ホンダ N‐ONE e:/日常使いの快適さはトップクラス。低重心のコンパクトボディで、街中ではキビキビ。
今年は軽EV(電気自動車)市場に注目!? 日産サクラが独走する中、ホンダとスズキが反撃に打って出た。さらに中国の巨人・BYDが殴り込み。覇権を握るのはどこ? そして、EV普及は加速するのか? 徹底取材した!!
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【"軽EVの本命"に、冷ややかな日本市場】昨年9月、ホンダが満を持して送り出した軽EV・N-ONE e:は、長年親しまれてきた軽自動車のN-ONEをEV化した意欲作。見た目はキュートだが、中身は硬派。航続距離はWLTCモードで295㎞。急速充電なら約30分で80%まで回復する。
昨年上半期の国内EV新車販売台数でトップに立った日産サクラの航続距離180㎞と比べても、その差は歴然。スペックだけを見れば"軽EVの本命"と呼ぶにふさわしい仕上がり。それでもEVが売れない。この現実こそが、今の日本のEV市場を象徴している。ホンダ関係者は週プレ自動車班にこう漏らす。
「市場の反応が鈍い」
ホンダ N‐ONE e:/日常使いの快適さはトップクラス。
ホンダの販売現場の声は、さらにシビアだった。
「充電インフラへの不安もあってか、お客さまのN-ONE e:への反応は冷ややか。販売の軸はガソリン車のN-BOXシリーズです」
数字は、その温度差をはっきりと映し出す。全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の資料によれば、昨年11月のN-ONE e:の新車販売台数は1058台。ちなみに10年間、軽新車販売でトップを独走するN-BOXの同月の販売台数は1万6198台と、その15倍以上である。
自動車ジャーナリストの桃田健史(けんじ)氏はN-ONE e:についてこう分析する。
「日産サクラはEV専用車としてわかりやすく、マーケティングも巧み。一方、N-ONE e:はガソリン車ベースのEV。かつてのホンダeはEV専用車で、デザインも装備も非常に個性的でしたが、逆に言うと"クルマがお客を選ぶ"存在でもありました。N-ONE e:はその反動で万人向けを狙っているものの、ベース車との違いがユーザーに伝わりにくい面も」
加えて言えば、昨年上半期の国内EV販売台数(軽含む)は、前年同期比約7%減の2万7321台。2年連続のマイナス成長だ。
この背景には何があるのか。経済産業省の資料によると、全国の充電口数は約6万8000口。EV普及を本気で支えるには、いまだ心もとない数である。つまり、軽EVが伸びない最大の要因は、買う決断を後押しする環境が整っていない点にある。
【中国BYDが踏み込む"軽の聖域"】そんな停滞ムードを一気に吹き飛ばしたのが、昨年10?11月のJMS(ジャパンモビリティショー)2025だった。スズキと中国BYDが世界初公開した軽EVコンセプトが、会場の空気を一変させたのだ。
スズキ ビジョンe-スカイ/2026年度内の量産化を目指すスズキの試作モデル。全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1625㎜。航続距離は270㎞超
スズキが披露したのは、26年度内の量産化を目指すビジョンe-スカイ。通勤や買い物など、日常使いに最適な軽EVを目指すという。
一方、来場者に最も強烈なインパクトを与えたのが、今夏発売予定のBYDの軽EV・ラッコ。熱視線を集めた理由は単純明快。日本の"ドル箱カテゴリー"である軽スーパーハイトワゴンに、EVを切り札に殴り込んできたからだ。
では、なぜBYDは日本専用モデルを投入したのか? 答えは、日本市場の"聖域"にある。軽は日本の新車販売の約4割を占め、その巨大市場の王座に君臨するのが両側スライドドア付きのスーパーハイトワゴン。N-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タントが覇権を争う。その牙城に、BYDが挑戦状を叩きつけたというわけだ。
桃田氏は、ラッコの価格設定などをこう読む。
「BYDが昨年12月に投入したPHEV(プラグインハイブリッド)のシーライオン6も、日本市場を強く意識した戦略的な価格設定でした。ラッコも日産サクラを意識した価格帯になる可能性が高い。そうなれば一定数のユーザーがBYDに流れるはず」
BYD ラッコ/BYDが今夏ニッポン市場に投入予定のコンセプト車。両側スライドドアを採用。
すでに日本では、BYDに対するポジティブな評価とネガティブな声が出そろい、ブランドイメージも定着しつつある。
「ラッコの価格、商品性、話題性が重なれば、市場の関心が一気に高まるのは自然」
一方、軽の老舗スズキが放つ軽EVのポイントはどこか。
「ビジョンe-スカイで注目されるのは、スズキが掲げる『ちょうどいい』を量産モデルでどう形にするかです。価格のちょうどよさ、その価格に見合った性能や装備、パッケージングをどうまとめるのか。軽で培ってきた合理性と実用主義を、EVという新領域でどこまで昇華できるか」
スズキの販売現場からは、極めて現実的な声が飛ぶ。
「軽には昔から"200万円の壁"があります。本気で普及を狙うなら、100万円台前半じゃないと厳しいのでは」
最後に桃田氏は、EV普及の条件をこう整理する。
「ポイントは3つ。価格がリーズナブルであること。航続距離が実用的であること。そして充電インフラの整備。その前提に立つと、軽EVの合理性は非常に高い。
もっとも、物価高が続き、実質賃金が上向かないニッポンで、軽EV普及の決め手は、やはり価格だ。
「ガソリン車の軽と比べると、車両価格はおおよそ2倍。現状は補助金で差を埋めていますが、それもいずれ縮小、終了する見通しです。補助金が減るタイミングで、軽EVそのものの車両価格をどこまで下げられるのか。そこが普及の成否を分ける山場です」
軽EVはニッポンの切り札となるのか。それとも"中国の黒船"に覇権を奪われるのか。その問いは、すでに市場に突きつけられている。
取材・文・撮影/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾
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