"サナ活"の盛り上がりに党費収入が拡大!? 政治の世界の「推...の画像はこちら >>

もはや日本文化の一部ともいえる「推し活」だが、懸念もあるという

好きなアイドルのCDはもちろん、グッズは買えるだけ購入し、コンサートやライブがあれば海をも超えて会いに行くーー。いわゆる「推し活」は、この10年で非常に身近な消費行動となった。

民間のマーケティング会社「推し活総研」が2万人以上を対象に行った調査によれば、その経済規模は年間3兆5000億円とも試算され、1人あたりの年間消費額は平均25万円ほど。物価高によって日本経済全体の消費は冷え込む傾向が強まっているのに、この市場は勢いを増すばかりだ。

【推し活で快楽物質がドバドバ!?】

私利私欲ではなく自身の推しに自分の金銭や時間を捧げる。一見、通常の行動原理から外れているかのように見える行為だが、そんな推し活を熱心に行う人たちの脳内では何が起きているのか。法廷診療心理学博士で『ザ・ニューロマーケティング』の著者でもある遠藤貴則氏の見解はこうだ。

「推し活は報酬系、社会的結束、不確実の3つが同時に働く、依存を形成しやすい脳刺激構造・設計になっています。本人たちは自覚のないまま、すごくパッシブに快楽物質を手に入れてしまっている状態なんです。

脳内物質でいうと、ドーパミンだけでなくオキシトシンも作用しています。オキシトシンは、『ここにいたら安全だ』『居心地がよい』というときに出るものですが、推し活ではこの2つが同時に出ている。気持ちがいいうえに安心感があるという状況なんです。

推し活にはコミュニティが存在することが大きいですね。宝塚でも地下アイドルでもKPOPでも、ファンのコミュニティはまるで1つの部族のように特有のルールがあって、上下関係があったりするじゃないですか。

そこに、推しの順位や急な活動停止といった不確定要素が絡んでいって、さらに脳内物質の分泌を誘発する。感動や嫉妬を味わいやすい、実にビジネスとしてよくできた仕組みだと思います。こんなにもリスクとコストがかからずに脳内物質を出せるものって、なかなかありません」(遠藤氏)

また遠藤氏は、政治と推し活の親和性の高さについても指摘する。

「最近では新興の政党が勢いを増していますが、これって『言いたいことを代わりに全部言ってくれる』存在なんですね。しかも責任とリスクを全部取ってくれる。これは昔でいうところのロックンロールであったり、尾崎豊であったり、そうした存在と同じだと思うんです。しかも、政党やコミュニティは1人によるものではないから、存在自体が消滅しにくい。そう考えると、昨今の参政党ブームなどは非常に読み解きやすくなるかと思います」(遠藤氏)

事実、政治の世界では「推し活」が盛んになっているようだ。

「高市首相を推す人たちによるいわゆる『サナ活』は、ファションを真似たり聖地巡礼したりと穏健なものが中心ですが、アイドルやキャバ嬢、ホスト、ライバー同様、推しの政治家や党に投げ銭感覚で党費を支払う人が増えています。

躍進めざましい参政党は月1000円から党員になることができ、収入総額のうち約3分の1を党費からまかなっている。日本保守党においては約87%が党員からの会費で運営され、主要な財源が推し活と言える状況。一人当たりの賛助額としては政治献金よりも少額ですが、裾野の広さが政策運営にも安定性をもたらし、党のカラーをより濃く打ち出せるようになっています」(経済誌記者)

"サナ活"の盛り上がりに党費収入が拡大!? 政治の世界の「推し活」にみる個人崇拝への危惧
現役首相が推し活の対象となるのは憲政史上、異例ともいえる

現役首相が推し活の対象となるのは憲政史上、異例ともいえる

「推し活×政治」のブームは、占い業界にも波及しているという。
占い系YouTuberのエミえみちゃんは〝高市効果〟についてこう語る。

「推している政治家さんの資質や将来性を占って、答え合わせをしたいというニーズが高まっています。自民党の総裁選前には『高市さんの推しなのですが、小泉さんに勝てますか?』や逆に『小泉さんは総理になれますか?』といったような質問が来るようになりました。

これまでは自分の健康や、金運や仕事運、恋愛運を占ってほしいという依頼がメインでしたが、他人の、しかも政治家の運勢を占うニーズが出てきたことに、時代の変化を感じます」(エミえみちゃん)

その形はどうあれ、国民の政治への関心が高まっているとすれば良しとすべきかもしれないが、危惧もある。

「推し活による脳内物質の分泌を利用した推し活マーケティングは、すでに民間企業の多くが採用していますが、政治家や党による政治活動でも利用されるようになる」と前出の遠藤氏。一部の政治家への過度な個人崇拝が蔓延(はびこ)る事態とならなければよいのだが‥‥。

文/新田勝太郎 写真/PIXTA、高市早苗公式X

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