最高クラスだからだ。

実は、カタールW杯で衝撃的なデータが発表されたのをご存じだろうか。

それは「90分平均の守備時のプレス」の選手別ランキングだ。このランキングのトップ5に日本の選手が3人も入った。1位に前田大然、2位に堂安、5位に鎌田大地。

なお、3位と4位は、史上初めてベスト4に入ったモロッコ代表の選手が占めた。

日本のプレスはすでに世界レベルにある。だから、森保一監督の就任以降、W杯で優勝したことのある3つの国から勝利をつかめたのだ。

そして、堂安が挙げた「戦術カタール」の根幹を成すのが、日本の最大の強みであるプレスを前面に押し出したサッカーなのだ。

日本がブラジルを倒したことはきちんと評価すべきだが、以下のふたつの要素を忘れてはいけない。 

ひとつ目が、相手がベストメンバーではなかったという事実だ。日本の1点目につながるミスを犯したCBの選手はヨーロッパではなく、ブラジル国内でプレーする選手だったし、GKも日本との試合が代表デビュー戦だった。

日本戦の4日前、彼らは韓国を相手に5-0の完勝を収めているが、あの試合はベストメンバーで戦った。日本との試合では、そのうち3選手しかスタメンに名を連ねていなかった。日本の中盤の心臓である鎌田は試合後に、こう話していた。

「ブラジルはふたりのCBにちゃんとした選手が出ていれば、また違った展開になっていたと思う。練習試合なのでね。

彼らには、もっとクオリティのある選手もいますし。そこらへんが出れば(試合内容は)全然変わってくるんじゃないですか?」

レアル・マドリード所属のエデル・ミリトンとアーセナル所属のガブリエウ・マガリャンイスという守備の要がベンチに座り、リバプール所属のGKアリソン・ベッカーにいたっては負傷によって代表メンバーからも外れていた。彼らがいたら、逆転劇を起こせたかはわからない。

もうひとつが、前半に日本が喫してしまった2失点について。堂安もこう話している。

「『戦術カタール』がはまったわけですが、2失点目はやはりよけいだった。『(ビハインドが)1点ならば大丈夫』という感覚はカタールW杯でのドイツ戦やスペイン戦から学んでいます。ただ、『(W杯のような堅い展開が続く大会で)先に2失点してしまうと、どうやろ?』とは正直思いました」

ブラジルがベストメンバーではなく、相手が日本対策に本腰を入れてこない親善試合だったことは頭の片隅に入れておくべきだ。

ただ、日本代表も三笘薫や板倉滉らをケガで欠いていたし、ブラジル相手のホームゲームという大きな注目を集めた試合で勝利を収めたことは意味があるはずだ。

【ケガも考慮すると残りは10人程度】


では、ここからは来年のW杯に、どんなメンバーで挑むべきなのかを考えてみたい。

まずは、表を見てほしい。現時点で想定される20人の〝当確〟のリストだ。

ブラジルから金星の森保ジャパン、W杯メンバー"当落線上"の男たち

今年3月にW杯出場を決めた時点で、メンバーの大幅な入れ替えの可能性は高くないと森保監督も話していた。

主な理由は、チームとしての継続性を大事にしたいという意向に加え、彼らの能力を上回るほどの驚異的な成長を見せる選手がそれほど多くはないと見られるから。

ただ、残念なことではあるが、ケガやコンディション不良のためにW杯メンバーから落選してしまう選手が一定数は出てくるはずだ。

実際、この20人のうち7人は今回の活動に参加できなかった。本大会でも5人前後は参加できないかもしれない。となると、当確リストから本大会のメンバーに入るのは15人程度。

来年のW杯の登録メンバー数は現時点で未発表だが、前回大会と同じであれば26人となり、残る枠は11人くらいだろうか。そこに滑り込む選手を占ってみたい。

GKは3人体制となるが、本番ギリギリまでレギュラー争いをさせるのか、現時点で有力なふたりを支えるベテランを入れるのか。チームの方針によって変わるので、ここでは明言を避けよう。

では、残る10人はどうか。

まず、有力となるのは小川航基(NECナイメヘン)、藤田譲瑠(じょえる)チマ(ザンクトパウリ)、鈴木淳之介(コペンハーゲン)の3人だ。

小川は現在の日本代表の中でクロスに合わせる能力が最も高い。どうしても得点が欲しいときの切り札になる。

パラグアイ戦とブラジル戦で連続ゴールを決め、オランダリーグでも得点王争いを独走している上田綺世(あやせ)も、代表合宿で小川にアドバイスを求めており、彼の存在がブラジル戦のヘディングゴールに生きたと明かしている。得点に貪欲でありながら、ライバルとも良い関係を築ける小川は当確に近い。

藤田は昨年のパリ五輪のキャプテンでチームの雰囲気を良くする力があり、今季から移籍したドイツのザンクトパウリでは中心選手として活躍。守備の激しさに加え、攻撃での非凡なセンスが光る。消耗の激しいボランチのポジションだからこそ、彼のような選手は必要だろう。

鈴木淳之介は今夏にデンマークのコペンハーゲンに移籍したばかりのDFだが、守備での高さと強さに加え、攻撃ではサッカーIQの高さが光る。久保建英はブラジル戦の彼について「試合中に自信をつけ、試合中に成長した」と絶賛。CL(チャンピオンズリーグ)のドルトムント戦でも早速、初アシストを記録。ほぼ当確だろう。

ブラジルから金星の森保ジャパン、W杯メンバー"当落線上"の男たち
代表3キャップ目ながら堂々たるプレーを披露し、ブラジル撃破に貢献した鈴木淳之介

代表3キャップ目ながら堂々たるプレーを披露し、ブラジル撃破に貢献した鈴木淳之介

残る7枠だが、滑り込めるかどうか微妙なラインにいるのが、今夏に移籍した選手たち。

高井幸大(こうた/トッテナム)、鈴木唯人(ゆいと/フライブルク)、町野修斗(ボルシアMG)、森下龍矢(ブラックバーン)あたりだ。いずれもステップアップの移籍であり、新天地でコンスタントに結果を残せばメンバーに入れるだろう。

サプライズ枠に入りそうな若手はどうか。望月ヘンリー海輝(ひろき/町田ゼルビア)や市原吏音(りおん/RB大宮)の国内組は来年1月からの移籍期間に海外挑戦を果たし、大きく成長すればチャンスはある。

あとは、小川と同じオランダのNECナイメヘン所属の塩貝健人も興味深い存在だ。慶応義塾大学を休学し、海外挑戦をしている彼は、日本人FWとしては珍しいタイプだ。強引なドリブルからシュートまで持っていける。

10月も代表候補に入っていたものの、直前で出番を失い、落選。ポテンシャルという意味でもW杯優勝の可能性を高めるために期待したい逸材だ。

今回のブラジル戦では、日本の「プレス」が世界の強豪相手に太刀打ちできる武器であることを再確認できた。だからこそ、本大会までの残り6、7試合の親善試合で、日本がボールを持っているときにどのように攻撃するのかを模索したい。

前回のW杯でもそこに課題があったために、コスタリカとクロアチアに敗れたことを忘れてはいけない。そして、戦い方を模索する中で、ひょっとしたら誰もが驚くような新戦力が輝くかもしれない。

取材・文/ミムラユウスケ 写真/時事通信社

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