最近、佐藤優さんは韓非子に凝っていて、全ての考え方を改めたとのことだ(イラスト=:Fine Art Images/Heritage Images/ゲッティ/共同通信イメージズ)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
* * *
――最近、韓非子に凝られているそうですね。
佐藤 そうなんです。それで考え方や書き方を変えました。やっぱり、言うべきことは言わないといけない、と思い直したんです。
こんな韓非子の名言があるんですよ。
『私めは、分かりもしないで意見を言うのは馬鹿者だし、分かりながら、言わないでいるのは不誠実だと聞いております。
臣下でありながら、誠実でないのは死罪に当たり、意見を言って間違っているのも、やはり死罪に当たるでしょう。
とは言え、私めは聞き知る所を残らず、申し述べましょう。罪に当たるかどうか、大王様のご採決にお任せします』
――「知らずして言うは不智(ふち)なり。知りて言わざるは不忠なり」ですね。
佐藤 そうです。やはり、わかっていながら言わないでいるのは不誠実だということです。これまではそこらの評論家や中途半端なロシア専門家がわからないでいるのは、仕方ないと思っていたんです。
――なるほど。これからもガンガン言っていただきたいです。さっそくですが、まずNATOの件。米軍抜きでウクライナを支え切れるんでしょうか?
佐藤 そんなわけはありません。
――支えきれないと。そうしたら、もう戦争を止めるしかないですね。
佐藤 そう、それでまたドイツが軍事国家になります。
――え! ということは、一体どうなるんですか?
佐藤 ドイツの産業が軍事化すれば、十分ロシアに対抗することができます。そして、ロシア本土にウクライナ・ドイツ連合軍が攻め込むとなると、ロシアは戦術核で対応する可能性があります。そうなった場合、ドイツは核兵器を所持していないことがネックになります。
――ドイツは敗戦国ですから、核兵器は持てないはずですよ。
佐藤 そうです。そして、ロシアは対ドイツであれば戦術的核兵器を使っても構わないと思っているはずです。
――第二次大戦で、ソ連はドイツ軍に3000万人殺されてますからね。
佐藤 その時、トランプ米大統領は、核共有として核兵器をドイツに貸すと思いますか?
――貸さないと思います。
佐藤 はい。仮に核共有しても、トランプがボタンを押さないと作動しませんからね。そうしたら、ドイツは滅亡です。
――そこまでいきますか?
佐藤 ただし、AfD(ドイツのための選択肢)が政権を取れば、状況は変わります。まず、先に国内のドイツ人だけのドイツを作り、それから外に行こうとなります。そうなれば、ドイツの滅亡は免れます。
――しかし、ナチスドイツと結論は一緒じゃないですか?
佐藤 一緒ですよ。ドイツ人も変わらないんですよ。
――鎌倉幕府の勇敢な武士たちの活躍のおかげですか?
佐藤 違いますよ、神風のおかげです。
――おおっ、前々回も出てきましたが、あの1944年の大日本帝国の国策映画『かくて神風は吹く』でありますね。
佐藤 1939年に右翼の思想家・大川周明が『日本二千六百年史』を書きました。その時、元寇は鎌倉武士の健闘で勝ったと書いたんですよ。すると当時、最もすごいウルトラ右翼の蓑田胸喜(みのだ・むねき)が「伊勢の神風に対する敬意が足りない」と文句を付けました。それで書き直して、伊勢の神風によって元寇に勝った、となりました。
――ウルトラ右翼の力はすさまじいであります。
佐藤 これまでの『脳内戦艦サナエ』の回でも話してきましたが、だから高市政権になって、急に念力主義が入って来たんです。石破政権までとは位相が違う政権になったんですね。「念力」や「願力」というようなモノをたくさん鑑みて分析しなければならなくなったんです。
――あの......話を現実に戻していいですか?
佐藤 いえいえ、これが現実なんです。
――わかりました......。北条時宗のセリフ、《心をもって、皇御国を守らんとする、これらの赤誠、天に通ず。4000余りの敵舟を一夜のうちに覆滅し候。これ、皆、伊勢におわします皇祖神霊の御神業》でありますね。
佐藤 そうです。
――では、イスラエルなんですけど、汚職などの罪で起訴されているネタニヤフ首相が、ヘルツォグ大統領に恩赦を求めていますが、これはどうなるんでしょうか?
佐藤 まず、恩赦にならない限り首相は辞めないでしょう。トランプがバックについていますからね。なんせトランプはイスラエル国会で恩赦を呼びかけたり、恩赦を求める書簡を送ったりしています。だから、イスラエル大統領も恩赦にして辞めてもらおうと思うかもしれません。
――そろそろネタニヤフは用済みなんですかね。
佐藤 そうです。しかし、色々と疑惑は出ていますが、基本は葉巻とシャンパンなんですよ。もっとも、葉巻やシャンパンなど約30万ドル相当をもらい、アメリカのビザの口利きをしてやったというようなスケールの小さい話です。
要するに収賄罪です。イスラエルという国がなくなることに比べれば、大したことではありません。F35の翼に取り付けられたフラップほどの値段ですしね。
――すると、宮廷住まいのトランプ一族を貴族とすると、ネタニヤフ一族を助けたのは同じ貴族同士だから、ということですか?
佐藤 そういうのも全部、韓非子の通じるんですよ。
――そこになんらかの答えがあると?
佐藤 はい。韓非子の思想に「環境心身」というものがあります。おおまかに説明すると、
「聖人が国を治める場合には、人々がこちらのために働かないではおかれないような方法を持ちいるのであって、愛情に基づいて働くことを頼みにするのは危険である。こちらのために働かずにおれない方法が安全だ。そもそも君臣の間に肉親のような親しみがあるわけではない」
ということです。
これをトランプとネタニヤフに置き換えます。トランプがネタニヤフを恩赦にしてやれば、今後、ネタニヤフは歴史に名を残す。トランプ政権の間はネタニヤフを使える局面も出てくるかもしれない。恩を売って利用できるようにするわけです。
――なるほど。そのようにして今昔の宮廷政治は進んでいくわけですね。
佐藤 そうです。だから、愛情や信頼などに寄与するのではなく、自分のために働かざるを得ない状況を作ると。こうするとすべては上手くいくんです。
次回へ続く。次回の配信は2026年1月23日(金)予定です。
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年10月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/61-wQA+eveL._SL500_.jpg)
![Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 10月号[日本のBESTデザインホテル100]](https://m.media-amazon.com/images/I/31FtYkIUPEL._SL500_.jpg)
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年9月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51W6QgeZ2hL._SL500_.jpg)




![シービージャパン(CB JAPAN) ステンレスマグ [真空断熱 2層構造 460ml] + インナーカップ [食洗機対応 380ml] セット モカ ゴーマグカップセットM コンビニ コーヒーカップ CAFE GOMUG](https://m.media-amazon.com/images/I/31sVcj+-HCL._SL500_.jpg)



