映画『ヒグマ!!』で主演を演じた鈴木福
「僕が闇バイトをやって、ヒグマに襲われる映画です。」という鈴木 福による謎だらけのXへのポストが話題を呼んだ『ヒグマ!!』。成人後初の主演を務める彼に、作品の見どころやキャリアについて聞いた!
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【闇バイト×ヒグマって何?】全国各地でクマによる死傷者数が過去最悪を上回るペースで増えた昨年の10月下旬、翌11月に公開予定だった映画『ヒグマ!!』の公開延期が発表された。
製作委員会による「現実への配慮を大切にしながら、ご鑑賞の皆さまが安心して没入できる上映環境を整えてまいります」という声明のとおり、クマの活動が落ち着く冬眠期の1月23日に公開日が改めて決まった。
「闇バイトvsヒグマ。主演・鈴木福」というパワーワードのかけ合わせから、SNSで話題を集めている本作。北海道在住の18歳・小山内(鈴木福)が主人公で、大学合格を決めた日に父が自殺。特殊詐欺の被害に遭い、多額の借金を背負ったことが原因だった。
進学を諦め、生活が困窮した末に闇バイトに手を染める。その仕事で山中に連れていかれ、規格外の凶暴さを持つエゾヒグマに遭遇。スリリングな逃走劇が始まる......というストーリーだ。
モンスターパニックアドベンチャームービーではあるものの、「自然と人間の境界線」というテーマを軸に、闇バイトという社会の闇をも浮き彫りにした本作。主演を務める鈴木福氏に話を聞いた。
――内藤瑛亮(えいすけ)監督やプロデューサーから、「福くんしか考えられない!」と熱望されたそうですね。
鈴木 おふたりのことは存じ上げていたので、「この人たちとやれるのはすごく楽しみ!」と思いました。
――福さんは自身が演じる小山内と年齢が近いですが、似ているところはありますか?
鈴木 闇バイトという犯罪に手を染めてしまった人間だけど、かわいげのあるキャラクター。だから、演じるときもそう見えるよう意識しました。
小山内はヒグマに襲われて生きるか死ぬかの状況でも、起きてしまったことに割と前向きで、次に向かって動き出す力を持っていると感じました。そこは僕にも近いところがあるかもしれません。
――闇バイトの初仕事は簡単なもので、徐々に犯罪まがいなことをさせられて抜け出せなくなる過程がリアルでした。
鈴木 段階を踏んで闇バイトに沼っていく感じと、恐怖とのはざまをどう演じるかは意識しました。どんな理由であれ犯罪は悪ですが、社会の仕組みにも悪い部分がある。作品では小山内に対する同情の余地や、ある種の共感も描かれています。
――山中で規格外のヒグマに遭遇してからは、別の恐怖に襲われることになります。悲惨な状況下でも小山内の言動に思わず笑ったり、明るさに救われたりもしました。
鈴木 台本を読んだときは、ストーリーが重々しく進んでいくのかなと思っていましたが、現場で監督に求められたのはもっとライトな感じで、演じているうちにどんどん楽しくなっていきました。
僕から笑いの要素が強めに出てもうまく抑えてくれたのが、小山内と共闘してヒグマに立ち向かうことになる闇バイトの「28番」を演じる円井(まるい)わんさんでした。
――「28番」は元自衛隊員で腕っぷしが強く、初めは小山内と敵対関係にありました。
鈴木 わんさんとは最初はあまり話さなかったのですが、撮影期間中にだんだん話すようになりました。めっちゃ明るくて面白い方。ずっと関西弁で話されていて、僕も笑いっぱなし! すっかり仲良くなりました。
【特殊造形のヒグマは怖い!】――「28番」と共に戦う相手、"19(ジューク)"と呼ばれるヒグマは大半が特殊造形でしたが、撮影で対峙(たいじ)してどうでしたか?
鈴木 目の前に迫ってくると自分が思っていた以上に怖く、ヒグマの迫力や禍々(まがまが)しさが出ていました。ヒグマに襲われた人たちの手足や内臓の造形物もグロテスクでしたし。
血まみれの臓物がばんばん飛んでくるシーンがあって、監督が「顔に当ててもいいから」と言ったのは聞こえていたのですが、まさか本当に当てられるとは(笑)。
でも、リアルに顔に投げつけられたことで迫力のある画が撮れたし、僕も血だらけのすごい姿になって、偶然が生んだビジュアルで結果的にいいシーンになりました。
最新の特殊造形技術を駆使して表現されるヒグマの存在感とリアルさは圧倒的だ
――CGではなく、あえて造形にこだわったところが作品の持ち味になっているのですね。
鈴木 現場のみんながすごく映画が好きで、ものづくりの良さを改めて感じました。特殊造形のような手法を使った映画が今後少なくなるかもしれない中、主演として関わることができたのはありがたいし、面白い挑戦だったと感じています。
――「闇バイトvsヒグマ」というインパクトのある組み合わせや、特殊造形のクマということだけを聞くと「ネタ先行のB級映画?」とも思われそうですが......。
鈴木 僕は「見なきゃよかった」と思わせないだけの映画だと思っていますし、心から「見てほしい!」と自信を持って言えます。
今、皆さんは「なんで闇バイトがヒグマに遭遇するの?」と疑問に思っているだろうし、それだけでかなり盛り上がってくださっていると思います。見てもらえればその理由に納得できるし、ストーリーには一貫性やメッセージ性もあります。見てくれたら、この映画の持つ価値や魅力が伝わるはずだと思います。
本作を見て怖い思いをしたり、笑ったりもしてほしいですが、最後には希望が持てるようになっています。誰かに話したくなるような映画でもあるので、会話のネタになればうれしいですね。
あと、エンドロールは最後まで必ず見てください! こんなにも醜いのにカッコよくて最後まで見たくなるエンドロールはないし、僕が今までに出た作品の中で一番好きです。監督の手書きのクレジットもいい味を出していて、たぶん今後、これを上回るものが出るのは難しいんじゃないかと思うくらいです。
【『マル・モリ』ブームは正直よく覚えていない】――福さんといえば、芦田愛菜さんと共演のドラマ『マルモのおきて』(2011年、フジテレビ)の印象が強く、日本中の人から"福くん"と呼ばれるようになりました。
鈴木 物心つく前からこういうお仕事をしていたので、日常のひとつでした。小さい頃から現場に行ったらいろんな人がおしゃべりしてくれて、お芝居をするのも楽しかったです。
『マルモのおきて』で話題になった時期は正直よく覚えていないし、忙しくて考えている暇もなかったです。確かな記憶としては、小学校の友達に「4月からドラマに出るから見てね!」と言って、実際に見てくれた友達に「見たよ」「面白かったよ!」と言ってもらえてうれしかったことくらい。身近な人の反応が励みになっていました。
ヒグマとの死闘を演じた鈴木福。ポジティブでかわいげのある役柄が本人ともリンクする
――本気で俳優をやっていこうと決めたのはいつからですか? また、子役のイメージから脱却するのに苦労しましたか?
鈴木 『マルモのおきて』の後も、毎年映画やドラマに出演し続けてきました。だから子役からの脱却に悩むほどではありませんでしたが、この先も俳優としてやっていきたいとはっきりと思ったのは、中学2、3年生くらいの頃でした。
そのくらいの年の頃、映画『決算! 忠臣蔵』(19年公開)に出演したのですが、あるとき、監督から「もう子役じゃないんだから」と言われました。そう言わせてしまうことを僕がしてしまったのですが、そのとき、俳優としての自覚の足りなさを痛感しました。
それから、皆に鈴木福は"俳優"だと認めてもらうためには、自分からなろうとしなきゃダメだという思いを持って演技に臨んでいます。
――現在大学に通われていますが、高校卒業と同時に芸能活動に専念しようとは思わなかったのですか?
鈴木 周囲の人に、「大学は行っておいたほうがいい」と言われていました。それに受験に向けて準備するようになったとき、いろんな視点で物事を見る機会が増え、ワクワクしたんです。
「大学でできる友達は財産になる」とも言われていたので、大学で新しい友達に出会い、自分の可能性をもっと広げたいと思いました。
――現在3年生ですが、大学生活はどうですか?
鈴木 俳優として現場で学べることは現場で学べばいいけど、大学では違うアプローチで俳優業に関して学べることがたくさんあります。大学に行かなかったら考えなかったようなことに気づけるようになりました。
自身の芸能活動を「日々就活中」と話してくれた
――同級生は就活中ですね。
鈴木 僕は日々就職活動みたいなもので、次につながるよう今のお仕事を精いっぱい頑張っています(笑)。
――将来的にはどんな俳優になっていきたいと考えていますか?
鈴木 僕の出演作品がきっかけで、誰かが夢や希望、目標を持ってくれたら、すごくすてきなことだなと思っています。
見てくれた人にとって次の何かにつながることができるのなら、僕が表舞台に立つ意味もあるし、喜びも生まれると思うんです。
●鈴木福 Fuku SUZUKI
2004年生まれ。11年放送のドラマ『マルモのおきて』で人気を博す。その後、ドラマ『妖怪人間ベム』『コドモ警察』などに出演。現在は大学に在籍し学業と芸能活動を両立している
●映画『ヒグマ!!』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
配給:NAKACHIKA PICTURES
18歳の小山内(演:鈴木福)は、大学合格の通知を受け取った日に、特殊詐欺の被害に遭い多額の借金を背負った父親が自殺。進学を諦め、金策に走る彼が始めたのは、父親を追い詰めた"闇バイト"だった......。ある日、最も高額な報酬が見込める拉致工作に参加した小山内だったが、そのバイト内容にはいつの間にかターゲットであり元闇バイト参加者の若葉桜子(演:円井わん)の殺害&遺棄までもが追加されていた。
(スタイリング/作山直紀 ヘアメイク/ショウジロウフェニックス)
取材・文/吉川明子 撮影/佐々木里菜

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