検索上位サイトのクリック率が半減し、コンサル、ライターも風前のともしびに! 800億円以上の市場が吹っ飛ぶ!?
いよいよAI(人工知能)が社会の隅々まで実装され、"普通の人"の仕事や暮らしにまで浸透し始めた2025年。それは世の中をますます便利にする一方、速すぎる変化が戸惑いやあつれきを生んでもいる。
最近、検索すると「AIによる概要」が一番上に表示されることが増えてきた。たまに間違った内容が書かれてて困っちゃうわけだけど、本当に困っているのは、サイトを上位に表示させる「SEO」にまつわる業界の方々。「AIが仕事を奪う」論の最前線に立つ、業界内のリアルな声を取材した。
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【クライアントからの相談内容が変化】「ユーザーは検索するのではなくAIに聞くようになる。そうなれば当然、SEOの需要なんてなくなるでしょう」
そう焦りをにじませるのはSEOコンサルタントのA氏だ。
SEOとは「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」の略で、グーグルなどの検索エンジンでウェブサイトを上位に表示させるための工夫を指す。
当然、表示順位が高いほどクリックされやすく、サイトのアクセス数は増加する。ネットビジネスにおいてウェブ記事は顧客と接点を持つ重要な起点なので、SEOは生命線とも言える。それだけにSEO対策の競争は熾烈で、A氏のような専門コンサルタントを使い、自社のサイトを少しでも上位表示させようとする企業も多いわけだ。
SEO業界の市場規模は2024年に800億円以上に成長したというデータもあるが、それだけの規模の市場が消えるとは、ただごとではない。
グーグルが24年8月にリリースした「AIオーバービュー」。グーグルの生成AI「ジェミニ」が、複数のウェブサイトから情報を抜き出し、要約を生成して表示する
「SEO業界の雲行きが一気に怪しくなったのは、グーグルが昨年8月に実装した『AIオーバービュー』がきっかけです。
ある調査によると「AIオーバービュー」が表示された検索画面では、非表示の場合に比べてクリック率が47%も減少するという。A氏が続ける。
「上位表示されても、そもそもサイトを見てもらえない。そうなると『集客のため』という業界の理屈が根本から揺らいでしまうんです」
検索エンジンはウェブサイトを自動で巡回して評価し、上位のサイトから順に検索結果に表示する。その評価を高める工夫がSEOだ
目ざといクライアントは、すでに従来型のSEOの限界を感じ取っている。最近は相談内容が一変したという。
「『AIオーバービューで引用されるにはどうすればいいか?』という相談が急増しています。AIの回答内で社名を出してもらったり、ユーザーが出典元を確認する流れの中で自社サイトに流入してもらおうという狙いです。とはいえ、出典元までたどるユーザーがどれくらいいるかと考えると、集客効果は不透明ですね」
業界の未来について、A氏は危機感を募らせている。
「今はまだ感度の高いクライアントだけが変調に気づいている状況で、SEOの需要が足元で急減しているわけではありません。ただ、将来的には検索順位を上げるためのSEOは需要がなくなるでしょう。
上位表示を狙う工夫が盛り込まれた記事を執筆するSEOライターは、かつては業界に欠かせない存在だった。ところが近況について、フリーランスのSEOライターであるB氏はため息交じりに語る。
「私が副業でSEOライターを始めた2018年当時は記事単価が高く、案件数も豊富でした。4年前にはライターの仕事を本業に切り替えて独立。収入も順調に増えて喜んでいたんです。でも、去年あたりから依頼が急に減ってしまって......」
これまでB氏が書いてきたのは、就職活動や転職のノウハウをまとめた記事。人材サービス会社が集客用に運営する「SEOメディア」(検索上位に表示されることに特化したメディア。
いわゆるオウンドメディアのほか、中立を装って自社サービスに誘導するものもある)を中心に月20~30本の執筆をこなし、月収は40万円に届くこともあった。しかし今では全盛期の約半分の収入でしのいでいる。
「SEOメディア内の記事制作を発注してくれるクライアントの制作会社から『記事はAIで対応することにしたので今後は依頼できない』とにおわされたんです。
慌ててネットでほかの案件を探したんですが、募集自体が以前に比べて激減していた上に、単価も以前よりだいぶ下がっていて。
同業者のコミュニティでも悲鳴が上がっているという。
「周囲のライター仲間も似たような状況らしく、最近は『いい案件ない?』が挨拶代わり。インタビューができたり専門的な内容を扱えるライターは影響がないと聞きますが、私はSEO記事専門です。人に直接会って取材するなんて経験はないし、ビジネスなどの専門的な話題にも自信がない。これからどうすればいいのか......」
かつては「誰でもパソコン一台で食える」と一世を風靡したSEOライター。だが、AIへの置き換えが始まったことで、今や風前のともしびなのかもしれない。
【制作会社のディレクターは転職を検討】B氏のようなライターに発注しているのは多くの場合、SEO記事の制作会社だ。彼らは集客を目的としたSEOメディアのために記事を量産している。ところがその制作会社にも、AIの影響が及んでいるという。SEO記事制作会社でディレクターを務めるC氏が打ち明ける。
「ウチの仕事を簡単に説明すれば、すでに上位表示されている別記事の構成をパクってSEOライターに渡し、記事を書かせるというもの。正直、その多くは、もうAIで代替できるんですよ」
いわく、一般的なSEO記事の作り方はこうだ。
まず、ある検索ワードについて上位表示されているサイトを制作会社が分析し、その内容をなぞって構成を組み立てる。構成の各項目では、参照すべきサイトや記載すべき内容まで指示。受け取ったSEOライターはネット検索で情報を集めながら、指示された構成どおりに原稿を埋めていく。
「参照すべきURLや見出しごとの着地点まで細かく指定しているから、記事中にオリジナルな要素はほとんどない。つまりウチのSEOライターの実態は、原稿をちょっと手直ししているだけなんです。
彼らに渡している構成はAIのプロンプト(指示文)みたいなもの。だからSEOライターをAIに置き換えても、工夫次第で8割方満足できる記事になります。AI化は今後も止まらないでしょう」
であれば、外注費を削減できるわけだから、制作会社はAIの普及を悲観する必要はないのでは?
「いえ、キーワード選定や構成作りといったウチの仕事自体も、いずれ丸っとAIに取られるでしょうね。すでに、キーワードを指定すれば検索上位ページを分析して記事生成までやってくれるAIツールが出ています。精度はまだ不十分ですが、数年で人間のディレクターと遜色のないレベルになるとみています」
将来の苦境を予感して、C氏は転職を検討している。
「そもそもSEOメディアは、サイトの増加や記事の低質化が進み、以前ほど成果が出なくなっていました。AIが似たような記事を量産することで状況はさらに悪くなるはずです。
自分たちがやってきたのは、要は〝情報の焼き直し〟。同業者とは『俺たちはネットにゴミをばらまいているだけ』なんて自虐を言い合っていました。仕事にプライドも持てないし、AIに淘汰されれば諦めがついて、むしろせいせいするくらいですよ」
【発注元企業も大混乱】AIの登場で苦境に立たされるのはSEO業界の面々だけではない。これまでSEO対策を外注してきた事業会社内の混乱も相当なものだ。人材サービス企業でSEOメディアを担当しているD氏は苦り切った表情で言う。
「ウチのメディアは、転職希望者に会員登録を促す導線として、転職のノウハウをまとめたSEO記事を大量にアップしています。今まではサイトの構築からSEO運用・SEO記事の制作まで、外注先に丸投げでした。私たちは社内予算を確保して『こんな成果を出したい』というリクエストを業者に出すのみ。
ところが最近、上が『AIを使えば記事くらい内製できるはずだろ』と言い出した。本当に困っているんです」
かつて「パソコン一台で仕事できる」と一世を風靡したSEOライターだが、潮目が変わりつつある(写真はイメージ)
D氏らにとってSEOとは「外注すれば勝手に順位が上がる」という具合で、中はブラックボックス。AIを使えと言われても、どんな記事が検索エンジンに評価されるかわからず、何から手をつけるべきかと頭を抱えている。
「これまでは担当といっても名ばかりで、業者から成果リポートを受け取って、さらに上に報告するだけでした。記事の制作だけで年間1000万円近くの予算をかけて月に20記事もリリースしていたものを、兼務2人のチームで回せるわけがありません」
内製化の無理を上層部に説こうと、D氏は社内調整に奔走しているそうだ。
では、SEO業界は今後どうなるのか。前出のA氏は「検索という行為自体がなくなる可能性もありますが」と前置きした上でこう予測する。
「AIがコピーのような情報を量産する中で、新規性や独自性のある情報が、今まで以上に検索エンジンに高く評価されるのは間違いないでしょう。つまり、二極化が進むはず。小手先のテクニックで表示順位を上げるという、SEO界隈に染みつく意識も捨てないといけません」
「AIが仕事を奪う」論は来たる将来の話ではなく、すでに始まっていたのだ。
取材・文/西田哲郎 写真/iStock PIXTA イラスト/渡辺貴博











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