全体支持率が36%前後まで低下したものの、共和党支持層の支持率は90%前後と依然として盤石。相互関税や移民政策を巡り裁判所から違憲判断が出始めても、強硬路線は変わらない
2025年、就任直後から大統領令を連発し、国内外を振り回してきた第2次トランプ政権。
例年どおりなら、中間選挙を控える年の政権は少し落ち着くのが常道だが、現実は真逆。トランプ大統領は議会も司法も意に介さず、むしろアクセルを踏み込もうとしている。中間選挙の年に、なぜ暴走は止まらないの!?
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【議会も司法も止められない!】発足から1年。まだ任期の4分の1にもかかわらず、何度も何度も世界をざわつかせている第2次トランプ政権だが「2026年もやりたい放題が続く」と断言するのが、国際政治学者で上智大学教授の前嶋和弘氏だ。
「第1次政権時にはマティス国防長官など、トランプ大統領にブレーキをかけられる人が一定数いましたが、第2次政権にはいなくなりました。
そのため、この1年は各国に対する相互関税の一方的な導入に始まり、強硬な移民の排斥・取り締まり。さらにはカリフォルニア州や首都ワシントンへの『治安維持』を名目にした州兵・海兵隊の動員など、大統領令を連発して政策を強行してきた。そもそも止める人がいない上に、議会や司法でさえも止められないため、この傾向は今年も続くでしょう」
議会が止められないとはどういうことか?
「例えば、今年11月3日には"大統領への中間テスト"とも呼ばれる中間選挙がありますが、共和党がどれだけ大敗しようがトランプは気にしません。
そもそも中間選挙は基本的に大統領の政党が負けるものなのです。生活の不満は現政権にあると考えるのが当然ですから。
しかも、下院は総議席数435のうち、共和党220議席、民主党215議席で、共和党のリードはわずか5議席しかない。そのため中間選挙では共和党が大きく減らして、民主党が過半数を奪回する可能性がかなり高いんです。
一方、上院はほとんど変わらず、共和党が辛うじて過半数を維持すると予想されています」
上院は共和党、下院は民主党が多数という"ねじれ状態"になれば、第2次政権後半の2年間は、議会運営が極めて不安定になるのでは?
「通常であれば、ねじれ状態は政権のブレーキになりますが、第2次トランプ政権にはその普通が通用しません。なぜなら、これまでも議会を無視する形で政策を進めてきたからです。むしろ独断専行を強める可能性すらあります」
では、司法も止められないのはなぜか?
「ここにきてトランプ大統領が乱発する大統領令を違憲だとする判決が、連邦地裁や高裁レベルで出始めています。『相互関税』についても、一審に当たる国際貿易裁判所と、二審の連邦控裁が次々に違法と判断しました。今年は連邦最高裁の判断も下されます。
ただし、これまでに示された『違憲』という司法判断に対しても、トランプ政権は従わず、控訴審で争う姿勢を示しています。たとえ、連邦最高裁が最終的に『違憲』だと判断したとしても、『司法の横暴だ』と裁判所を批判して判断に従わないかもしれない。
一方で、保守派判事が多数を占める連邦最高裁が大統領令を『合憲』と認めれば、議会を無視した行動に、司法がお墨付きを与えることにもなりかねません。
裁判所がトランプを止めればトランプ支持者が裁判所を激しく批判し、逆に暴走を許せば反トランプ派から司法が信頼を失う。アメリカは裁判所にも支持率があるのですが、それもすでに40%台まで低下しています。民主党支持者に限っては20%台と、史上最低レベルを更新しています。
この分断状況を考えると、司法にトランプ政権の歯止めを期待するのは難しいかもしれません」
【世界は"アメリカ離れ"。議会も司法も止められない、ほぼ無敵状態とも言えるトランプ政権を、アメリカ社会はどう受け止めているのか?
「25年11月末のギャラップによる最新の世論調査では、トランプ政権の支持率は36%と低下しています(不支持は60%)。
しかし、これは無党派層の支持率が下がっているからで、共和党支持者に限れば、支持率は今も84%と非常に高く、ずっと9割程度を維持している。逆に民主党支持層では支持率は3%程度で、昨年夏には1%の月も複数ありました。
トランプ大統領やその後継者と目されるヴァンス副大統領にとっては、岩盤支持層さえ守れていれば問題はないという計算なのだと思います」
分断が深まる中、世界の注目は次の大統領選に向かう。
「民主党側では、カリフォルニア州知事のニューサムや、若者人気の厚いオカシオ=コルテス下院議員らの名前が挙がり始めています。
一方の共和党では、トランプが『次の大統領候補はヴァンスかルビオ(国務長官)だな』と発言。『大統領は3回選ばれてはいけない』という法律があるため、キングメーカーを目指しているようです。
ただ、実は裏技があるにはあるんです。トランプが下院議長になり、ヴァンスやルビオが大統領や副大統領になるけど辞退する。そうすれば、最終的に大統領就任の権利がトランプに行き着く......というもの。
これであれば理論上は『選ばれてはいないから可能』と主張する余地がある。あくまで裏技ですが、トランプなら本気で考えていても不思議ではありません」
次期大統領選で民主党側の有力候補とされる、カリフォルニア州知事のニューサム氏。
そんな"読めない"トランプに対し、国際社会の視線は変わりつつある。
「シンガポールでは『いかにアメリカと貿易をしていないか』が、むしろ国民の誇りになっているそうです。そういう思考がEU諸国やオーストラリア、カナダなどでも広がっており、表向きはトランプ政権との衝突を避けながらも、実際には"アメリカ離れ"が加速する年になるでしょう」
その流れに取り残されかねないのが日本だ。
「今やトランプ政権の外交は、反中一辺倒ではなく、中国とはそれなりにうまくやることを優先しています。トランプ自身、FOXニュースで『アメリカと中国は良い関係だ。同盟国とは本当の友人ではない』と語ったほどです。
それにもかかわらず、日本はいまだに『いざとなればアメリカが助けてくれる』という感覚が抜けていない。台湾問題を巡る不用意な発言で、日中関係を悪化させてしまう危うさもあります。
いずれにせよ、トランプ政権の本質は今年も変わりません。だからこそ、こちら側がトランプ政権との付き合い方を、より賢く変えていく必要があるのだと思います」
取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社
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