おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア...の画像はこちら >>

『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』53巻をおぎぬまXがレビュー!!

第53巻では、"許されざる世界樹(アンフォーギブン・ユグドラシル)"に集結した正義超人と悪魔超人の連合軍(ドリームリーグ)と、完璧超人始祖軍(パーフェクト・オリジン)による団体戦の中盤戦が描かれます!

第1戦目では、悪魔超人代表のバッファローマンがガンマンを相手になんとか勝利を掴みましたが、第2戦目では正義超人代表のラーメンマンが完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)のリーダー格・ネメシスと対峙します!

【完璧超人に生まれ変わるキン肉サダハル】

冒頭では、前巻に引き続きネメシスの回想が続きます。かつてキン肉星には、人望のある心優しき兄・キン肉タツノリ、ずば抜けた格闘センスを持つ弟・キン肉サダハルというふたりの王子がいました。

彼らの関係性は悪くなかったものの、兄のタツノリが大王になった一方で、弟のサダハルは天才すぎたことで家臣に忌み嫌われ、地下深くの牢獄に幽閉されてしまいます。

大王になったばかりのタツノリには弟を救う力がありません。せめてもの情けで処刑日が迫っていることを弟に告げます。サダハルはキン肉族に絶望し、牢獄から脱走。名も身分も故郷も捨て、真の強者が集(つど)う伝説の地・"聖なる完璧の山(モン=サン=パルフェ)"を目指します。 

荒波を泳ぎ、"聖なる完璧の山"に到達したサダハルは、そこで門番を務めるミラージュマンと遭遇しました。周囲には完璧超人になるための試練を受け、命を落とした超人たちの死体が散らばっています。問答無用で襲いかかるミラージュマンの猛攻を凌ぐため、サダハルが〝肉のカーテン〟で防御体制をとると、門番の動きがピタリと止まってしまいました。その独特の構えは、かつて完璧超人始祖の一員であったシルバーマンが考案したものだったからです。 

目の前にいるのが、シルバーマンの子孫であることを確信したミラージュマンは感慨深そうに語り始めます。完璧超人始祖でありながら、その立場を捨てて"聖なる完璧の山"を去ったシルバーマンは、のちに〝正義超人〟という一大勢力を作り上げます。その中でもキン肉族は、正義超人を...いや宇宙にその名を轟(とどろ)かせるほどの王族に成長しました。

 

そして現在、シルバーマンの子孫にあたるサダハルが、なんの因果かこの地に戻ってきたのです。数億年ぶりの帰還と言いましょうか、もはやこれは単なる回想シーンではなく、壮大なサーガです! 

こうして完璧超人としての資格を認められたサダハルに、ミラージュマンが洗礼を授けます。キン肉族の王子だったサダハルは、完璧超人・ネメシスとして生まれ変わりました。 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
ミラージュマンの洗礼を受け、完璧超人に生まれ変わったネメシス。ページに渡る変身シーンは必見!

ミラージュマンの洗礼を受け、完璧超人に生まれ変わったネメシス。ページに渡る変身シーンは必見!

ネメシスが自身の過去を語り終えると、リング外にいたキン肉マンが悲痛な表情を浮かべます。栄華を誇るキン肉族でも、歴史の裏には闇があったこと。そして、自身の叔祖父(おうおじ)にあたる人物と争わなくてはいけないからです。 

ミートすらかける言葉が見つからないなか、ラーメンマンが意外な過去を明かします。なんと、世界最強の残虐超人と呼ばれていたラーメンマンも、かつては"聖なる完璧の山"を訪れ、完璧超人入りを果たそうとしていたというのです...! しかし、その直前にあった「第20回超人オリンピック」でキン肉マンに敗北したことで、考えを改めました。 

キン肉族の光の面に救われて正義超人に残ったラーメンマンと、キン肉族の負の面に絶望して完璧超人となったネメシス。当初この試合は、因縁の浅い者同士の意外なカードだと思われていましたが、実は両者が重大なバックボーンを背負っていたわけです。

希望が勝つのか、それとも憎しみが勝つのか...試合が再開されます!

 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
当時、「ダメ超人」とされていたキン肉マンに敗れ、

当時、「ダメ超人」とされていたキン肉マンに敗れ、

 

【ネメシス、火事場のクソ力に目覚める!?】

さて、ここからラーメンマンVSネメシスが本格化するのですが...正義超人のなかでも最強クラスの実力者が相手でも、ネメシスは常にその一手二手、上をいきます。

 

ロビンマスクの「タワーブリッジ」が通用したなかったように、ラーメンマンの十八番(おはこ)「キャメルクラッチ」も、ネメシスの柔軟性で容易に攻略されてしまいます。 

一方、ネメシスが繰り出す「ネメシスドライバー」や「極・吊り天井固め」はラーメンマンに直撃。技から脱出するために自らの古傷をえぐり、血だらけになることで絶命を避けるのが精一杯です。 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
大量の出血で目くらましして締め技から脱出を果たすラーメンマン。しかし、その代償は大きく...?

大量の出血で目くらましして締め技から脱出を果たすラーメンマン。しかし、その代償は大きく...?

ですが、血まみれになったラーメンマンが「たとえどんな悪路でも...決して希望を見失わない...それが...正義超人魂だ!」と立ち上がります。 

僕はこのシーンを見た時、「これが...ラーメンマンの本当の姿だ!」としびれてしまいました。 

思えば、ラーメンマンは『キン肉マン』のなかでも、屈指の人気キャラかつ実力者なこともあり、いつしか負けているイメージが想像できないような優等生キャラになっていた気がします。第42巻でのマーベラス戦でも、他の正義超人がギリギリの闘いをする中、彼だけが唯一余裕を残して勝利するほどです。 

でも、この血にまみれたラーメンマンこそが、僕らの知っているラーメンマンの素顔ではないでしょうか!「第21回超人オリンピック」準決勝、ウォーズマンとの一戦を彷彿させるような強敵との〝死合い〟が、闘将の魅力を引き立てます。 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
近年の余裕の笑みを浮かべた表情ではなく、薄目を開き、怖さすら感じられるラーメンマン。これこそ彼の真骨頂...!

近年の余裕の笑みを浮かべた表情ではなく、薄目を開き、怖さすら感じられるラーメンマン。これこそ彼の真骨頂...!

正義超人魂を燃やして立ち上がったラーメンマンでしたが、ネメシスはトドメをさすべく、ロビンマスクを葬(ほうむ)った「<完肉>バトルシップ・シンク」を仕掛けます。絶体絶命のピンチの中、キン肉マンの呼びかけに応えるかのように、ラーメンマンがモンゴルマンに変身! 「闘龍極意ネコジャラシ」と、これまた懐かしい妙技によって、ネメシスの奥義を回避しました。

 

ページを読む手が震えます。試合中に相手の必殺技を破ったということは、もはや王手をかけたと同義です。あとは、こちらの最大の必殺技を相手に畳み掛けるだけ......しかも、ここからのラーメンマンの猛攻が凄まじい! モンゴルマン時代の代名詞「レッグ・ラリアート」からの、「心突錐揉脚(しんとつきりもみきゃく)」でネメシスを圧倒してから、満を持しての奥義「九龍城落地(ガウロンセンドロップ)」を繰り出しました。 

頭から落下し、リングにめり込むネメシスでしたが、ゴングはまだ鳴りません。彼は全身を発光させながら技に耐えると、なんとそこから「ツームストン パイルドライバー」で反撃します。先ほどの一撃に全身全霊を込めたラーメンマンはもはや闘う気力も残っておらず、勝機を失ってしまいました。しかし、ネメシスの身体に起きた発光現象の正体に気づいて不敵な笑みを浮かべます。

KO必至と思われたラーメンマンの「九龍城落地」に、なぜネメシスは耐えることができたのか......? それはロビンマスクとの一戦を経て、正義超人が最大の武器としている友情パワー、またの名を〝火事場のクソ力〟が、知らず知らずのうちにネメシスの心に灯(とも)っていたからでした。 

とてつもなく、とてつもなく皮肉な結末です。正義超人のことを下等超人と見下すネメシスが、よりにもよって友情パワーによって救われてしまったのです! ラーメンマンは「十分な戦略的な勝利」と満足そうに勝ち誇ります。

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
ラーメンマンに指摘され、自身が発光していることに気付くネメシス。ラーメンマン曰く、これこそが友情パワーの発露とのことだが...!?

ラーメンマンに指摘され、自身が発光していることに気付くネメシス。ラーメンマン曰く、これこそが友情パワーの発露とのことだが...!?

ここにきて、ストロング・ザ・武道(ブドー)が、キン肉マンという存在を危険視していた理由がわかった気がします。

キン肉マンと関わった超人は皆、友情パワーに魅せられ、いつしか火事場のクソ力をその身に宿します。奇跡の逆転パワーがキン肉マンからロビンマスクへ、そして今、ネメシスへと伝播(でんぱ)していきました。これまでは正義超人の特権だった友情パワーを、今後は敵側も使うようになった可能性が出てきたことを考えると末恐ろしいですね...! 

さて、いよいよ決着の時です。ラーメンマンの指摘に激高したネメシスは、キン肉族最大最強の必殺技「マッスル・スパーク」によって、闘将をマットに沈めました。 

試合終了後に、かろうじて生きていたラーメンマンは、先ほど見た技について「キン肉マンのマッスル・スパークとは似て非なる技だ...」と意味深な言葉を残しました。彼の台詞には一体どんな秘密が隠されているのか? キン肉マンVSネメシスという王族同士のカードも確定し、次戦が楽しみで仕方がありません...!

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~
横たわるラーメンマンの傍らには、粉々に砕かれた「闘」の肩当てが...

横たわるラーメンマンの傍らには、粉々に砕かれた「闘」の肩当てが...

さらにこの後、"許されざる世界樹"のサイフォンリング3Fに舞台が変わり、正義超人テリーマンと完璧超人始祖ジャスティスマンの闘いが描かれます。

語りたいことは、まだまだたくさんあるのですが...今回も長くなってしまったので、次巻に引き継ぎます!第54巻のレビューをお楽しみに~!

●こんな見どころにも注目!

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第53巻編】~救世主(メシア)VS復讐者(ネメシス)!! 光と闇の攻防~

"聖なる完璧の山"のもとにたどり着いたネメシスが最初に目にしたものは、門番であるミラージュマンに胴体を貫かれた超人たちの死体でした。ここまでたどり着いただけでも、それなりの実力者だったことは推測できますが、もし彼らが真っ当に超人オリンピックに出場していたら、どれほどの結果を残したのか、すごい気になります!

どの結果を残したのか、ふと気になりました。

●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。

小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。原作者として参加している『笑うネメシス―貴方だけの復讐―』が『漫画アクション』(双葉社)にて連載中。ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中

構成/石綿 寛(樹想社) ©ゆでたまご/集英社

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