1台買えば最大130万円のキャッシュバック! 大幅増額された...の画像はこちら >>

過剰生産で行き場を失ったEVが滞留している中国では、「EV墓地」の出現も報告されている

経産省所管の「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金」が今年1月から見直され、これまで90万円だった新車EV購入時の補助金の上限が130万円に大幅増額された。
EV派には福音であるはずの補助金増額だが、一部の既存ユーザーからは微妙な反応も浮かび上がってくる。

【補助金増額が打撃に!?】

千葉県在住の荒木健一さん(仮名・45歳)が話す。

「2021年に補助金40万円を受給し、実質400万円で購入したテスラ・モデル3に4年ちょっと乗りましたが、実はそろそろハイブリッド車に買い換えようと思い、11月に入ってから複数の買取り業者のネット査定を受けていました。乗り換えの動機は、EVのメリットが薄れたことです。

モデル3を自宅で充電する際の走行コストは1キロあたり7円ほどです。一方で、ガソリンの暫定税率の廃止と、それに先行しての定額引き下げ措置により、昨年12月中旬以降、レギュラーガソリン価格は150円程度になっており、プリウスなら1キロあたり6円程度の走行コスト。EVよりもハイブリッド車のほうが安いんです。

またEVは現在、自動車重量税は免除されていますが、2028年からは『ETC重量税』が導入されることになっている。ネット査定では、最高220万という数字が出ていたので、ほぼ同額の中古プリウスに買い替えるつもりでいました」(荒木さん)

しかし荒木さんの乗り換え計画には誤算が生じることとなる。

「12月のクリスマス直前、ネット査定で最高額を提示した業者に『実車査定』に来てもらうよう改めて連絡をしました。しかしその際に『当初の査定より20万円ほど減額になる可能性が高い』と伝えられました。

理由として聞かされたのは、その数日前に発表された補助金の見直しでした。私が所有するテスラ・モデル3も、87万円から127万円にCEV補助金が増額されることとなったのですが、これによって、中古市場の見通しが不透明になったというのです。

次に高い金額を提示していた業者にも連絡してみましたが、やはり同様の対応でした」(荒木さん)

1台買えば最大130万円のキャッシュバック! 大幅増額された「EV導入促進補助金」は誰得なのか?
先進的なイメージもある電気自動車だが、日本では現状、補助金なしには成り立たない存在だ

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EV補助金の増額によって中古EV市場の見通しが不透明になるとはどういうわけか。都内の中古自動車販売業者が明かす。

「今回のCEV補助金の増額分だけ、EVの実質購入価格と中古価格の差は縮まったことになります。そうなると、それまで中古EVを購入しようと思っていた人の一部は、新車の購入を検討するようになる。つまり、中古EV市場の需要の一部が新車市場へと流出し、ひいては中古EVのリセールバリューを押し下げることにもつながるです」(中古自動車販売業者)

【補助金がEV買い控えの一因に?】

荒木さんは複数の買取業者から実車査定を受けたというが、宣告された通り、査定額は200万円を超えなかったという。それでは希望の状態の中古プリウスの購入価格に及ばないため、テスラ・モデル3をもう少し乗り続ける決断をしたという。

同補助金は、クリーンエネルギー車の導入促進を目的としたものだが、同時にクリーンエネルギー車からの乗り換えを食い止める効果もあるということか。とはいえ、既存ユーザーの資産の価値を毀損してしまうというのは、補助金のあり方として正当なものなのか。

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公共充電設備の拡充の遅れも、日本のEV普及の足かせの一つと言われている

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前出の中古自動車販売業者も「現行の補助金制度は諸刃の剣」と指摘する。

「現在、4年落ち中古EVのリセールバリューは新車価格の半額と言われており、一般的なガソリン車と比べて大幅に悪い。その元凶は新車だけに大盤振る舞いされている補助金にあります。EVを乗り継ぐ人は、また新たに補助金がもらえるので気にならないかもしれませんが、リセールバリューの悪さがネックでEV購入を手控える人も少なくありません」(中古自動車販売業者)

【税金が中古EVと共に海外流出?】

そんな皮肉な事態を打開するには、一体どうするべきなのだろうか?

「今後も補助金を燃料にEVを走らせるような政策を続けるのであれば、新車だけでなく、中古のEVやPHEVの購入にも新車への補助金の半額程度を給付べきです。

そうすれば、中古EV市場も活性化し、リセールバリューが安定することで新車のEVやPHEVの新車購入の促進にもつながる。

現在は、国内中古市場が未成熟であるため、中古EVの7割以上は海外に流れているといわれています。補助金によってリセールバリューが既存された車が、海外に安く買われる構図は、補助金の原資である税金が海外に流出しているという見方もできます」(中古自動車販売業者)

世界でのEV普及の一助にはなっているのかもしれないが、税金が原資である以上、納税者の為になる補助金制度であって欲しいものだ。

文/吉井透 写真/iStock、unplush.com、微博

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