『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、アメリカのトランプ政権によるベネズエラへの軍事介入と、それに続く各国・地域への圧力について考察する。
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ベネズエラ周辺に展開し圧力をかけていたアメリカ軍が1月3日、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束しました。
しかしながら、ドナルド・トランプ米大統領は続いてグリーンランドやキューバなどへも不規則な圧力発言を繰り返しています。それらが実行に移されるかどうかはともかく、こうした"シロウト外交"のツケは今後、巨大な負債となってアメリカに重くのしかかるでしょう。
第一次政権下でのイラン核合意破棄をはじめ、米外交の長年の積み上げを無視したトランプのトップダウン政策は、総じて長期的戦略を欠いています(自分が退いた後のことなど「知ったことではない」のかもしれません)。
今回のベネズエラ介入も、背後で交錯する大国の思惑や地政学的リスクといった複雑な計算をしていないとは言いませんが、それ以上に「目の前の敵を叩く」という単純な欲求の帰結という側面が強いのではないかと推察せざるを得ません。
トランプが憧れているといわれる第25代米大統領ウィリアム・マッキンリーは、19世紀末から20世紀初頭にかけてフィリピンやプエルトリコを併合し、中南米でも軍事介入を繰り返した、アメリカ帝国主義の象徴です。
マッキンリーは、多大なコストがかかる大英帝国型の「完全な植民地統治」ではなく、相手国を軍事力で脅し、傀儡政権を樹立し、資源や権益を手に入れるという「実利優先の半支配」を貫きました。
ただし、アメリカの力による覇権主義が、もはや軋轢しか生まないことは明らかです。この半世紀を振り返ると、それぞれ形こそ違えど、アメリカによる支配・懐柔の試みはことごとく失敗に終わっています。
例えば、選挙で選ばれた政権を露骨な介入で転覆させ、意のままになる王政を据えつけた中東のイランでは、アメリカに対する人々の怒りが革命と強力な宗教国家を生み出しました。中米ニカラグアのサンディニスタ革命も、アメリカの"汚い支配"と超格差社会への反動でした。
今回も同じ轍を踏みかねません。
また、ベネズエラの混迷は、その後ろ盾であったキューバの不安定化や、麻薬カルテルなど犯罪集団のさらなる伸長へと連鎖するリスクもあります。難民問題も含め、制御できないカオスの扉が次々と開いてしまうと、法も秩序も存在しない"人権のブラックホール"が出現する危険性すらあるでしょう。
そもそも米軍の中長期戦略は、中東や欧州からは漸進的撤退を進める一方、日本や韓国など同盟国に負担を分担させながら、対中国を含めたインド太平洋地域へのリソース集中を図るものだったはずです。
突如として「西半球重視」を掲げ、"裏庭"の中南米で泥沼に足を踏み入れようとしているトランプ政権に対し、アメリカの有権者の批判がいまひとつ広がらないことも気にかかります。正義の名の下に行なわれた過ちの歴史を省みず、いつまでこんなことを繰り返すつもりなのでしょうか。
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