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スズキは東京オートサロン2026(千葉県の幕張メッセで1月9~11日に開催)で、カプコンの大人気ゲーム『モンスターハンター』とコラボしたジムニーノマド(写真)と二輪のDR-Z4Sを展示。若年層へのブランド認知拡大を図った

いつの間にか、スズキが"上"にいた。

2025年の国内新車販売で、ホンダ、日産を逆転。

「軽の会社」「堅実だが地味」──そんな評価は、もう通用しない。

なぜスズキは勝ったのか。その"進撃"の正体を暴く。

【スズキの躍進で〝3強時代〟崩壊】

歴史が動いた。

1月5日、自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)が、2025年の国内新車販売台数を発表した。総数は456万5777台。

前年比3.3%増と、2年ぶりにプラスに転じた。もっとも、市場規模は6年連続で500万台を割り込み、「回復」と呼ぶには心もとない数字だ。

だが、世間をザワつかせたのは、販売台数そのものではない。登録車と軽自動車を合算したブランド別総合新車販売ランキングである。首位のトヨタは不動として、注目を集めたのはその〝次の席〟。

 

ホンダ、日産を押しのけ、スズキが単独2位へと躍り出た。これは誤差や一時的なブレでは説明できない。ランキングの表を見れば一目瞭然で、マツダ、三菱、スバルも寄せつけていないからだ。 

ネット上などには《は? スズキがホンダや日産より上!?》《スズキが国内2位ってどんな世界線だよ》と、戸惑い交じりの声が相次いだ。要するにこのランキングは、日本の自動車市場を長らく支えてきたトヨタ、ホンダ、日産という3強時代が崩れ始めたことを示している。 

気が付けば新車販売台数国内2位! スズキ「進撃」の秘密を解剖する

この異変をどう読み解くべきか。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、スズキ躍進の背景をこう分析する。

「派手な大ヒット車があったわけではありませんが、一台ずつ着実に磨き続けてきた。登録車ではフロンクスが安定した販売を維持。軽自動車ではダイハツの復調遅れもあり、定番商品のスペーシアへ需要流入が続きました。ジムニー系は生産が追いつかないほどの人気で、特に軽ジムニーの伸びが堅調です」 

一方、二輪業界からはこんな指摘が聞こえてきた。

「2024年放送のNHK『魔改造の夜』で見せた、部署をまたいで横断的に技術を磨く姿勢は現代のスズキそのもの。

四輪・二輪・マリンを抱える総合メーカーで、技術が自然にシェアされている。

カーボンニュートラル燃料のレース参戦も〝二輪のため〟ではなく、〝スズキの未来〟を見据えた動きです」

かつてスズキ二輪ワークスチームで〝なんでも屋〟を務めた、関西出身のカメラマン・山本佳吾氏はこう言う。

「スズキって今も昔もマジメなクルマづくりをしてるイメージやな。デザインも奇をてらわず、万人に受け入れられる。没個性的になりかねんけど、そのバランス感覚が今でもうまい」

こうした地味だが確実な積み重ねが、ついに数字として表れたのだ。 

【日本市場で爆売れの、〝シン国民車〟】

一方、スズキとホンダ・日産との差はどこにあるのか。桃田氏が解説する。 

「スズキは、日本とインドで〝庶民派〟を徹底しています。対してホンダと日産は米国市場への依存度が高い。また、ホンダは国内で〝N-BOX依存〟から抜け出せず、日産は再建途上で商品ラインナップの転換期にあります」 

では、このスズキの勢いは今後も続くのか。 

「庶民派路線は強みですが、高付加価値で利益を確保する領域が弱いのは事実です。かつて米国で上級中型車市場に挑戦し、日本にも一部導入しましたが、そこで市場を築けなかった経験が自らを縛っている面もあります。

それでもスズキらしい〝ちょうどいい〟ものづくりは続いており、独自性には期待できます」 

自動車専門誌の元幹部は、より構造的な視点を示す。 

「日本市場の約4割は軽自動車。もはや新たな国民車です。ご存じのように、スズキはこのカテゴリーに注力してきました。市場の重心が軽に移る中、その知見などが競争力につながっている」 

軽自動車が爆売れする理由は明快だ。物価高や住宅ローン金利上昇による実質賃金の伸び悩み。地方での公共交通の縮小。維持費の安さ。家計は細っても移動は必要なので、日本市場ではクルマの〝ダウンサイジング志向〟が加速している。

ちなみに今回、週プレ自動車班が近年スズキ車を購入したオーナーに取材すると、全員が口をそろえて挙げたのが、〝コスパ〟。自動車専門誌の元幹部もうなずく。

「スズキは軽もコンパクトカーも100万円台スタートがズラリ並ぶ。

装備のムダがなく、使い勝手の良さが細部まで行き届いている。N-BOXの見積もりが300万円超で諦め、スズキに行ったら半額ちょっとで〝納得の軽〟を手にできた、という話を耳にします」

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手取りは増えないのに、車両価格だけがどんどん上がっていっている。その中で、スズキは、〝生活者の財布と価値観に最も忠実なメーカー〟というわけだ。

スズキの販売店関係者からは、こんな声が上がる。

「価格的にも、軽ユーザーを自然に登録車へ導けています。操作がわかりやすいと中高年層から評判です」

もっとも、不祥事の禊(みそぎ)を終え、〝軽の盟主〟の座に返り咲きを狙うトヨタの完全子会社・ダイハツも、再び勢いを取り戻しつつある。激アツの軽覇権バトルは、むしろここからが本番だ。

今回、ホンダと日産を突き放し、市場の序列を書き換えたスズキだが、数字が示したのは、スズキの強さだけではない。この国の〝売れ筋〟と〝選ばれる基準〟が、確かに変わり始めたのだ。

取材・文/週プレ自動車班 撮影/宮下豊史

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