人里にやって来たツキノワグマの親子。クマの数が増え、餌の取り合いになり森から追い出されたのかもしれない
2025年を表す漢字は「熊」だった。
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【山にクマの餌がないわけではない!】2025年のクマ被害は、被害者数230人、うち死亡者13人と過去最悪だった(25年11月末時点/環境省調べ)。では、2026年はどうなるのか。『獣害列島―増えすぎた日本の野生動物たちー』(イースト新書)などの著書がある森林ジャーナリストの田中淳夫氏に聞いた。
――昨年は街に出没する〝アーバンベア〟が問題となりました。
田中 〝山に食べるものがないから、クマは里におりてくるのだろう〟という考え方ですよね。私はまず、その発想自体が間違っていると思います。
日本は明治時代になると近代化のために森の木の伐採を急速に進めました。そして、戦時中には軍需資材の供給などのためにものすごい量の木を切って、終戦直後は全国的にハゲ山が広がりました。その後、復興のためにスギやヒノキなどを大量に植林します。
スギやヒノキなどの針葉樹は、クマの食べる実ができない。だから『クマの食べるものがない』といわれるのでしょう。
でも、その人工林も1970年頃からの林業の衰退によって放置されていきます。間伐などの手入れをしないと人工林は密生するので、植えた多くが成長できずにバタバタ倒れていきます。そんな森には日差しが入り、雑草や広葉樹などが生え始めて混交林になるんです。
この状態は、林業従事者から見れば〝荒れている森〟となりますが、森林生態系から見ると、生物多様性が増した〝豊かな森〟と言えます。
豊かな森には、クマの餌がたくさんあります。ですから今、森にクマの餌がなくなっているわけではないんです。
――でも、25年はドングリなどが不作だったと聞きます。
田中 確かに北海道や東北などではドングリなどが不作といわれましたが、西日本は豊作の地域が多かった。それでもクマは出ています。
ですから、山に餌がなくなったから街に出てきたのではなく、森が豊かになってクマの数が増えすぎたため餌の取り合いになり、強いオスグマなどに負けて、弱いメスグマや子グマたちが街に餌を求めてやって来ているというのが正しい理由だと思います。
(編集部注:実際に環境省の「クマ類の推定個体数」でも北海道と本州の多くの地域で推定個体数は増加傾向と報告されている)
――「ドングリなどを山に運べばクマは街に出てこないのでは」という声もあります。
田中 ドングリを山に運んでも、それを食べ終わったら街に出てくるのではないでしょうか。
クマが森から人里におりてきて、そこで食べるのは人間が作った果実などでしょう。人間が作った甘いリンゴや柿などのほうがクマもおいしいと感じるはずです。
また、ゴミ箱の中に捨ててある肉を見つけて食べるかもしれません。すると果実などより肉のほうが好きになるかもしれない。果物より肉のほうが栄養がありますから。
――でも、クマは冬ごもりするんですよね。
田中 冬は外にいても餌はないし、寒い所にいるとエネルギーを消耗するので、穴にこもってじっと過ごしているだけです。
でも、街に行けば餌があるとわかれば、冬ごもりしないで街の中で冬を越す可能性はあります。
――そして、春になればもっとクマが街にやって来る?
田中 今、クマが増えていて山から追い出されるようにして街に来ているわけですから、今後、増えることはあっても減ることはないと思います。
2026年、クマ問題はさらに深刻になりそうだ。
取材・文/村上隆保 写真/時事通信社(環境省)
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