超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"...の画像はこちら >>

第1位に輝いたトヨタ GR GT/GR GT3 12月5日、トヨタが電撃発表。ベールを脱いだのは超絶スポーツカー。
現場で取材した山本氏も「完全無欠のやりすぎカー」と断言

今年取材した話題のモデルの中から、珠玉にも程がある「やりすぎカー」を選び、勝手に表彰!

選考委員長は日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員で、自動車研究家の山本シンヤ氏。それでは、今年輝いたクルマを一挙大紹介!

*  *  *

【年の瀬に現れた"魂の継承車"】

――それでは山本シンヤ選考委員長、まずは第1位の発表からお願いします!

山本 問答無用で12月5日のワールドプレミアで姿を現したトヨタのGR GT/GR GT3でしょう。その予兆は11月末に突然オンエアされた"謎の新CM"でした。

――高速周回路を駆けるトヨタ2000GTをレクサスLFAが抜き去り、さらにその2台を黒い謎のスーパーカーが一瞬でブチ抜く、例の映像ですね!

山本 3台のランデブー走行、黒いマシンの一瞬のシルエット、そして最後はGRロゴで締め。情報量は最少、インパクト最大。SNSは一気に沸騰!

この黒いマシンこそ、豊田章男会長が「年末に私が発表します」と宣言していた"トヨタ次世代トップ・オブ・スポーツ"。豊田会長が「スポーツカーは伊勢神宮の式年遷宮(神事)のように技術を継承するもの」と語るとおり2000GT、LFAに続く"魂の継承車"です。

――伊勢神宮の式年遷宮!

山本 ちなみにCM撮影地はJARI(日本自動車研究所)の高速周回路。かつては茨城県谷田部町(現つくば市)にあり、1966年に2000GTが日本車初のスピードトライアルに挑んだ"伝説の地"。トヨタが自前のテストコースではなく、あえてここを選んだのは"魂の原点"への敬意でしょう。

――どんな走りのクルマに?

山本 システム出力は650馬力以上/850Nm以上。V8の4Lツインターボに8速AT内蔵モーターのハイブリッド、トヨタ初のアルミ骨格スペースフレーム構造の車体、低重心に徹底してこだわった基本素性、サーキットから街中まで容易にカバーするフットワーク、機能をカタチにした内外装デザイン......語り始めたら一冊の本になる(笑)。

――すでにやりすぎ!

山本 ただし新技術だけでなく、LFAの評価に関わった故成瀬弘(ひろむ)マスタードライバーが残した「トヨタ車は最後までドライバーを裏切らない」という哲学が、これまで以上に色濃く受け継がれているのは確実。

LFAの"秘伝のタレ"を継ぎ足し、さらに"ドライバーファースト"を突き詰めた新時代のピュアスポーツに仕上がっていると期待していいでしょう。

【センチュリークーペのシートは"西陣織"】

――第2位はトヨタのセンチュリークーペです。

山本 センチュリーといえば、トヨタの中でも"別格中の別格"。ただ、その立ち位置がどこか曖昧でした。そこで豊田会長が「ブランドとして確立すべきだ」と独立を決断。セダン、SUVに続き、ついにクーペが誕生。まさに"唯一無二の日本車"です。

――デザインも振り切っていますね。

山本 見た目はパーソナルクーペですが、中身はショーファーカー(お抱え運転手)。セダンは"タキシード"、SUVは"ビジネススーツ"、そして今回のクーペは"パーティドレス"。ボディカラーのオレンジは「鳳凰(ほうおう)復活の炎」を表現しているというから、とにかく華やか。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
トヨタ センチュリークーペ ジャパンモビリティショー2025に降臨して話題を呼んだセンチュリークーペ。日本の象徴カーが"ブランド"として走り出した

トヨタ センチュリークーペ ジャパンモビリティショー2025に降臨して話題を呼んだセンチュリークーペ。日本の象徴カーが"ブランド"として走り出した

――内装は?

山本 助手席はフルリクライニング式&リアウインドーレス。運転席との間には織物風の仕切り、西陣織のシート......伝統と革新をここまで一台に詰め込めるのは、センチュリーだけの"特権"ですね。

――メカニズムは?

山本 未公表ですが、僕はGR GT/レクサスLFAコンセプトと同じ基本素性をベースに開発されていると予想しています。ただし、パワートレインは既存のユニットをベースにするのではなく、独自のモノじゃないかなと。となるとV8の上も!?

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
レクサス LSコンセプト これまでのレクサスLSはラグジュアリーセダンだったが、ジャパンモビリティショー2025に現れたのは究極の6輪モデル

レクサス LSコンセプト これまでのレクサスLSはラグジュアリーセダンだったが、ジャパンモビリティショー2025に現れたのは究極の6輪モデル

――まさにやりすぎの極み!続いて第3位はレクサスLSコンセプト。コンセプト一新で6輪の乗用車!?

山本 従来のLSは"ラグジュアリーセダン"でしたが、今回は"ラグジュアリースペース"へと進化しました。後輪を4つにすることで後方スペースを思い切りフラットに。"乗員がどれだけくつろげるか"に振り切った結果の"6輪やりすぎ仕様"なんです。

レクサスはこれまでコーポレートの長男でありながらも台数も追わなければいけないジレンマで保守的になっていましたが、今回トップ・オブ・トップとしてセンチュリーがブランド化されたので、創業時に掲げた"誰の真似(まね)もしない"を体現する挑戦者に戻ったわけですね。

――ドアもスゴすぎ!

山本 大開口スライドドアも、ショーファーカーに本当に必要な機能をゼロから作り直した答えですね。インテリアは上品さと華やかさが同居する、まさに"走るリビング"。

新しいラグジュアリーの形がここにある。

ちなみにパワートレインはEV(電気自動車)。当然走りにも革命的な技術が盛り込まれるはず。お披露目後の賛否も含め全部やりすぎ(笑)。

【噂の軽EVに"公式魔改造カー"】

――第4位は、SNSでもバズったホンダのスーパーワンプロトタイプです。

山本 はい。ホンダ懐かしの"シティターボⅡブルドッグ感"があるあの顔つきで、まず完全に話題をかっさらいました。ホンダのEV戦略は「小さいクルマから」ですが、そこにしっかり"遊び心"を盛り込んでくるあたり、まさにホンダらしさ全開です。

――具体的には?

山本 N-ONE e:をベースにブリスターフェンダーでワイド&マッシブに見せる。さらにブーストモードでは、"仮想シフト"+"サウンド演出"で、まるでガソリン車みたいな熱い加速が味わえてしまうんです。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
ホンダ スーパーワン プロトタイプ ホンダがジャパンモビリティショー2025に出展して話題を呼んだのが、「走り」を磨いたギンギン軽EV。市販化あるか!?

ホンダ スーパーワン プロトタイプ ホンダがジャパンモビリティショー2025に出展して話題を呼んだのが、「走り」を磨いたギンギン軽EV。市販化あるか!?

――すでに試乗済み?

山本 試作車に乗りましたが、チョー楽しい(笑)。

軽いのに安定していて、走りのキレも抜群。ホンダは大きいクルマを造ると迷走することが多いですが(失礼)、小さくて元気なクルマを造らせたらピカイチです。

――第5位は、今年上半期ランキングの1位にも輝いたダイハツのミライースGRスポーツコンセプト。

山本 今年1月、幕張メッセで開催された東京オートサロンで披露されたモデルです。TGR(トヨタ・ガズー・レーシング)と志を同じくするDGR(ダイハツ・ガズー・レーシング)が開発中のクルマで、2019年のコペンGRスポーツ以来となる"イケイケモデル"として話題になりましたよね。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
ダイハツ ミライース GRスポーツコンセプト 残念ながら市販化は未定。でもラリーで鍛え上げ、山本氏はサーキットでその走りをチェック。発売されなきゃ、ファン激オコ!?

ダイハツ ミライース GRスポーツコンセプト 残念ながら市販化は未定。でもラリーで鍛え上げ、山本氏はサーキットでその走りをチェック。発売されなきゃ、ファン激オコ!?

――どこがやりすぎ?

山本 そもそもミライースは燃費性能を追求した"第三のエコカー"です。ただ、これはその車両に、なんとターボエンジンと5速MTをぶち込んできたんです!

さらに、車体バランスを整えるためにサスペンションや空力パーツなどを出し惜しみなく投入しており抜かりなし。小さいけれど本格的なモデルです。

――第6位は、中国BYDの"日本専用"の軽EV!

山本 まず驚いたのが、その名も"ラッコ"という車名。BYDは海獣ネーミングが得意ですが、日本人の記憶に残るネーミング。

担当者はいいセンスをしていると思います。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
BYD ラッコ ジャパンモビリティショー2025に展示されたラッコの完成度はMAX。2026年夏発売予定、戦略的な価格で勝負するという

BYD ラッコ ジャパンモビリティショー2025に展示されたラッコの完成度はMAX。2026年夏発売予定、戦略的な価格で勝負するという

――では、ラッコのやりすぎポイントは?

山本 名前も衝撃ですが、それ以上に"軽スーパーハイトワゴン"というニッポン市場の超激戦区に勝負をかけてきたところ。EVは航続距離を伸ばすために空気抵抗の削減や軽量化が命です。スーパーハイトワゴンは、そのどちらも不利なのですが、それでもあえて挑んできた姿勢が完全にやりすぎです!

【ポルシェもプレリュードもハイブリッド化!】

――第7位は、ポルシェ911史上初のハイブリッド・911 GTS T-Hybridですが......ハイブリッドってどうしても"走りが退屈"なイメージがあります。

山本 それが、このモデルはまったく違うんです。このシステム(T-Hybrid)は"走りを強化するための電動化"です。モーターもバッテリーも積んでいますが、主役はあくまで水平対向6気筒エンジン。そのポテンシャルをより高めるための電動化、と理解するのが正解です。

――EVの航続距離は?

山本 EVモードがないどころか、モーターだけでは走れません。あくまで"エンジンに電動化を足す"方式です。なので、911らしさは1ミリも薄まっていません。

実際に乗ると"電動車感"はゼロ。エネルギーフロー表示を見て、やっと「このクルマ、ハイブリッドなんだ」と気づくレベルです。従来のダイレクト感はそのままに、レスポンスがより鋭く、より滑らかなフィーリング、そしてパワフルな特性に仕上がっています。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
ポルシェ 911 GTS T-Hybrid 911初のハイブリッドを体感した山本氏が語る、ポルシェの本気。電動化で変わる走り、その真価を徹底チェックした

ポルシェ 911 GTS T-Hybrid 911初のハイブリッドを体感した山本氏が語る、ポルシェの本気。電動化で変わる走り、その真価を徹底チェックした

――つまり、エンジンをさらに輝かせるためのハイブリッド化って話ですか?

山本 まさにそのとおり。実はハイブリッド化に合わせて、エンジン(3.6Lターボ)は新設計されています。

――スゲェー。

山本 ちなみにポルシェは合成燃料プロジェクトにも出資していて、エンジンを未来に本気で残そうとしています。ちなみに本国ドイツではより高出力な911ターボにもこのシステムを採用。間もなく日本にも導入されるはず。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
ホンダ プレリュード 「デートカーの代名詞」プレリュードが令和に復活。男心をたぎらせる熱い走りで600万円超の価格ながら売れ行き好調

ホンダ プレリュード 「デートカーの代名詞」プレリュードが令和に復活。男心をたぎらせる熱い走りで600万円超の価格ながら売れ行き好調

――第8位は、ホンダの新型プレリュード。

山本 今回で6代目になります。5代目が2001年に生産終了してからなんと24年ぶりの復活ですが、試乗して思わず笑っちゃいました。「あ、これ相当いいな」と。

ホンダはEVまっしぐらに思われがちですが"ハイブリッドも本気"を体現する一台に磨き抜かれている。"世界で最も官能的な、やりすぎハイブリッド"と言っていい。

――マジか!

山本 冗談抜きにホンダの本気が凝縮されています。とはいえ、今は販売好調ですが、ホンダはすぐに"止める(生産終了)"癖があるので、今回は継続を切に願います!

【武闘派、軽スポーツに"カーボンネガティブ"】

――第9位は、スバルのコンセプトカーです。

山本 パフォーマンスB STIコンセプトです。スバルの現行フラッグシップはWRX S4ですが、代を重ねるごとにサイズも価格もアップして、若い世代には手が届きにくくなっているのが現実です。

「こういうクルマ、欲しいよね」という声が社内でも出るのに、できない理由ばかりが積み上がって前に進まない......そんな状況が長く続いていました。

――ふむふむ。

山本 そこで目をつけたのが、スバルで最もコンパクトなインプレッサ系のボディ。ここに、現行スバルが持つ"黄金パーツ"をギガ盛り。ある意味、スバルの技術資産をフルに組み合わせた"究極の流用チューン"に!

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
スバル パフォーマンスB STIコンセプト 現行スバルで最もハイパフォーマンスなFA24ターボ、WRX STI譲りの6速MT、さらにAWD(全輪駆動)をギガ盛り

スバル パフォーマンスB STIコンセプト 現行スバルで最もハイパフォーマンスなFA24ターボ、WRX STI譲りの6速MT、さらにAWD(全輪駆動)をギガ盛り

――しかし外観が激アツ!

山本 巨大インテークのボンネット、専用バンパー、ブリスターフェンダー、大型ウイング、BBS鍛造ホイールにポテンザ、さらに大容量ブレーキ......まるで3代目WRX STIの武闘派オーラが令和に復活したかのようです。

――この時代にスゴすぎ!

山本 ただ、量産化の際にはメーカーにしか触れられないメカニズム部分はスバルが責任を持って仕上げ、そこから先の仕上げはユーザーがカスタムして完成させるクルマにしたいそうです。要は"育てるクルマ"になるかも!?

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
ダイハツ K-OPEN ジャパンモビリティショー2025で話題沸騰! ダイハツ「K-OPEN」、この完成度は......次期コペン確定か!?

ダイハツ K-OPEN ジャパンモビリティショー2025で話題沸騰! ダイハツ「K-OPEN」、この完成度は......次期コペン確定か!?

――第10位はダイハツのK―OPEN。

山本 その"正体"は軽オープンスポーツのコペン。なんと直列3気筒ターボを"横倒し"で積み、駆動系には軽トラのハイゼット用を活用。すでにプロトタイプがテスト走行をしていて、開発はかなり本気モードです。ダイハツのマスタードライバーに就任した豊田章男氏もすでにテストを開始しているそうです。

――次点はマツダのビジョンクロスクーペです。

山本 マツダはロータリーエンジン搭載フラッグシップモデルの復活を夢見ていますが、今回は4ドアクーペという新しいスタイルでの提案です。

注目は2ローターのロータリーターボとモーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)で、最高出力はなんと510馬力。今発売中のロータリーエンジン搭載のMX-30R-EVは発電に特化していますが、このモデルは駆動にも使うそうです。

超ド級スポーツカーに6輪車も! 本家選考委員が勝手に決める"週プレやりすぎカー・オブ・ザ・イヤー2025"
マツダ ビジョンクロスクーペ マツダがジャパンモビリティショー2025で見せた革新モデルは、ロータリー+4ドアクーペ。市販化の行方に注目!

マツダ ビジョンクロスクーペ マツダがジャパンモビリティショー2025で見せた革新モデルは、ロータリー+4ドアクーペ。市販化の行方に注目!

――しかもカーボンニュートラル燃料も視野に?

山本 そう。微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料と、マツダ独自のCO2回収技術「モバイルカーボンキャプチャー」の組み合わせで、エンジン車で"カーボンネガティブ"を目指しています。走れば走るほどCO2を減らす。そりゃ、やりすぎでしょ!

●山本シンヤ Shinya YAMAMOTO 
自動車研究家。自動車メーカーの商品企画、チューニングメーカーの開発、自動車専門誌の編集長などを経て2013年に独立。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営

撮影/山本佳吾 宮下豊史 週プレ自動車班 写真提供/ポルシェジャパン

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