国内にはGoogleなど巨大企業のデータセンターがある。今後も新設が続き、電力消費が増えることが予想される
AIの社会実装により、データセンターが続々と建設。
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【電力不足になるのは間違いない!】AIの社会実装が進む中、膨大なデータを処理するためデータセンターの建設ラッシュが加速。千葉県印西市など、郊外や地方部での新設が続いている。われわれが日常で使うスマホのAI機能も、大量のデータを使用して電力を消費している。
今後の電力不足が懸念されるが、それが電気料金にも影響するのか? 電力事情のスペシャリストであり、環境エネルギージャーナリストの本橋恵一氏に電力市場の今後を聞いた。
――現在の電力量は足りているのでしょうか?
「全国的に見れば大丈夫です。ただ、データセンターや半導体工場の建設増の影響により、将来の需給が逼迫する可能性は高いと言えます」
――電気料金への影響も心配ですが、そもそもどうして電気料金は年や地域で価格差が生まれるんですか?
「電気料金の価格差には、海外要因と国内要因のふたつがあります。ロシア・ウクライナ戦争が始まった頃、輸入する化石燃料の価格が上がり、電気料金が上がったことは皆さんも記憶にあるはず。ただ現在は輸入価格が落ち着いているため、電気料金も比較的安定しています。
国内では、九州電力は安く、北海道電力は高いのが特徴です。これには九州ではこれまで多額の投資をしてきた原子力発電所が再稼働していることや、北海道は土地が広いため電気を送る送電コストが高く、それが電気料金に上乗せされているという理由があります」
――それでは大量に電力を使うデータセンターは、北海道よりも送電コストの低い東京や九州に建てたほうが電気料金は安く済むのですか?
「一概にはそう言えません。データセンターの電力需要の約3割は、実は空調にかかる費用なんです。
――データセンターでの電力消費によって、電気料金にはどのような影響が?
「日本の多くの企業は、送電線を使わずしてデータセンターの活用はできません。送電線や変電所をたくさん造れば電力会社にとってコストがかかるわけですから、全体として電気料金は値上げとなるでしょう。大量の電力を消費することの影響も将来的に出てくると予想されます。
海外の例ですが、データセンター建設による電気料金の値上げに対し、アメリカではすでに反対運動が起こっています。
そのためもあってかアメリカでは、データセンターに再エネの開発と利用を義務づける動きがあります。日本でも国民の電気料金に影響が出ないよう、企業向けに個別の料金設定を導入するなどしてもよさそうですね」
新たな施設の建設で電力が大量に消費されていくことが予想される。最大需要電力とは、一定の時間帯に消費した電力の平均値のうち、その期間で最も高い値のことを指す(電力広域的運営推進機関発行の資料を参照)
――確かに、企業がデータセンターを使うことのしわ寄せが個人の電気料金にくるのは違和感があります。AIを使わず生活する人も多い中、データセンターの影響による一律での値上げには不満の声が上がりそう。では一般の消費者にとって、データセンターには送電コストがかからない電力が使われるのがベストですか?
「そうです。そのためデータセンター建設地は北海道がベストだと個人的には思います。土地があるので再エネ活用に向いていますし、立地も選びやすいため送電線コストを抑えやすいんです。そして、再エネ施設を造ることで地域の発展にも期待できます」
――データセンターが地域に恩恵をもたらすこともあるのですね。
「もちろんです。ドイツのデータセンターでは、電力による廃熱を使って商業施設の空調として活用しています。確かに電気料金を上げざるをえない場面はありますが、やり方次第では恩恵もあるんです」
――データセンターの特徴は、24時間電力を使い続けることです。電力消費の仕方そのものに変化はありますか?
「データセンターとは関係なく、電力需給は変わってきています。例えば、東日本大震災以前の原子力発電所が稼働していた頃は、夜間の電気料金が安かったので夜に建物の空調のためのお湯や氷がつくられていました。しかし、震災を機に太陽光発電市場が成長し、昼間の電気料金が非常に安くなりました。
特に企業が空調を使わない春や秋の日中は安い。例えば昨年5月の休日であれば、1kWh当たり卸価格は0.01円。太陽が沈む夕方から値上がりしますので、日中の電気料金を安く設定している電力会社もありますよ。
電気料金の仕組みを知り、単純な価格の比較ではなく自分の生活に合った電力プランを選ぶとよいでしょう」
【ソーラーシェアリングで新しい可能性も】――大量の電力を消費する大企業の集まる都市部とデータセンターの建設が進む地方。そうなると地方部に住む人の生活のために電力を供給する力が脆弱になりそうですが、これを解消することは可能なのでしょうか?
「地方では電力の地産地消が可能だと考えています。固定価格制度による電力の買い取り期間が終了した太陽光発電所を、地元の資金で買収して地域の電力会社から電気を安く供給するなどして、経済を回すことが大事です」
ソーラーパネルの下で神具に用いられる植物の榊を栽培する埼玉県美里町の様子
――何かと話題のメガソーラーはアリなのでしょうか?
「森林や湿原を破壊しメガソーラーを建設するのは反対です。
海外では電気をつくるためではなく、農業のためにソーラーシェアリングするという考え方に変わってきています。日本でも農業のためという理由であれば、もっと広く受け入れられるでしょう。
アメリカではクランベリー畑の上で太陽光発電をして、そこでできた電力を地元に安く供給するという取り組みもあります。また海外では生態系を保全するための太陽光発電に注目が集まっています」
メガソーラーといえば現状は環境破壊の象徴になっているが、太陽光発電が環境を守ることもある。地域経済や雇用など、設置地域にもメリットがある場合も。今後も過熱が予想される電力争奪戦の解決策にもなりえるかもしれない。
取材・文/編集プロダクション雨輝(岡田さやか) 写真/Adobe Stock
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