日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。 記憶を失う病に侵された殺し屋が人生最後の完全犯罪に挑む姿を描くネオ・ノワール!* * *
『殺し屋のプロット』評点:★4点(5点満点)
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人間がすり減っていくのを観るのは辛い

物語の前提は辛い。

認知症のような症状が自分に起こっていることに気づいた主人公が専門医に診てもらったところ、きわめて進行の早いクロイツフェルト・ヤコブ病に侵されていることを知る。

認知が混乱し、周囲の現実が徐々に認識できなくなり、「本来の自分」でいられる時間が、やがては「混濁した意識」と逆転してしまうというのだ。

残された時間は数週間。哲学書を好むインテリで、博士号を二つも持っている、そんな人間が文字通り「すり減っていく」過程は観ていて本当に辛いものがある。

主人公の生業は実は裏社会の殺し屋なのだが、混濁した意識でまともな仕事ができるはずもなく、仕方なく身辺整理を始めたところに、疎遠になっていた息子が訪ねてくる。

まだ十代の娘を手籠めにしたクズ男を殺害してしまったというのだ。発作的にやってしまったので現場はメチャクチャである。さあどうするか。

認知能力がどんどん衰えるなか、息子の犯罪を隠蔽すべく、主人公は最後の大仕事に取りかかる。

あっと驚く隠蔽計画の立案と実行にはケイパーものを思わせる娯楽性があるが、そこに「人間がすり減ってしまうこと」のやりきれなさも加わって深い余韻が残る作品となった。

STORY:博士号を有するすご腕の殺し屋ノックス。ある日突然、急速に記憶を失う病が発覚。

そんな彼の前に、長年絶縁していた息子が現れ、殺人の罪を隠してほしいと訴える。刻々と記憶が消える中、息子のために人生最後の完全犯罪に挑む

監督・製作:マイケル・キートン
出演:マイケル・キートン、アル・パチーノほか
上映時間:114分

全国公開中

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