『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!!...の画像はこちら >>

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが25年12月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが2025年12月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。今回は、燃え殻さん、爪切男さんがそろって観戦した新日本プロレス「イッテンヨン」の話から。

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爪切男(以下爪) 前回、ゲストでエル・デスペラードさんが来てくれたので、今回はその後に行なわれた、新日本プロレス1・4東京ドームの話から始めたくて。

燃え殻(以下、燃) うん。まず、興行としてすごいおもしろかった。

 久々に東京ドームだな、っていう感じがしましたよね。自分の席から見渡すと、どっちを向いてもお客さんがいっぱい入っていて。

 東京ドームのよさを久しぶりに感じた。長年、新日の東京ドームを観ていると......正直、「東京ドームでやらなくてもいいのに」って思う年もあったけど、今年は本当に、東京ドームでやる興行だった。感動しました。

 燃え殻さんのウェブの日記に、ドームでずっと泣いていた、って書いてありましたね。

 泣いてました。感動しました。

 俺は俺で泣いたんですけど、その東京ドーム超満員の光景に泣いたんですよね。

俺、(プロレス全盛の時代に)間に合わなかった、と思ってたんですよ。

 あ、昔の超満員の東京ドームの頃は。

 自分は田舎にいて、テレビで観ていて、プロレスに客が入らなくなった時代に東京に来たので、「俺はあの光景を生で味わうことはできないんだ」と思っていた。棚橋弘至の引退試合があって、その前に新日本の未来を決める辻 陽太とKONOSUKE TAKESHITAの試合があって、さらにその前にウルフアロンのデビュー戦があるし、スターダムの上谷沙弥と朱里の試合もある。コンパクトで濃くて全試合おもしろい。「本当の新日本の東京ドームが帰ってきたんや」って思ったなあ。

 本当にそうだね。

 だからお客さんみんな、ニコニコしてましたもんね。棚橋さんにしかできない東京ドームだった。

 そうだね、あの終わり方は、棚橋さんが今まで培ってきたものがないと、できない。あそこに到達することができたのって、すごいよね。新日が傾いた時から始まって......。

 懺悔しますけど、俺はあの時「棚橋がエースでいいのか?」って思ってたほうなので。「メインのカードが棚橋vsジャイアント・バーナードでいいのか?」って。

 ジャイアント・バーナード、いた! 怖かったよね。でも確かに、僕もそう思った。

 あの頃はまだ中邑真輔も「イヤォ!」で化ける前だったし。そういうところから始めて、新日をV字回復させたんですもんね。

 ウルフアロンもいい試合だったしね。相手のEVILがすばらしかった。

 この大会、MVPはEVILですね。
*1月23日には、EVILのWWE移籍報道も

 爪さん、ウルフアロンのデビュー戦が発表になった瞬間から、「相手はEVILしかいない」って言ってたもんね。

 今、世界に誇れるヒール・レスラーって、EVILしかいないので。ウルフアロンを相手に、どんな試合でもできる。

イスとかで反則攻撃して、お客が「がんばれウルフ!」ってなったらそれでいいし、逆にそこでEVILに声援が来るんであれば、それはお客がウルフを認めていないってことになるから。どっちに転んでも試合を成立させられる、だからEVILしかいない。と思っていたし、実際いい試合になったけど、ただし、入場に関しては、ウルフアロンが一枚上手だった。

 そうだよね。前日の会見でEVILに「おまえ、俺に負けたら坊主、柔道着も禁止だ」と言われて、当日は花道に登場したら坊主頭で、その場で柔道着も脱ぎ捨てる、っていう。

 黒パンに黒シューズのヤングライオンスタイルだったのもよかったし。

 あと、やっぱり、圧倒的な知名度。『サンデーモーニング』で、新日の試合が報じられるって、すごいことだよ。TBSで安定的に視聴率を獲るあの番組に、何度も出ているし、自分のラジオ番組も持っている(TBSラジオ毎週日曜7:00~7:30『目覚めのウルフ』)。

 そんなヤングライオン、いないですよね。

 昔、曙が全日本プロレスに参戦していた時期、地方での動員がすごく伸びたじゃない? その時と同じことが、新日に起きそうだなと思って。

 やっぱり金メダリストってすごいんだな、というのを実感しました。

試合内容がすばらしかったからこそ、というのも大きいけど。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.53【コミックス派はネタバレ要注意!】

第513話 テキサス流フルコース!!の巻(25年12月1日更新分)
第514話 憧れへの返礼!!の巻(12月8日更新分)
第515話 盟友たちとの誓い!!の巻(12月15日更新分)
第516話 刻の神の壮大なる計画!!の巻(12月22日更新分)

あらすじ
世界各地で同時開催された五大刻との一大決戦も、いよいよテリーマンVSエンデマンを残すのみとなった。テリーマン自らが憧れる身体に変化したエンデマンに苦戦するも、キン骨マンのが作ってくれた義足をつけて、反撃に転じる!

 それで、『キン肉マン』の12月の連載なんだけど。

 テリーマン、エンデマンに勝ちましたね。

 うん。他の超人は、闘っていくうちに、技が進化したりするのに、テリーマンはずっと昔からの技のまま、勝つんだよね。

 そうですね。

 昭和の頃のテリーマンの技で構成されている試合を、令和に観る。とてもいいよね。

 本人にその自覚があるのもいいですよね。第514話で、ブレーンバスターでエンデマンを持ち上げながら、「他の超人たちの技がどれだけ日進月歩で進化していこうとも ハハハ やっぱりオレにはこの技なんだよ」って。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.53【コミックス派はネタバレ要注意!】

 そうそう、カッコよかった、あのブレーンバスターの出し方は。

 画の面でも、改めて、中井先生ってすごいと思いました。この描き方はすごく説得力があるし、かっこいい。

 垂直落下ブレーンバスターだよね。

 その前に出した技も、ブルドッギング・ヘッドロック、テキサス・クローバーホールド、カーフ・ブランディング。それが、キン骨マンのおかげで力が出せるようになった、というのも、ドラマがあっていいし。キン骨マンがテリーマンの足を撃ったのって、単行本の3巻(1980年7月発売)じゃないですか。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.53【コミックス派はネタバレ要注意!】
第20回超人オリンピックにて、試合中のキン肉マンを狙う銃弾に気づいたテリーマンが、身を挺して守りに入ったことから悲劇は始まった(JC3巻)

第20回超人オリンピックにて、試合中のキン肉マンを狙う銃弾に気づいたテリーマンが、身を挺して守りに入ったことから悲劇は始まった(JC3巻)

 そうだよね。連載が始まってすぐ。

 そう考えると、こんなに長い間、テリー、ツラかったやろな、って改めて思いました。

 でも......前回のゲストのエル・デスペラードさんとも、その話になったけど、テリーマンはそんなクラシカルな技を使い続ける一方で、柔術の技も使う。

 ああ、そうだ。クラシカルな技と最新の技、両方を活かしてる。

 それでさ、ブレーンバスターをかけながら、テリーマンがジェロニモに呼びかけたじゃない? 「なあ見ているかジェロニモ」って。

 で、次の第515話で勝利が決まったところで、「必ず助けてやるからなジェロニモ!!」って叫ぶと、欠片(ピース)の中に固められたジェロニモが涙を流す。いいシーンですよね。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.53【コミックス派はネタバレ要注意!】
カピラリア光線照射のための最後の欠片(ピース)として、犠牲になったジェロニモ(JC83巻)

カピラリア光線照射のための最後の欠片(ピース)として、犠牲になったジェロニモ(JC83巻)

 僕、それを読むまで、ジェロニモの今の状態のことをうっすら忘れてた(笑)。

 はははは、ひどい。そういう人がいるから、先生もこうして描くんじゃないですか? 忘れないでね、と。

 でも、敗れたエンデマンの破片が消えていき、そこから新しい時間超人が生まれる、というのはびっくりした。

 サラマンダーね。次から次へと新しい時間超人が生まれる。キン肉マンの目の前で、ガシャポンみたいにガストマンが生まれた時もそうだったけど。俺が現場にいたら「もうやめてくれよ!」って思うだろうなあ(笑)。

 読めなかった、この展開は。

 ゆでたまご先生、ほんと、ベテランの作家の話の作り方ではない(笑)。攻める攻める。だからこっちも「ちゃんと読まなきゃ」っていう気持ちになりますね。同窓会みたいな、落ち着いた気分で読めない。

 でもこのサラマンダー、最近の『キン肉マン』の世界線の中にはいなかったフォルムの超人だよね。シッポがあるのが。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.53【コミックス派はネタバレ要注意!】
サラマンダーはサンショウウオや西洋の伝説に登場する日の精霊の意味があるそう(連載516話)

サラマンダーはサンショウウオや西洋の伝説に登場する日の精霊の意味があるそう(連載516話)

 ああ、そうか。しっぽのある超人って少ないかも。で、アシュラマンが、エンデマンの闘い方を見て「どうにも違和感を覚えた 1億パワーというには何か妙な物足りさなを感じる」って言った、っていうことは、サラマンダーはもっと1億パワーをうまく使って闘う、ということですよね。

 シッポをどう使うのかとか、観てみたい。

 あと、エクサベーターとガストマンが、キン肉マン寄りになったじゃないですか。キン肉マン曰く「じっくり話せば彼らとだって、わかりあえそうな可能性があることも」と。となると、今後、闘いにおいてもキン肉マン側に付いて、時間超人同士の闘いが観れる展開になるかもしれない。

 ああ! 観たい、それは。

 これまでも何人も、ヒールで出てきた超人が、ベビーフェイス側にターンしてきたし。

 このあとどうなるんだろうね?

 うーん、今、3勝2敗で、我々の気持ちをちょっとアゲてくれるから、このあとはひどい負け方で我々を絶望に叩き込むのかもしれない(笑)。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)。群像Webでは「湯布院紀行」の漫画連載もスタート。また、『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)

取材・文/兵庫慎司 ©ゆでたまご/集英社 取材協力/Bar HIDE

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