北朝鮮は大量の各種弾道ミサイルを誇示。トランプ米大統領も「ある種の核保有国」と呼んでいる。
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
* * *
――前々回、この日本多党化の遠因に、アメリカの弱体化があるということでした。その状況が根源となって、世界的規模の混乱に繋がっている、と。一体どこが混乱しているのですか?
佐藤 一番危惧しているのは、韓国と日本の核武装です。
――口の軽い政治家と官僚がいなくならない限り、日本の核武装は無理だとこの連載でも指摘しています。
佐藤 その通りです。しかし、韓国は可能ですよ。秘密は守れるし、実際、朴政権の時に、核開発を途中までやっていました。
――そりゃすごい。
佐藤 それから、韓国の核武装に関しては、国際社会も一定の理解を示す可能性があります。
――それはなぜですか?
佐藤 北朝鮮が核兵器を持っているからですよ。それで、アメリカの核の傘に頼れないとなれば、韓国の核武装は現実的な選択肢になるわけです。
――自前の核を持ち、その理由付けを国際社会が容認してくれる。
佐藤 そうです。理由付けができるんです。北が核兵器を持っている以上、核で恫喝をしてきたら、我々日本と韓国はどうするんですか? 丸裸なんですよ、と。
――国際社会は「しょうがないですね、韓国は核武装すべきです」と容認しますね。
佐藤 ただ、「うちの核は中国、ロシアには向いていませんよ。日本も同じです。狙うは北だけです」と言いながらです。もっとも情勢が変化すれば日本に向けてくるかもしれません。
――しかし、日本も「北の核ミサイルは確実に日本を狙っています。韓国がOKなのであれば日本も核武装してもいいですか?」と言えば、国際社会は容認してくれませんか?
佐藤 無理ですね。これは簡単な話で「アメリカの核の傘を信用しないのか?」とアメリカに恫喝されるからです。
――「アメリカは信用できません」なんて日本は言えませんよね。
佐藤 日本は第二次世界大戦で、全世界を敵に回して戦った実績があります。アメリカとの関係で言えば、パールハーバーを奇襲した実績があるんですよ。また、潜水艦に搭載した水上機でアメリカ西海岸を爆撃したこともあります。いままで国家として、軍を使ってアメリカ本土を攻撃した国はありませんからね。
――9.11は、テロですからね。
佐藤 そうです、国軍としてはアメリカ領を攻撃した唯一の国が日本なので、アメリカ人は簡単には核保有を許してくれません。だから、日本の場合、核武装の最大の障壁はアメリカなんですよ。そして、戦後の日本の成り立ちを考えると、アメリカと事を構えられない文脈があちらこちらに存在しています。
日本が核武装することはもはや不可能であるなら、日本は考え方を変えればいいんです。
――どう変えるのですか?
佐藤 脅威は能力と意思で作られます。だから、北朝鮮の意思を極小化していくんです。
――北朝鮮の意思とは日本を核攻撃すること、つまり核攻撃させないようにすると。どうやるんですか?
佐藤 北朝鮮と国交正常化して、経済協力をしていくんです。その方向で北朝鮮の脅威を削減するしか、日本に道はないと私は考えています。
北朝鮮は案外、約束を守る国なんですよ。核実験や大陸間弾道ミサイルの発射など、トランプとの約束を完全に守っているんです。さらに北ならば、国民世論は心配しなくていいし、選挙の心配もありません。
――つまり、金正恩、金与正、このふたりに100%信頼されれば、日本は安寧になると。さらに韓国のように選挙ごとに反日/親日とコロコロ変わる心配もない。
佐藤 はい。北とは外交においては、すごく取引しやすいんですよ。しかし、そうなれば価値観外交をやめなければなりません。相手の国内でどんなことをやっているかは、知ったこっちゃない、と。
つまり、価値観外交をやめると北朝鮮だけでなく、ミャンマーの軍事政権、さらには中国、ロシアとも付き合いやすくなるわけです。
――いま、北朝鮮と話をつけられる政治家はいますか?
佐藤 必要となれば誰であろうとやらなければなりません。日本が生き残るためには、軍事力に頼るだけではダメなんですよ。
――なるほど。では、極東以外の国々に関してはどうご覧になっていますか?
佐藤 ドイツに関して言えば、グローバリゼーションとの訣別を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」のような頼もしい勢力が台頭しています。AfDが連邦議会で第二党になるというような「ドイツらしさ」が出てきています。イギリスも、頼もしい人々が頭角を現していますね。
――リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首でありますか?
佐藤 そうです。そして、イタリアも(ジョルジャ・)メローニ首相の下で復活しています。日本はイタリアのようになっていけばいいと思うんですよね。
――日本初の女性首相、高市さんになりましたからね。
佐藤 ハマスはイスラエル人の人質を全員返したので、あとはイスラエルがハマスを完全せん滅するだけです。
――しかし、ハマスはなぜ人質を全員返したのですか?
佐藤 そうしないと今すぐに、皆殺しにされると思ったからです。
――ハマスにはイスラム戦士の「自爆の精神」はないのですか?
佐藤 ハマス幹部は殉教などは真面目に考えていません。もう、この局面では命だけは助けてもらおうと、命乞いの段階に入っています。
――9.11で殉教したイスラム戦士の顔に泥を塗るような......。
佐藤 しょせん、そういう連中なんです。
――なんと......。
佐藤 これは、この戦争においてシオニズム(ユダヤ人がパレスチナに帰還しようという思想と運動)が勝利したということです。ハマスはナチスと一緒で、ユダヤ人を皆殺しにしようとしていました。いまでもアメリカに入国する時に、「ナチス運動に関与したことがあるか?」という問いかけに「イエス」を付けたら、入国規制がありますよね。イスラエル人からすれば、ハマスはナチスと同じです。
――はい。
佐藤 今回はガザ戦争で、ガチのユダヤ教徒が勝ちました。
――イスラエルのネタニヤフ首相はどうなりますか?
佐藤 人質が帰ってきたら、もう必要ありません。客観的には任務終了ということです。ネタニヤフが生き残るためにも、これからハマスの完全せん滅が必要なんです。
――ガザ戦争を続けることを新しい任務として、生き延びようとしている。
佐藤 そういうことです。しかしどちらにせよ、ネタニヤフはこれで終わりですね。この後はどうやって悪あがきをするかです。
――ネタニヤフをどうやって排除するのですか?
佐藤 それは選挙ですね。だから、ネタニヤフは選挙をできるだけ避けたいと考えているはずです。
――本当に戦争の選挙戦ですね。
佐藤 いま『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』という映画が公開されています。およそ1000時間に及ぶ取り調べビデオから作ったと言われている作品ですが、ネタニヤフが映画の中でこう言っています。
『「友は近くに置け、敵はもっと近くに置け」と、ゴッドファーザーPARTⅡでドンのマイケル・コルレオーネが言っているだろ』
――こ、これは佐藤さんがウクライナ戦争を映画『仁義なき戦い』と比べて論じていたのと同じような比喩ですね。
佐藤 ネタニヤフ、プーチン、習近平、金正恩のような政治家が幅をきかす。時代はこうなっているんですよ。それに比べると、日本は緩くていいですね。ビビ(ネタニヤフの愛称)みたいな政治家が出てきたら恐ろしいですよ。
――確かに、日本には高市首相とか、小泉防衛大臣とか。
佐藤 それから玉木(雄一郎)さんにしてもかわいいものですよ。日本の政治はイスラエルやアメリカに比べるといい政治だと思いませんか?
――はい。日本は幸せな国なのかもしれません。
次回へ続く。次回の配信は11月21日(金)を予定しています。
取材・文/小峯隆生
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