ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー...の画像はこちら >>

年末年始のニッポンの風物詩、それは"クルマの初売り"。なぜ毎年、これほどまでに熱気を帯びるのか? その魅力とはなんなのか? 2026年の初売りで狙うべき一台はどれか? 週プレ自動車班が総力取材!

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【"絶対王者"首位陥落の衝撃】

毎年、年末年始に日本中の自動車販売店で火ぶたが切られる恒例行事が、クルマの初売り。

だが、2026年は様相が違う。自動車業界関係者に狙い目を聞くと、返ってくる答えは異口同音だ。

「狙うなら軽自動車一択!」

日本の新車市場で約4割を占める軽自動車は、日本独自の規格が生んだ"ガラパゴス市場"。25年11月の新車販売総合ランキングを見れば半分が軽という爆売れ状態。

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!

軽バンで車中泊をしながら日本一周を達成した漫画家・小田原ドラゴン氏は言う。

「昔は"軽=お金がない人のクルマ"ってイメージがありましたよね。でも最近は、みんな生活が厳しい。だから、その偏見が薄れてきたんじゃないですかね」

物価高による実質賃金の低迷が続くニッポンで、軽はもはや"妥協の選択肢"ではない。現実的で、合理的な"シン国民車"なのだ。小田原氏は、そんな軽のメリット・デメリットを率直に語る。

「悪い点は室内が狭いこと。でもそれは、仕事や車中泊で使っていた僕の話。

普通に乗るぶんには、まったく不足はないはず。逆にいい点は、見知らぬ狭い道にもガンガン入っていけるところですね」

だが、メーカー同士の争いは血で血を洗う仁義なき消耗戦となっている。

「薄利多売で、粗利はほとんど残らない」

そんな悲鳴が現場からは漏れる。それでも各社が軽にフルスイングする理由は明白。この巨大市場で負ければ、国内市場全体での"負け組"が確定するからだ。

そして初売りとは、軽を扱うメーカーの覚悟がモロ出しになる決戦の場。テレビをつければ、メーカー各社の初売りCMが流れ続けるのはもはや年末年始の風物詩だ。

中でもダイハツは、25年12月に「初売りサキドリフェア」などを実施。さらに年明けの1月4日から初売りフェアをスタートという力の入れようだ。

各社の販売店も腹をくくり、採算度外視の目玉車に豪華ノベルティ、福袋、お米、産地直送ギフトがズラリ。販売店の営業マンも、「出血覚悟の大盤振る舞いも!」と鼻息が荒い。

では、狙うべき軽はどれ?

そのヒントとなるのが、軽市場で起きた衝撃の"ジャイアントキリング"。

自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の発表によると、25年10月、16ヵ月連続で軽の首位を守ってきたホンダのスーパーハイトワゴン・N-BOXが前年同月比24%減の1万2784台と失速。まさかの4位転落となった。

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー1 ダイハツ ムーヴ【価格】135万8500~202万4000円 25年6月発売以降、販売絶好調。目標値引きは8万円だが、販売店からは「初売りはお年玉価格を用意します」との声も

●大本命カー1 ダイハツ ムーヴ【価格】135万8500~202万4000円 25年6月発売以降、販売絶好調。目標値引きは8万円だが、販売店からは「初売りはお年玉価格を用意します」との声も

その隙を突いたのが、25年6月に全面改良されたダイハツの新型ムーヴ。実に前年同月比208.3%増の1万6015台を販売し、堂々の首位奪取。総合ランキングでも2位となった。ちなみにダイハツ車が軽販売トップに立つのは、19年11月のタント以来、約6年ぶりの快挙だ。

近年、市場を席巻してきたスーパーハイトワゴンを押しのけ、ハイトワゴンのムーヴが頂点に立ったインパクトは大きい。ハイトワゴンが軽新車販売のトップに立つのは、21年10月のスズキ・ワゴンR以来。要するに軽自動車の"常識"が、揺さぶられているのだ。

だが、激アツの軽新車販売バトルはこれで終わらない。翌11月にはN-BOXが1万6198台を販売し、軽はおろか総合ランキングで首位に返り咲き。

ムーヴは軽3位へ後退。軽市場は戦国時代へ突入しているのだ。

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー2 ホンダ N-BOX【価格】173万9100~247万5000円 現行モデルは23年10月デビュー。売れに売れている定番カー。目標値引きは10万円以上。販売店からは「在庫車が狙い目」

●大本命カー2 ホンダ N-BOX【価格】173万9100~247万5000円 現行モデルは23年10月デビュー。売れに売れている定番カー。目標値引きは10万円以上。販売店からは「在庫車が狙い目」

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー3 スズキ スペーシア【価格】153万100~219万3400円 24年9月デビュー。販売店は「N‐BOXと比べるお客さまも少なくありません」とのこと。目標値引きは10万円

●大本命カー3 スズキ スペーシア【価格】153万100~219万3400円 24年9月デビュー。販売店は「N‐BOXと比べるお客さまも少なくありません」とのこと。目標値引きは10万円

ひと月天下とはいえ、なぜムーヴが売れているのか。軽の主流は今もN-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タントといったスーパーハイトワゴンだが......。自動車研究家の山本シンヤ氏が、その理由をこう読み解く。

「軽ユーザーはとにかく保守的です。登録車のように買い替え時に目移りすることがほとんどないので、よほどインパクトのあるモデルが出ない限りは、一度気に入ったメーカーからはなかなか離れない。

ダイハツは認証不正で出荷がかなりの期間止まりましたが、『販売再開まで車検を通して待つよ』と宣言するユーザーが相当数いた。そんなユーザーが一気に買い替えたのが、販売トップに立った大きな要因。異例の"ロイヤルカスタマー"だと思います」

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー4 ダイハツ タント【価格】148万5000~210万6500円 現行型のデビューは19年。そろそろフルチェンを期待する声も。逆に言えば超熟成カー。目標値引きは10万円以上

●大本命カー4 ダイハツ タント【価格】148万5000~210万6500円 現行型のデビューは19年。そろそろフルチェンを期待する声も。逆に言えば超熟成カー。目標値引きは10万円以上

ただし、ムーヴを取り巻く環境は決して甘くない。軽市場の主役は、今もスーパーハイトワゴンの"高額帯"。ムーヴが位置するハイトワゴンは、時代の波にのみ込まれ、「古い」と切り捨てられてもおかしくないポジションだった。そこで一発、大阪発のクセ強メーカー・ダイハツはミラクルな手を打った。

「ダイハツが出した答えは、"ハイト系でありながらもスライドドア"という独自路線でした。これは簡単なようで、実はどこもまねできない。なぜなら、スライドドアを装着するには前後に支えが必要なので、ある程度の高さがないと開口部が狭くなってしまう。

事実、ライバルのスズキ・ワゴンRはスイングドアですからね。ムーヴラテやムーヴキャンバスでスライドドアの知見を積み重ねてきたダイハツだからこそ打てた、"勝負の一手"でしたね」

新型ムーヴ躍進の陰の要因が、DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)による骨格の共通化と、「ニューモデルが当たらなければ、即引っ込める」という異常なまでのスピード感。この身軽さこそ、ダイハツがトヨタの完全子会社として"軽の戦場"を一任されている理由だという。

山本氏は、新型ムーヴの完成度をこう言い切る。

「良くも悪くも、"極めて普通にいい"。実際に目を引く飛び道具はありませんが、ターボの出来は本当に素晴らしい。そして何より象徴的なのが、"軽カスタム"の元祖でありながら、今回はあえてカスタム顔を捨て、ひとつの顔にまとめてきた点。これは間違いなく布石で、次の一手は、もう仕込まれています」

その"答え合わせ"は、そう遠くないという。

「26年1月9~11日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催予定の世界最大級の改造車の祭典『東京オートサロン』でダイハツが何か"提案"を出してくる可能性はあります。ムーヴの物語は、まだ序章に過ぎないと思いますよ」

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー5 日産 ルークス【価格】167万2000~236万3900円 25年10月27日に発売されたルークス。販売店からは「N‐BOXからの買い替えも!」。目標値引きは10万円

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ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
●大本命カー6 三菱 デリカミニ【価格】196万4600~290万7300円 25年10月29日に発売。販売店からは「おかげさまで販売はすこぶる好調です」とホクホク顔。目標値引きは8万円

●大本命カー6 三菱 デリカミニ【価格】196万4600~290万7300円 25年10月29日に発売。
販売店からは「おかげさまで販売はすこぶる好調です」とホクホク顔。目標値引きは8万円

【ガチで買うべき軽は!?】

今回、多くの専門家にクルマの初売りで狙うべきモデルを聞いたところ、名前が挙がったのは、N-BOX、スペーシア、タント、日産ルークス、三菱デリカミニ、そしてムーヴ。いずれも現行軽市場を代表する顔ぶれだ。山本氏は、こう分析する。

「N-BOXもルークスもデリカミニも、もはや白ナンバー級の圧倒的なクオリティです。そこには、白ナンバーを造ってきた自動車メーカーの意地を感じます。裏を返せば、それだけ価格も跳ね上がる。だからこそ、あらためて問い直すべきなのは"軽とはなんなのか"。"庶民の足"を支えてきた存在を、これからどう守り、どう進化させていくのか、でしょうね」

実はホンダの販売店関係者からはこんな声も。

「N-BOXにオプションをフル装備すると300万円以上になります。それを残クレ(残価設定ローン)で購入されるお客さまは決して珍しくありません」

ダイハツ完全復活で大荒れ! 初売り商戦で狙うべき"大本命カー"はこれだ!!
寒空に負けず、声を張り上げて口上を披露してくれたジャンプ中澤氏。そっと寄り添うは相棒のポン太(ぬいぐるみ)

寒空に負けず、声を張り上げて口上を披露してくれたジャンプ中澤氏。そっと寄り添うは相棒のポン太(ぬいぐるみ)

最後を締めるのは、軽自動車も手がけてきた女性実演販売士・ジャンプ中澤氏だ。クルマ初売りの魅力を、魂込めた口上でブチかます!

「さぁさぁお立ち会い! 軽はまさに戦国乱舞! 行かなきゃ損!損! クルマの初売り開幕ッ! 火ぶたを切るのは、禊を済ませたダイハツ新型ムーヴ。『ドン!』と構える王者ホンダN-BOX。スズキは攻めの一手で絶好調! 荒波の中でも気迫の日産ルークス! 威勢がいいぜ、三菱デリカミニ!

今や国内販売の4割を占める軽"シン国民車"たちが、群雄割拠。出血覚悟の大サービスでお出迎え。運命の一台が、待ってますぜェ~!」

取材・文・撮影/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾 イラスト/小田原ドラゴン

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