石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"...の画像はこちら >>

細かすぎるけど伝わってほしい、前総理大臣の偏愛トーク!

近年、オタク趣味を隠すことなくSNSで全開放する政治家も増えているが、その先駆けであり、知識量と熱量で圧倒的に"ホンモノ"と言えるのが、石破茂前内閣総理大臣だ。

鉄道、プラモデル、そしてアイドル。

総理大臣職を退いた今だからこそ、石破さんの偏愛トークを聞きたい......そんな思いで編集部は議員会館に突撃した! 

【「乗り鉄」である前総理の悲哀】

――いきなり全開で趣味について伺います! 石破さんは鉄道オタクのカテゴリー的には、ひたすら鉄道に乗ることを楽しむ「乗り鉄」ですよね。

それも、寝台特急への思い入れが強く、寝台特急「出雲」(現サンライズ出雲)には1000回以上も乗車したそうで。出雲について思っていることをまず聞かせてください。

石破茂(以下、石破) そもそも、寝台列車にゆっくり乗車できるほど、まだ自分の時間がないんだ。

だから、サンライズ出雲にもおいそれとは乗れませんけど、寝台特急について私の希望を言っていいとしたら、そろそろ後継車両を造ってほしいな。

現行車両の285系はデビューして27年ですから。特急「ひだ」や特急「南紀」に採用されているHC85系みたいな、蓄電池のエネルギーでも走行可能なハイブリッド車両を導入してほしい。

ハイブリッド車両だとね、電化されてない区間へも乗り入れができるから、私の地元の鳥取駅まで走れるようになる。これなら、新幹線のように速度を求めるのではなく、ノスタルジックな時間を過ごせますな。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
サンライズ出雲のプラレールや、ハイブリッド車両のHC85系(手前)の模型を眺めながら鉄道トークをする石破さん

サンライズ出雲のプラレールや、ハイブリッド車両のHC85系(手前)の模型を眺めながら鉄道トークをする石破さん

――一般ユーザーの目線だと速度や快適性、コスパで新幹線のほうが優秀なのでは?

石破 寝台列車は夜の寝ている時間を有効に使えるわけだし、夜間運行は電力も安い。よく、「夜走られちゃうと保線をやる時間がないだろ!」って言われるけど、今のレールの耐久性は昔と比較にならないでしょ。ノスタルジックでエコな寝台列車を走らせる意義はあると思いますけどね。

――でしたら、鉄オタ議員連盟をつくり、寝台列車を盛り上げる活動はどうでしょう?

石破 それ、賛同者が私以外にいなかったら、さみしいじゃないですか(笑)。

――ところで、今年も冬の青春18きっぷの販売シーズンとなっていますよね。これで、ぶらりひとり旅したい路線などは?

石破 私さ、当面ひとりで電車に乗れないんだよ。

――どういうことですか?

石破 総理経験者になって、どこへ行くにも警護のSPさんと一緒なの。だから、無理なんだ、ひとり旅。

仮に、私が電車に乗って旅をしようとしたら、出発駅から到着駅、そして車内にもSPさんや都道府県警の方々が待機しなきゃいけない。

これって、鉄道会社、お客さんにも迷惑になるでしょ。鉄道ファンとして、それはどうかと思っちゃうよ。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
石破さんの国会事務所内の様子。ミャクミャクの人形、350分の1スケールの戦艦大和のプラモデルなどのグッズが所狭しと置いてある

石破さんの国会事務所内の様子。ミャクミャクの人形、350分の1スケールの戦艦大和のプラモデルなどのグッズが所狭しと置いてある

――昔は各駅停車に乗って、ひとり旅をしたことも?

石破 うん。各駅停車で、田舎のちっちゃな駅に停まりながら移動するのは、本当に夢のような時間だった。夏場の駅で聞くセミの鳴き声、そしてディーゼルエンジンの轟音。

なんとも言えない情景でしたよ。

――また、そうやって田舎の駅にたたずむことができればいいですよね。

石破 本当にそんなことができたらうれしいけど、それやると「石破! おまえはそんなに暇なのか?」って言われますわな(笑)。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
本棚には読者家の石破さんらしい多彩なジャンルの本が並んでいる

本棚には読者家の石破さんらしい多彩なジャンルの本が並んでいる

【〝エンディングプラモ〟は決まっています】

――石破さんは鉄道だけでなく、プラモデルにも造詣がとても深いですが、最も思い出に残るプラモとは?

石破 やはり、戦艦大和でしょうな。それも、ニチモ(日本模型)から1968年に発売された200分の1スケールの戦艦大和。私が中学受験の時期に発売されて「中学入試で1番だったら、買ってやる!」と親に言われたのが、ニチモの戦艦大和だったんです。

――入試では1番になれたんですか?

石破 無理だった。4、5番目かな。もうね、中学入試どうこうより、戦艦大和が作れなくなったのが本当に悲しくてさ。私、本気で家出しようと思ったんです。

その落ち込んだ姿を親が不憫(ふびん)に感じて、結局200分の1スケールの戦艦大和を買ってもらえました。それから、戦艦大和はいろいろなスケールで10隻以上は作っています。

――そんな、石破大和艦隊に朗報があります。近年は最新の金型技術が投入されて、より精密になった200分の1スケールの戦艦大和も発売されているんですよ!(国内ブランド「モノクローム」の「200分の1 日本海軍戦艦 大和」を制作するYouTube動画を石破さんに見せる)

石破 これ、すごいなー。この手すり、エッチングパーツ(金属製パーツ)だなー。すごいなー............でも。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
最新の200分の1スケール戦艦大和のプラモの組み立て動画を視聴する石破さん

最新の200分の1スケール戦艦大和のプラモの組み立て動画を視聴する石破さん

――どうしました?

石破 こーいうのじゃないんですよ! 私が作りたいプラモはッ!

――え!? これじゃダメなんですか?

石破 ちょっと、そこの棚を開けてもらえますか(立ち上がり、棚から古びたパッケージのプラモデルを取り出す)。私ね、時間があったらこれを作りたいの。

ニチモの200分の1スケールシリーズの第1弾が戦艦大和なんだ。でね、第2弾が、この海上自衛隊のミサイル護衛艦あまつかぜだったの。

これ、復刻版じゃないですよ。1969年発売の本物。パーツのビニール包装だって開封してません。ずっと前に買って大切に保管してあるんだ。

――あまつかぜをじっくり作りたいと?

石破 いつの日かねー。ゆっくり作りたいよねー。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
石破さんが"エンディングプラモ"として大切に保管しているニチモ製のミサイル護衛艦あまつかぜ。新品未開封の超お宝プラモだ

石破さんが"エンディングプラモ"として大切に保管しているニチモ製のミサイル護衛艦あまつかぜ。新品未開封の超お宝プラモだ

――それこそ、手すりや各種アンテナなどを、最新のエッチングパーツに換装したり?

石破 そーいうことをしちゃダメなんです! あのね、これは半世紀以上前の製品なんですよ。なので、現代の最新のプラモと比較したら、当時は技術的に再現できなくてデフォルメされている部分がいっぱいあります。でもね、そこが重要なんだ。

半世紀以上前の製品を改造などせず作ることで、当時の日本の工業技術を知ることができるんです。

――プラモと工業技術ってそんなに関係あるのですか?

石破 プラモには金型技術が集約されているでしょ。そして、金型技術はものづくりの基礎でもある。そういった意味で、改造はしたくないんですよ。

――でも、じっくり作るからには、色も塗らず素組みってわけにはいかないですね?

石破 うん。素組みじゃつまらないよね。

まず、ちゃんとパーツを整えますよ。何せ半世紀以上前の金型だからパーツが曲がっていたり、くぼんでいたりする箇所もあるから、それを整えます。

接着後に接着剤がはみ出したパーツ間のパーティングラインだって、丁寧にやすりがけしてコンパウンドで磨く。もちろん、色だって塗るしさ。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
ミリタリー関連のプラモなどがびっしり詰められた石破さんの国会事務所の収納棚。戦艦や戦車、さらに自衛官のフィギュアもあった

ミリタリー関連のプラモなどがびっしり詰められた石破さんの国会事務所の収納棚。戦艦や戦車、さらに自衛官のフィギュアもあった

――そこまで作り込むと1、2週間で完成ってレベルじゃないですよね。

石破 最低でも3ヵ月。そうなってくると、人生最後に作る〝エンディングプラモ〟がミサイル護衛艦あまつかぜになるんでしょうな。

――近年、旧軍の戦車や軍用車両を復元して展示・走行させる「NPO法人防衛技術博物館を創る会」の活動があります。こういった1分の1スケールのプラモ的な活動は、どうですか?

石破 日本の過去の技術をちゃんと残して伝えようってことは本当に大事な活動なんです。プラモだって「実物がどうなっていたのか?」を知らなければ、それをメーカーが製作することすらできません。

私たちモデラーだって良いプラモ作りができない。

今、NPOや個人でこのような復元活動をやっていますが、本来は国もやるべきことなんですよ。

――総理大臣時代にやらなかったんですか?

石破 うーん。総理がいきなり「やるぞ」っていうのじゃなくて、議員連盟とかで活動を重ねて、ということなんですけどね。ただ、こういった活動をしている人たちが「戦争マニア」「軍事オタク」って言葉でまとめられちゃうのは悲しいよな。他国と同じようにちゃんと評価されるべきだよ。

【アイドルのコンサートにも行きたい】

石破 ところで、一般的な私に対するイメージって、やっぱり鉄道やプラモなの?

――あと、キャンディーズをはじめとする1970年代のアイドル好きというのもあると思います。

石破 実はさ、クラシック音楽も大好きなんだよ。以前はモーツァルト、ベートーベンなどのコンサートによく参加したけど、今はまったく聴きに行けなくなったな。あと、美術館も全然行ってない。

でもさ、やっぱり1970年代アイドルのコンサートにも行きたいよな。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
本棚には軍事や防災関係の書籍と一緒に、石破さんが大好きなキャンディーズのフィギュアが衣装違いで並ぶ

本棚には軍事や防災関係の書籍と一緒に、石破さんが大好きなキャンディーズのフィギュアが衣装違いで並ぶ

――例えば、誰のコンサートですか?

石破 まだ暇があった頃に岩崎宏美さんのコンサートに行ったら楽しかったなー。彼女の熱烈なファンである「親衛隊」もいて、彼らは一糸乱れぬ動作でペンライトを振りながら、「宏美ちゃーん!」ってコールしているんだ。あの光景は圧巻だし、ワクワクする空間でしたな。親衛隊のメンバーは50年以上もファンを続けてるんですよ。

石破茂、趣味を語る。「人生の最後に作る"エンディングプラモ"はこれだろうね」
総理大臣を退いた後も、超多忙な石破さん。趣味に割ける時間はあまりないようだった

総理大臣を退いた後も、超多忙な石破さん。趣味に割ける時間はあまりないようだった

――そういった、アイドルファンの方々との交流はあったりするんですか?

石破 「石破さんも親衛隊に入りませんか?」って声をかけられますよ。そこに入れば楽しい時間を過ごせることはわかります。

でも、SPさんもついてきちゃうと、ファンの皆さんは嫌がるだろうなと。そう考えると、アイドルやクラシックのコンサートも当分は無理なんでしょうな。

ごめんなさいね。そろそろ取材は終了で。私これから大学で講演があるから、急がないと。総理大臣を辞めても、あんまり時間がないんだよね。

* * *

と言って議員会館の自室を小走りに出る石破さん。約30分という短い時間の取材ではあったが、実に濃密なオタクトークを披露してくれた前総理に、誌面を借りて敬礼!

●石破茂(いしば・しげる)
1957年生まれ、鳥取県出身。当選回数13回の衆議院議員。前内閣総理大臣(2024年10月~25年10月)。銀行勤務を経て、1986年に初当選。これまでに防衛大臣(07~08年)、農林水産大臣(08~09年)、地方創生担当大臣(14~15年)、内閣府特命担当大臣(地方創生、15~16年)。党役職では自民党政務調査会長(09~11年)、幹事長(12~14年)などを歴任。読書家であり、鉄道、ミリタリー、プラモデルやアイドルにも精通している、政界屈指の"オタク"

取材・文/直井裕太 取材協力/関根弘康 撮影/本田雄士

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