ジョン・レノン、スヌーピーの世界バージョン。平和すぎる
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。
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前回から、ビートルズの曲につけられた邦題を掘り下げてます。
ちなみに前回紹介したのは、昭和の時代感たっぷりの『涙の乗車券』(原題『Ticket to Ride』1965年。イギリス発表年。以下同)や、謎に雑な『こいつ』(原題『This Boy』63年)。あとは、原題は『Youʼre Going To Lose That Girl』(65年)=「君はその娘を失うぞ」という警告なのに、邦題になると『恋のアドバイス』と、なぜか優しくフォローしてあげたりするものも。
ほかにもまだまだ興味深い邦題があります。それでは、ビートルズ日本語文化圏トークの続きを。
まずは、アメリカのロカビリーミュージシャン、カール・パーキンスが56年に発売し、ビートルズが64年にカバーした『Everybodyʼs Trying to Be My Baby』。「みんな俺のものになろうとする」という、モテ自慢ソングっぽい原題なのに、なぜか邦題は『みんないい娘こ』。まるで教育番組か、道徳の時間みたいである。
続いては『Think for Yourself』(65年)。直訳すれば「自分の頭で考えろ」だが、邦題はなぜか『嘘つき女』。説教くさいタイトルが、一転してワイドショーの修羅場へと変貌します。「哲学」から「離婚届」にまでジャンプしている。もしかしてこの邦題をつけた人の私情? 「『自分で考えろ』なんて甘い! 世の中、嘘つきばっかり!」という翻訳者の情念が聞こえてきます。ビートルズが恋愛哲学を語る間に、人生の泥を見ていた。なんかいい話に思えてきました。
お気に入りは『Youʼve Got to Hide Your Love Away』(65年)の邦題『悲しみはぶっとばせ』。原題は「あなたの愛は隠さなければならない」という意味ですが、「ぶっとばせ」という〝昭和の元気語〟が、感情を物理で粉砕してくる! 泣いたり、悩んだり、立ち止まったりせず、「ぶっとばせ!」。昭和は心の整理を拳でつけていたということがうかがえる〝迷〟邦題ですね。
ちなみに、ビートルズのオリジナル曲は約200ありますが、日本独自の題(原題をカタカナにしただけ、ではない邦題)は約20曲あるようです。全体の1割以上の曲に、こうした翻訳者たちの魂が宿っているとも言えます。
今は「原題のままでいいじゃん」と言われがちな時代だが、昭和の邦題は翻訳ではなく〝解釈〟だった。英語を訳すというより、「日本人にどう響かせるか」を考え抜いた文化の翻訳。だからこそ、意味のズレすら味になるんですよね。
次回は、「原題のまま日本で発表されたけど、これはオリジナルの邦題が欲しかった!」なビートルズの曲について!
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。まさかの同テーマ3週またぎに、誰よりも驚いている。
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